合計30時間で延べ6,500人が参加した「みんなの移住フェス2020・オンライン」

新型コロナウイルス(以下コロナ)の影響で、対面が叶わない状況が増えている中、オンラインイベントが過熱している。移住に関しても然り。自治体との相談会やセミナーは軒並み延期、中止になっている今、「どのように情報収集したらいいのかわからない」という人にとっては、オンラインイベントは、ひとつの重要なツールになりつつある。

先日、移住スカウトサービス「SMOUT」を運営する株式会社カヤックLivingによる「みんなの移住フェス2020・オンライン」が開催された。6/27(土)、28(日)2日間にわたり合計30時間で延べ6,500人が参加する盛況ぶりだったという同イベントを参考に、これからの移住について考えてみたいと思う。

イベントの内容に触れる前に、「SMOUT」の新規登録者数を見てみたい。「SMOUT」は、会員登録してプロフィールを入力すると、マッチする地域から声がかかる移住スカウトサービス。緊急事態宣言解除後に登録者数が急激に増え、4月から比べると6月には約2倍に達している。これまでは20代のユーザーが多くを占めていたが、ここへきて登録する年齢層にも変化があったという。

広報の梶陽子さんによると「今までは、多拠点や2拠点で活動できる比較的身軽で移住がしやすい20代の登録が多かったのですが、コロナの後は30代、40代のファミリー層の登録が増えました。理由としては、仕事のリモート化で出社の必要がなくなったり、自分の暮らしや生き方、子どもにとっての生活環境など、人生について向き合った結果、移住という選択肢を視野に入れる人が増えたからではないかと捉えています」とのこと。

今回の移住フェスにおいてもデジタルリテラシーの高い若い世代だけではなく、ファミリー層の視聴が多かったそうだ。
「自宅で家事をしながらでも視聴できますし、小さなお子さんがいても気兼ねなく参加できる点がオンラインのいいところです」(梶さん)

【グラフ上】緊急事態宣言解除後の6月に約1,500人まで伸びた「SMOUT」の登録者数。東京都在住の新規登録者が増え、新規登録者のうち約5割が東京都を含む首都圏在住者となっているそうだ。<br>
【グラフ下】30代の新規登録者が5%、40代が7%増。「都心一極集中で暮らすことの疑問はたくさんの人が感じている。それが今回のコロナの事態と重なって、移住の関心につながっているのかなと感じています」と梶さん【グラフ上】緊急事態宣言解除後の6月に約1,500人まで伸びた「SMOUT」の登録者数。東京都在住の新規登録者が増え、新規登録者のうち約5割が東京都を含む首都圏在住者となっているそうだ。
【グラフ下】30代の新規登録者が5%、40代が7%増。「都心一極集中で暮らすことの疑問はたくさんの人が感じている。それが今回のコロナの事態と重なって、移住の関心につながっているのかなと感じています」と梶さん

盛りだくさんのコンテンツの中から思いがけない出会いが生まれる可能性も

目標5,000人を上回る延べ6,500人が視聴した「みんなの移住フェス2020・オンライン」<br>覆面でのぶっちゃけトークや、美味しいものを購入できるオンラインショッピングも開催され、地域独自の魅力をオンラインで24時間配信。カヤックの系列会社である鎌倉R不動産から空き物件の紹介なども配信された。コンテンツの豊富さだけでなく、ラジオを聞くような感覚で流し視聴できる気軽さがオンラインイベントの魅力目標5,000人を上回る延べ6,500人が視聴した「みんなの移住フェス2020・オンライン」
覆面でのぶっちゃけトークや、美味しいものを購入できるオンラインショッピングも開催され、地域独自の魅力をオンラインで24時間配信。カヤックの系列会社である鎌倉R不動産から空き物件の紹介なども配信された。コンテンツの豊富さだけでなく、ラジオを聞くような感覚で流し視聴できる気軽さがオンラインイベントの魅力

「オンラインイベントの最大のメリットは移動がないこと。都市部で開催される移住相談会などでは、各地域の移住担当者が会場まで足を運ぶ必要があり、参加者もわざわざ出かけていき各ブースを回ることになりますが、当然オンラインではそれはない。自宅でラジオを聞くくらいの気軽さで参加できるのが魅力です」(梶さん)

また、盛りだくさんのコンテンツも魅力のひとつ。今まで注目されていなかった地域にスポットが当たる可能性もある。

カヤックLivingの代表でもあり「SMOUT」で今回のフェスを企画したの中島みきさんは「移住で人気の場所といえば、長野や北海道が挙げられるのですが、今回のイベントでは、ここどこ?という全然知らないような町でも、登壇した人のコンテンツが面白かったりすると、今度行ってみようかなとか、面白そうな町だなと感じてもらえて、そういう思いがけない出会いみたいなものも作れたと思っています」と振り返る。

「移住を考えるとき、海が好きだから島がいいとか、雪が降るところがいいなとか、けっこうみなさん漠然としていると思うんです。海がある、雪が降るといってもそういう町はたくさんあって、移住場所として絞り込みにくい。そこを今回はエリアだけで切り分けるのではなく“イケてる漁師町”とか“日本酒が美味しい”という素材で切り取って、それぞれの市町がPRしていたのを視聴者の方に楽しんでいただけたようです」(梶さん)

