赤ちゃんからお年寄りまで「まざり合える」施設が4月オープン!

▲JR南大高駅のロータリーに面した『南生協よってって横丁』では幅広い世代がランチを楽しんでいる。『南生協病院』(奥)も隣接▲JR南大高駅のロータリーに面した『南生協よってって横丁』では幅広い世代がランチを楽しんでいる。『南生協病院』(奥)も隣接

今年4月、名古屋市緑区に、カラフルでモダンな『南生協よってって横丁』がオープン。オーガニックカレー、健康にこだわった発酵食材のナチュラルカフェ、レストランバー、イタリアンレストランが入居し、華やかな雰囲気だ。一見、テナントのあるおしゃれなマンションといった印象だが、実は『南医療生協』の福祉施設なのだという。

「『南生協よってって横丁』が目指しているのは、医療・介護・まちづくりの一環として、“赤ちゃんからお年寄りまでまざり合うスペース”の提供です」(南医療生活協同組合 服部真和氏)
組合員が、職員や専門家と一緒に健康なまちづくりを進めている『南医療生協』では、総合病院の『南生協病院』につづいて、新たな介護・医療拠点となる『南生協よってって横丁』をつくり上げた。

1・2階には「在宅診療所」「歯科クリニック」「メンタルクリニック」「訪問看護ステーション」「ヘルパーステーション」「指定居宅介護支援事業所」「デイケア」「小規模多機能ホーム」が軒を連ね、まさに“介護サービスの横丁”となっている。
また3・4階は「住宅型有料老人ホーム」(全39室)、5~8階は「サービス付き高齢者向け住宅」(全57室)が入り、24時間365日の介護・医療サービスが受けられる“終のすみか”がつくられた。

日本の65歳以上の人口が1/4を超え、核家族化が進む今、お年寄りから赤ちゃんまでふれあえるようなご近所づきあいは確実に減っている。国が注力する「高齢者が安心して家で暮らせる環境づくり」のお手本となりそうな『よってって横丁』を早速取材した。

「南生協病院ができた」では満足せず、次は終のすみかづくりへ

▲2階には、キッズコーナーやテーブルを備えた空間と開放的なテラスがある。施設の真ん中に『井戸端』をつくり、自然な交流を生み出していく▲2階には、キッズコーナーやテーブルを備えた空間と開放的なテラスがある。施設の真ん中に『井戸端』をつくり、自然な交流を生み出していく

おもちゃ箱のような総合病院『南生協病院』は、組合員・職員・専門家による「千人会議」を重ねて、2010年に完成した。ところが組合員にとっては、ここがゴールではなかったという。
「病院ができただけで本当に満足なのか?という声が、組合員さんからあがりました。病院ではできないサービスをできる場所や、介護やお世話が必要になったときに安心して住める家がほしい、という声が集まり、2012年から『10万人会議(南医療生協近未来構想会議)』が始まったのです」

ちょうど同時期に、JR南大高駅前の市有地を活かした施設づくりの公募があり、「10万人会議」で集まったアイデアが見事選ばれた。『南生協よってって横丁』は、JRの駅前かつ南生協病院の隣という抜群の立地を手に入れたことで、実現への道が開けた。
「名古屋市からは『駐輪場』と『にぎわい創設』を盛り込んでほしいという要望があり、1・2階はこだわりのある飲食店に入ってもらい、にぎやかな空間づくりを目指しました。また南生協病院で実現しなかったプランのリベンジを兼ねて、設計途中までロッククライミングも計画されていたんですよ(笑)」

もちろん『よってって横丁』はお店・介護施設・高齢者住宅といったハコだけを整えたわけではない。赤ちゃんからお年寄りまでが“まざり合う”ためのアイデアもたっぷりだ。

「1階には『自習室』があります。最近クチコミで広がり、夕方になると小学生から高校生までが勉強しています。また2階はキッズコーナーや授乳室、テラスがあり、子育てママたちがのんびりできる場所になっています。いずれは、上の高齢者住宅に住む方が子どもたちに勉強を教えたり、小さな子のお世話をするといった交流が生まれるといいですね!」

