ペイントで空間一新! 団地の部屋が生まれ変わる
「わあ、うちの部屋と全然違うわ。こんなキレイになるんやね」と、淡いミントグレーの壁に囲まれた部屋を見渡しながら話す60代の女性。同じ団地の住人で、オープンルームの情報を聞いて足を運んだのだそう。大阪府住宅供給公社が提供する、公社賃貸住宅SMALIO(スマリオ)の大阪・喜連団地が新しく提案するペイントリノベーション住宅のオープンルームでの一場面だ。
ひとえに団地リノベーション住宅といっても、ペイントリノベーションは一味違う。オーストラリアの高級塗料「PORTER’S PAINTS(ポーターズペイント)」を大阪で唯一の代理店として扱う株式会社Add Wallとのコラボで実現したこの企画は、団地のレトロな風合いを残したまま、壁を塗り替えるだけで空間を一新させているのだ。
「DIYの中でも、壁ペイントは初心者でもチャレンジしやすいもののひとつ。DIYに興味を持っているけど、まだ実行したことがない方に向けて、空間の変化を実際に見て体験していただきたいと思ったことが今回の企画の発端です」と大阪府住宅供給公社 団地イノベーショングループの片山さんは話す。
ペイントリノベで実現した「Green Room」と「Blue Room」
大阪の喜連団地で、株式会社Add Wallとコラボ提案するリノベーションプランの部屋は3室。Add Wallがペイントのデザイン提案・施工までトータルコーディネートした『ペイントリノベーション』2室と、入居者が実際に壁の色や質感を選べて、DIYができるプラン『つくろう家Basic レクチャー』1室だ。
まず、『ペイントリノベーション』の2室を紹介したい。「Green Room」は、その名の通り、廊下とキッチン側の壁を緑色にペイントされていて、どの部屋から見ても緑色が目に入ってくる演出だ。「この部屋はキッチンがメイン。ダイニング・キッチンを中心に人が集まるような、温かみのある暮らしをイメージしました」とデザインを担当したAdd Wallの特殊塗装事業部長・松下さん。和室の壁に塗られた日本伝統色の『象牙色』も畳の色とマッチする。
もう一室の「Blue Room」は、最近の注目色でもある、うすい灰色がかったミスト色がベース。落ち着いた雰囲気のある部屋は、ブルーとグレーの組み合わせによって実現されている。「和室で座ってくつろげるようにと、正座をしたときにちょうど腰の高さのラインに引かれた濃いめのブルーで目線を下に持ってくる工夫を施しました」と松下さん。他方の和室には、寝室として使うことを想定して天井にスカイブルーを塗って、よりリラックスできる空間に設えた。
インテリアにも家の補修にも、ペイントは最適
もうひとつ『つくろう家Basic レクチャー』という特別プランもある。壁色を選んだ後に、Add Wallのスタッフによるレクチャーを受けながら、DIYを進められるといううれしいシステムだ。「僕たちがこだわったのは、選んでもらう塗料の色合いです。顔料を組み合わせれば色合いはある意味無限に作れますが、すべてがインテリアに適している色とは限りません。建具、フローリング、木製の家具などの日本のインテリアに合いやすいカラーに厳選しているため、和洋どんなテイストでもマッチします。ペイントの力を体験していただきたいです」と松下さんは意気込む。
ペイントの魅力は他にもある。塗装は湿気を溜め込まないので、家が長持ちするという効果もあるのだ。日本の住宅の9割は壁にビニールクロスが使われている。ビニールクロスは安さがメリットである反面、10年周期の張替えの際に出るゴミは、例えると1年間で東京都が埋まるほどの量が出て、環境にも悪い。それに比べて塗料は、修繕の際には重ね塗りをするため、ゴミも出ない。そして、DIYに代表されるように、壁の色を自由に塗り替えて自分たちらしい家造りもしやすい。
DIYを取り入れて、自分らしい暮らしを実現してほしい
公社賃貸住宅SMALIOでは、古い団地の活性化や若い世帯の居住促進のために、DIYの促進に力を入れている。「2017年から、賃貸物件でもDIYを可能にする制度をスタートしました。これは、大阪府内のSMALIOの全戸の約半分に当たる約12,000戸を対象に原状回復義務を緩和するもので、壁に穴を開けたり、塗装ができたりとDIYがしやすい条件となっています。
特にペイントリノベは、和室や畳もそのままの間取りで大型なリノベーションをせずとも、壁の色を変えるだけで、空間の印象を変えることが可能です。
どことなく懐かしさを感じられる雰囲気は、団地ならでは。団地の古さをデメリットではなく、ポジティブに捉えてほしい。団地をどう楽しむかのひとつの手段として、DIYやペイントリノベーションを最大限に活用してほしい。『つくろう家』のプランはこれからも増やしていく予定です。自分たちで暮らしを豊かにできる、可能性を広げたいです」と大阪府住宅供給公社の片山さんは話す。
日々の暮らしをどう豊かにするか?について考えることの多いコロナ禍の今、自分の家を自分で変えられるということは、当たり前で必要なことなのかもしれない。まだまだ自由に扱いきれない賃貸住宅の暮らしを解放してくれるかもしれない、団地を活用した『つくろう家』の今後の展開を楽しみにしたい。
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