74の市町が参加。AR座談会、大喜利など盛りだくさんのコンテンツで24時間配信

フェスには北海道から沖縄まで、74の市町が出展。オーシャンステージ、マウンテンステージと2つの配信ステージを中心に、それぞれの地域の魅力を発信した。

例えば、ARエフェクトを駆使してご当地キャラに扮した担当者が登壇する「ローカルAR座談会」や、人気TV番組を模した「ご当地どっちの特産品ショー」、「SMOUTケンミンショータイム」、「覗き見!隣の朝ごはん」や、地域の魅力を大喜利形式で披露する「SMOUT大喜利 気になる地域のQ&A」など、工夫を凝らしたコンテンツが24時間通しでライブ配信された。深夜帯では「オンラインスナック♪」と題して、「SMOUT」のスタッフと地域の人が、お酒を飲みながらざっくばらんなトークを繰り広げた。

視聴者は興味のあるステージを自由に出入りでき、気になる地域があれば個別相談ページへ移り、好きな日時を予約、別途相談できる仕組みに。寄せられた移住相談は2日間で105件。地域おこし協力隊への応募や、地域への訪問につながるケースもあったという。ここでも家族での移住を検討しているファミリー層からの相談が多かったそうで、「家族で、家にいながらにして情報収集ができる」というオンラインならではのメリットが効いているようだ。

21:00から開催されていた「日本酒からはじめるローカルの楽しみ方」の一幕。美味しい日本酒が自慢の長野県、南魚沼市、宇部市のみなさんが登壇。お酒をキーワードに地域の魅力について語った21:00から開催されていた「日本酒からはじめるローカルの楽しみ方」の一幕。美味しい日本酒が自慢の長野県、南魚沼市、宇部市のみなさんが登壇。お酒をキーワードに地域の魅力について語った

移住を受け入れる地域側にとっても重要なツールに

イベント内ではライブ配信と同時にコミュニケーションツール「Slack」を活用したコメントのやり取りも行われた。地域に興味をもった約400人が参加し、地域の人との情報発信やメッセージのやりとり、LIVE配信の感想などが交わされていたイベント内ではライブ配信と同時にコミュニケーションツール「Slack」を活用したコメントのやり取りも行われた。地域に興味をもった約400人が参加し、地域の人との情報発信やメッセージのやりとり、LIVE配信の感想などが交わされていた

移住の受け皿となる地域が、この時代に何をしていくべきか、という点においてもさまざまなコンテンツが用意されていた。なかでも一番人気だったのは、任天堂でゲームの開発に携わっていた玉樹真一郎さんが登壇した「つい関わりたくなる地域のつくり方」というコンテンツ。
著書『「ついやってしまう」体験のつくりかた』にちなんで、“つい移住したくなる仕掛けのつくり方”に関するトークが繰り広げられた。

「移住というものをぼんやりと考えている人たちに一歩踏み出してもらうために必要な要素とは何か、というお話をゲームのノウハウを交えて教えていただきました」(中島さん)

また、北海道下川町の町長、富山県南砺市の市長、兵庫県豊岡市の市長と3市町の首長が考える「Withコロナ時代の移住」についてのトークセッションも。移住の事例や町の魅力を含め、コロナが落ち着いた時にはいろいろな人に関心をもって訪れてもらえるような関係づくりを、今のうちにオンライン上でやっていきたいという展望を話し合ったという。

各自治体でもそれぞれでオンライン相談会をスタートさせてはいるが、そもそも自分たちの地域の存在を知ってもらわなくては始まらない。移住に関心を寄せる人たちが視聴するこうしたオンラインイベントに参加することは、地域を知ってもらうための足掛かりとなる。また、ほかの市町がどんな呼びかけをしているのか“覗き見”ができるのもオンラインならでは。参考になる取り組みがあったり学びがあったりと、気軽でありながら得るものは大きい。

出会うべき人や地域に出合えるオンラインでの場づくりが必要

今回取材に対応してくださった梶さんは、昨年東京から鎌倉へ引っ越した先輩移住者でもある。

「計らずもコロナという事態で在宅勤務となりましたが、その前に移住していてよかったと実感しています。理由は、住む環境です。東京で暮らしていたときの2倍ほどの広さがあるので、リモートワークの環境が作りやすかったですし、マンションですがテラスがあるので子ども2人を遊ばせることもできます。人も密集していないですし、山や海があって自然のなかで暮らせるという点が、都心で暮らしていた時とは全然違いました。私は移住して『こんな暮らしがあったんだ』と新しい世界を感じることができたので、移住や地域の暮らしに興味のある方はSMOUTを一度のぞいてみてもらいたい」と、今の想いを語ってくれた。

中島さんは「これまで移住は、限られた人たちの選択肢でしたが、今回のコロナ禍を経て、移住というものが一般化してきたのだと感じます。一般化するということは、多様な考え方が生まれるということなので、受け入れる側である地域の準備も必要になってきます。両者の想いやニーズを受け止めながら出合うべき人や地域に出合えるよう、オンラインでの場づくりをしていかなくてはと思っています」と話していた。

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がっつり移住に関心がなくとも、「知らない地域に行ってみたいな」とか「田舎暮らしってどんな感じだろう」という気持ちを感じたことがある人は多いだろう。副業や短期滞在型のプロジェクトも増えているそうなので、移住だけにとらわれず、まずはオンラインイベントを気軽に視聴してみるといい。地域の暮らしを覗き見する感覚で、もっと軽やかに移住を感じてみてはどうだろう。

【取材協力・写真提供】
「SMOUT」
https://smout.jp/

2020年 08月27日 11時05分