組合員が毎日、野菜づくりに精を出す。「程よい世話焼き」の輪が拡大中

▲駅に面した横丁のテラスで野菜づくり。「2階の菜園が完成したら、次は3階、4階…と組合員さんの計画は着々進行中です」と服部氏はにっこり▲駅に面した横丁のテラスで野菜づくり。「2階の菜園が完成したら、次は3階、4階…と組合員さんの計画は着々進行中です」と服部氏はにっこり

『南生協よってって横丁』のテラスには、家庭菜園がつくられている。かぼちゃやとうもろこし、トマトなどが青々とした葉を茂らせていて、丹精込めて手入れしているのがよく分かる。

「横丁のオープンまつりの時に声をかけたら、70人ぐらいの組合員さんが『手伝う』と名乗り出てくれて、すっかりお任せしています。毎日手入れをしに来てくれる方もいて、野菜の種類やオリジナルの柵がどんどん増えています(笑)」

団塊世代が定年を迎えた頃から、南医療生協では男性のボランティアが増え、菜園づくりや日曜大工などに力を発揮している。妻たちも、夫の新たな活躍の場ができて喜んでいるそうだ。

こうした組合員発のイベントや活動は実に多く、「横丁では、大小併せるとほぼ毎日イベントが行われているんじゃないでしょうか。スタッフももう把握できていません」と服部氏は話す。
「先日は日本酒通の方が集まる『日本酒の会』が、『ほろ酔いシネマ』を催しました。醸し人九平次といった名酒を飲みながら、懐かしの映画を見る面白いイベントでしたね」

ちなみに「日本酒の会」の皆さんは、日本酒を持って上階の高齢者住宅へ押しかけ、プチ居酒屋イベントを開くことをひそかに計画中だとか! 組合員の“世話焼きの輪”が横丁をどんどん盛り立てている。

サ高住と有料老人ホームの部屋番号を「○○番地」にして、ひとつのまちに

▲横丁のロビーには手づくり雑貨の店「ないしょ話*夢の森」が定期的に出店。組合員の方からの声かけで「10万人会議」に参加し、この催しが決まったそうだ▲横丁のロビーには手づくり雑貨の店「ないしょ話*夢の森」が定期的に出店。組合員の方からの声かけで「10万人会議」に参加し、この催しが決まったそうだ

『南生協よってって横丁』には、「住宅型有料老人ホーム」と「サービス付き高齢者向け住宅」が入っている。どちらも介護付きではなく、併設する事業所から介護サービスを受けるものだが、どうして似たコンセプトの住まいを2種類つくったのだろうか?

「有料老人ホームは要支援・要介護の方が入居対象で、サ高住は自立の方も入居できます。それぞれの入居者が訪問したり、サポートをするといった“お互いさまの交流”を目指して、このような形になりました。今後、有料老人ホームの1フロアは認知症グループホームへの転換を予定しています」

面白いのが、有料老人ホーム、サ高住ともに部屋番号が「○○番地」となっていること。「各階がひとつのまちになり、地域の町内会に参加したり、仲間を集めて班会を開いてくれたらと願っています。“終のすみか”としてお部屋で安心して過ごしていただきながら、地域や仲間と繋がってもらえればうれしいですね」

現在は「駅前かつ、病院とショッピングモールが隣接」という立地の魅力を受けて、いずれも満床。関西や九州といった遠方から移り住む入居者もいるそうだ。
「実は、地元の組合員さんは計画に関わりながら、自分で住もうと思っていないんです(笑)。むしろ『よってって横丁』をモデルにして、自宅のそばに同様の施設を建てたいと考えていますね」

こうして第2、第3の横丁づくりを目指して、7月から「よりあい10万人会議」がスタートする。
「組合員さんたちに、ゴールはないですね」と服部さんが話す通り、南医療生協の“おたがいさまのまちづくり”はますます進化を続けていく。

取材協力/南医療生活協同組合

2015年 07月08日 11時06分