100均物件に賃貸が登場!
2019年7月にオープンした「空き家ゲートウェイ」。手放したいけど値段が付かない、売れない物件を100均(100円、100万円)物件とし、ユーザーとのマッチングを図る。キャッチーなサイトは20代~30代を中心に注目を集めている100円、100万円で家が買えるマッチングサイト「空き家ゲートウェイ」の始動から約1年半。日本中の空き家を新たな視点で楽しむプラットフォームとして注目を集めているなか、新たに月額100円の賃貸物件が登場した。
「空き家ゲートウェイ」については、以前の記事を参考にしていただくとして、今回は2020年12月に紹介された100円賃貸について仕掛け人でもあるYADOKARI株式会社「空き家ゲートウェイ」運営事務局の川口直人さんにお話を聞いた。
泣く泣く店を閉めた花屋と夢を叶えたい若手をマッチング
舞台は横浜市。横浜駅の南に位置する磯子商店街商業協同組合、通称「浜マーケット」だ。
物件は、この道50年のオーナーがご自身の体調の都合で泣く泣く閉めた花屋。商店街組合、花屋のオーナー、川口さんらが相談し「空き家ゲートウェイ」への掲載が決まったという。
「商店街に花屋がなくなって困っているという地域の方の声もありましたし、新しい業態よりも歴史ある商店街の中で伝統を受け継いでくれるようなお店のほうがいいのではないかと考え、引き続き花屋をやってくれる入居者さんを募集してみることにしました」
夢をもった若い人たちにバトンを渡すことができた
「空き家ゲートウェイ」のルールとして、掲載から30日で活用希望者の募集を締め切る。その後、物件のオーナー側で選定を行い、売却人または賃借人を決定するという流れとなる。「浜マーケット」の元花屋の物件は2020年12月22日にサイトに掲載したところ、30日間で20件の応募が寄せられた。この結果に川口さんは
「正直驚きました。花屋という限定した条件の中で募集をかけるのは、ちょっと厳しいかもしれないなと思っていたのですが、こんなにたくさんの方が興味をもってくださったことが本当に嬉しいです。“小さいころから花屋になりたかった”と熱い想いを綴ってくれる人が多く、夢をもった若い人たちにバトンを渡すことができ、マッチングのプラットフォームとしては最高の形を作ることができたと思います」と話す。
現在は、オーナーと商店街組合によりに入居者の選定を進めているところだという。
元オーナーからの手厚いサポートも
今回の場合、元花屋のオーナーが買付け・運営のノウハウを伝授してくれたり、経験豊富なパートさん、市場の紹介、軽トラの貸出しをしてくれたりと、至れり尽くせりのサポートも受けられるそうだ。地元に縁のない若手が入居した場合、こうしたオーナーの支援があるのは心強い。
「ただ店を貸すだけではなく、ビジネスの厳しさとか商店街で店を出すことの意義といったことを新しい担い手に伝えていく伝承モデルになった」と川口さんは言う。
古くからある商店街の場合、人の流れなどそれなりの地盤があるのもメリットだろう。歴史ある店ゆえに老朽化は否めないが、店舗や設備、調度品などは整っている。リフォームの費用はある程度かかったとしても、まっさらな状態からスタートするよりは開業までのコストや時間を大幅に短縮することも可能だ。
物件を買う人も買わない人も参加できる「100均物件活用アイディア」がサイト内に新設。「自分だったら…」と妄想を膨らませて、空き家の活用方法を投稿してみるのも面白い。書き込まれたみんなのアイデアはDIYの参考になるかもしれない「店の改装も好きにやってくれていいよ、という感じなのでDIYも可能です。商店街全体で空き店舗のマッチングが進めば、“DIY商店街”としてアピールしていくのも面白いですよね。新しい担い手がDIYをして少しずつ商店街の表情が変わって再生していく、そんな様子も含めて商店街が面白い場所になっていくような気がします」
月額100円という破格にも程がある賃料。紹介した通りメリットは100円以上の価値は存分にある。
商店街の問題をクリアするモデルケースに
シャッター商店街が増えているという現実は、実感している人も多いだろう。
少し前の数字ではあるが、2018年の中小企業庁の商店街実体調査においても、商店街の平均空き店舗率は13.77%と、2015年の13.17%に比べて増加している。
さらに、同調査によると、商店街が抱える問題は「経営者の高齢化による後継者問題」が最も多い64.5%、次いで「店舗等の老朽化」38.6%、「集客力が高い・話題性のある店舗・業種が少ない又は無い」36.9%となっている。
今回紹介した「浜マーケット」のマッチング例は、こうした商店街が抱える問題をクリアするひとつのモデルケースとなったのではないだろうか。
“空き家をポジティブに捉える”「空き家ゲートウェイ」
商店街と若い担い手―。
直接の接点を持ちづらい両者を結ぶきっかけとなるのが「空き家ゲートウェイ」。
「今回のケースでは “空き家をポジティブに捉える”という「空き家ゲートウェイ」が目指してきたものと、私たちが一番大切にしている“個人の夢を叶える”ことの両方を体現できました。私たちらしい方法で商店街に貢献できたことが嬉しかったですね」と川口さんは振り返る。
新旧入り混じった混沌もその商店街の魅力になる
商店街にとどまらず行政ともタッグを組んで空き家の活用に乗り出した「空き家ゲートウェイ」。サイト内では福島県の国見町とのコラボ企画が始まっていて移住促進にも期待が寄せられている。テレワークの増加により働き方が大きく変わりつつある今。100均物件は地方に新たな拠点を持ちたいと考える人にとっても魅力的に映るのではないだろうか100円賃貸のマッチングが進めば、全国のシャッター商店街に賑わいが戻ってくる日は近いかもしれない。
「見方を変えれば空き店舗が増えた商店街は“宝の山”。古くからある店と新しくなった店が共存した混沌すらも、その商店街の魅力となりうる」という川口さんの言葉には納得だ。
100円賃貸でシャッター商店街の再生に一矢報いることができるのか、引き続き注目していきたい。
【取材協力・写真提供】
「空き家ゲートウェイ」https://akiya-gateway.com/
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