増え続ける空き家

和田欣也氏のお話しは、がもよんにぎわいプロジェクトに基づいた空き家活用方法和田欣也氏のお話しは、がもよんにぎわいプロジェクトに基づいた空き家活用方法

近年、空き家の増加が問題となっている。
管理されていない庭へのゴミの不法投棄や不審者の⽴ち⼊りなど、空き家は地域住⼈の不安の種となることが多いからだ。しかし、住⼈が住み替えたり亡くなられるなどして、新しい住み⼿のないまま放置される空き家は増えつつあるようだ。そして住⼈がいないと家屋の⽼朽化が進み、なおさら新しい住⼈を⾒つけづらくなる悪循環に陥ってしまう。
11⽉19⽇に、⼤阪市東成区の東成図書館多目的室にて、リノベーションまちづくりセミナー「⼤阪市東成区 空き家の上⼿な⽣かし⽅」が開催されたので、空き家をどのように活⽤できるのか、勉強してきた。

セミナーは、中古住宅流通やリフォーム・リノベーションに関わる民間団体、事業者、⼤阪府などの公的団体で構成される大阪の住まい活性化フォーラムの主催で、プログラムは4部構成。
がもよんにぎわいプロジェクト代表の和⽥欣也⽒による『がもよんにぎわいプロジェクト』⻑屋再⽣の取り組みについて、⼤阪市⽴⼤学⼤学院⽣活科学研究科の准教授、⼩池志保⼦⽒の『空き家のリノベーションで暮らしの場をつくる』⽊造空き家の改修のデザインと耐震補強について、株式会社シカトキノコ代表藤⽥ツキト⽒による『東成区というまちの可能性』スーパー町内会活動を⽣かして。そして、司会者として⼤阪市コミュニティ協会都市コミュニティ研究室の堀久仁⼦⽒、パネリストとして泉建設株式会社の楠原陽⼦⽒を加えた5⼈によるパネルディスカッションが行われた。

がもよんにぎわいプロジェクト

がもよんにぎわいプロジェクト代表の和田欣也氏がもよんにぎわいプロジェクト代表の和田欣也氏

セミナーで紹介された一例、和⽥欣也⽒の主催する「がもよんにぎわいプロジェクト」は、城東区蒲⽣四丁目のエリアに空き家がたくさんあり、なんとか使えないかと考えたのがきっかけだった。耐震診断⼠でもある和⽥⽒が、古い家の所有者から耐震の相談を受け、「⾯⽩い⽅が良い」と飲⾷店への改装を提案。これを契機に多くの空き家を飲⾷店にリノベーションしており、現在約23店舗。

「空き家の所有者は借り⼿が⾒つかり、借り⼿は安くレンタルできる。そして近隣住⼈は良い店ができたと、三者に喜ばれています」と、和⽥⽒。

リノベーションの際は、明治時代に建てられた柱の⽂字をそのまま⽣かしたりして、個性を活かしている。これらの店舗ではバルも開催。アンケートで参加者の60%が知⼈や店舗からの⼝コミで集まったことがわかった。そこで、店⻑同⼠のミーティングを開催し、交流をさらに活発化。それぞれの店⻑がまちのコンシェルジュとなり、たとえばハロウィンには⼦どもたちに飴を配るイベントなどを開いている。そしてその結果、店が賑わい、まちも盛り上がっているとか。

空き家のリノベーションで暮らしの場をつくる

大阪市立大学大学院生活科学研究科の准教授、小池志保子氏大阪市立大学大学院生活科学研究科の准教授、小池志保子氏

⼩池志保⼦⽒は、10年前から⻑屋や空き家のリノベーションに取り組んできた。
古い⻑屋や空き家は⽼朽化でボロボロのように見えるものもあるが、時間を経た建築ならではの魅⼒、たとえば懐かしい雰囲気があったり、⼟の地⾯が残っていたりするという。
⼩池⽒は「リノベーションのポイントは、『減築のススメ』『耐震補強』『素材を活かす』の3 点です」と語る。減築とは、トタン屋根のついた庭は、外して空を⾒られるようにするなど、余分に付け加えられたものを整理することだそうだ。

耐震補強の具体的な⽅法は、簡単にまとめると、
1.固めて強くする
2.しなやかさを増す
3.耐震シェルターを⼊れる
4.今よりは悪くしない
の4つ。

伝統構法で造られている空き家は、そのしなやかさを増強して耐震補強することが多いのだとか。たとえば、材⽊を組み合わせて壁を造ると、しなやかに耐震性が増すのだという。⼀部しかリノベーションできない場合は、2階が崩れてきても耐えられるよう、耐震シェルターを⼊れ⼦状に入れて部屋にするなどの⼯夫をしている。

また、より良いリノベーションのために、チームを組むのがお薦めだそうだ。「⼀⼈では古い家の魅⼒に気付かなくても、いろんな⼈と話せば、違った目で⾒えたり、問題点がわかったり、可能性がわかったりします。私たちは、設計事務所などのリノベーションチーム、⼤学や専門家などの調査・研究・教育チーム、長屋住人や所有者、大阪市立住まい情報センターらで魅⼒発信チームを作っています」。

スーパー町内会活動

株式会社シカトキノコ代表藤田ツキト氏株式会社シカトキノコ代表藤田ツキト氏

藤⽥ツキト⽒は、企画広告会社・株式会社シカトキノコの代表で、妄想都市研究家でもある。
妄想都市とは個々が想い描く、最⾼に夢のある都市のことで、妄想を実践し、リアルに体感すれば、平和な都市を作るヒントになるのではないかと考えている。

スーパー町内会活動は既存の町内会を若い人や新しい人たちがより関わりやすいものにしようとするもので、発起⼈は劇作家の岸井⼤輔⽒、空堀のコワーキングスペース往来の店主であり、2 畳⼤学の学⻑である梅⼭晃佑⽒、そして藤⽥ツキト⽒の3人。参加型の大喜利で町内会を考える企画では、毎回「スーパーな町内会とはどんな活動をしている?」をお題にアイデアを出し合っている。

リアル町内会では、町内に空き家ができたとき、Facebookで「誰か住まないか︖ 」と投稿したところ、友⼈3家族が移住。町内会に⼊って、地域活動にも参加してもらえた。現在は、町内会役員を務めたり、東成区のブランドプロジェクト「ひがしなり街道⽟⼿箱」にも関わっている。

さまざまな活動から、空き家の活用方法を見出す

トークセッションは、大阪市コミュニティ協会・都市コミュニティ研究室の堀久仁子氏が司会として、「さんぽ日和」という空き家イベントを開催している楠原氏がパネリストとして加わった。
「さんぽ日和」は、発掘した空き家や、不動産会社として預かっている空き家をオープンハウスとして屋台を開き、参加者にエリアをさんぽしてもらうイベント。空き家の魅力を知ってもらえるうえ、不動産会社の社員や建築士が売り子を務めることで、日ごろにはないコミュニケーションが生まれるという。

セッションはそれぞれの立場から、空き家をめぐる現状や問題点がテーマ。
「新築にして需要がある空き家ならいいが、更地にしてもどうにもならない物件は不動産屋から敬遠されてしまいます。古い町屋の活用を真剣に考える不動産屋も増えているのですが、リノベーションした家をほしがる人がいなければ仕方ありません。だからこそ、さんぽ日和などのイベントを開いて、なるべくたくさんの人に、空き家の魅力を知ってもらう工夫をしています」楠原氏。
藤田氏は「今後、平成以降の新耐震基準を満たした物件が増えてくるので、リノベーションが楽になります。自分たちが住んで楽しい家にリノベーションする方向に進むのでは」と語った。

まちづくりを進めるための収益をあげる仕組み作りについての質問には、「僕が手掛ける物件には耐震工事をして、そこから収入を得ています。でも、持ち主に損はさせない工夫は必要ですよ。またもう一つは管理料。家は傷んでいますので、たとえば南西の窓が雨漏りしているのを発見したとき、リノベーションに関わった私なら、すぐ対応できます」と和田氏。

リノベーションチームの作り方を尋ねられると、「いろんなところへいって、気の合うメンバーを控えておいて、必要なときに声をかけています」と楠原氏が答え、小池氏も「気の合う人とチームを組むのが一番です」と太鼓判を押していた。

空き家を活用するため、さまざまな取り組みがあるとわかったが、未経験者が手掛けるにはハードルが高い。しかし、掃除したり、古道具をマーケットに出したりするだけでも見えてくるものがあるので、空き家を放置せず、なんらかの工夫を加えることが、活用の第一歩なのだそうだ。

今回のセミナーは、
・空き家の活用ってなんだろう?
・地域は空き家をどうみているか?
・空き家をリノベーションすると、何が生まれるか?
・空き家を活用するときの注意点。
を、受講生に考えてもらうのが目的とのこと。

空き家の所有者は、それぞれ考えてみてほしい。そして、すぐの活用は難しいかもしれないが、まずは考えてみることから始めてみるとよいかもしれない。

大阪市コミュニティ協会都市コミュニティ研究室の堀久仁子氏が司会を務め、パネリストとして泉建設株式会社の楠原陽子氏を加えた5人によるパネルディスカッション大阪市コミュニティ協会都市コミュニティ研究室の堀久仁子氏が司会を務め、パネリストとして泉建設株式会社の楠原陽子氏を加えた5人によるパネルディスカッション

2017年 12月21日 11時05分