京都市のエリアの特性を生かした空き家の活用法とは?

京都の町家を改修して誕生したHAPS京都の町家を改修して誕生したHAPS

現在、京都市内で問題となっている空き家。空き家活用方法の一つとして新たな取り組みが始まっているのはご存じだろうか?今回、その取り組みについてご紹介したい。

京都市東山区は、建仁寺や清水寺にほど近い京都でも有数の観光地である。
京都市内には、4つもの芸術大学がある特有な場所である。歴史だけではなくアートも魅力的なこの街で空き家を使って“芸術分野の援護”をしようと活動しているのがHAPS(ハップス)である。
HAPS設立の背景として、京都市が2007年に策定した「京都文化芸術都市創生計画」において「若手芸術家等の居住・制作・発表の場づくり」事業が計画された。それを基に、2009年4月から調査が開始されて、事業プランニングに着手。2011年9月に、実際に若手芸術家をサポートする組織として「東山 アーティスツ・プレイスメント・サービス実行委員会」、つまりHAPSが設立された、という訳だ。

今回、HAPSの運営に携わるディレクターの芦立氏と広報の藏原氏とに、HAPSの活動と現在行われている空き家の活用方法について色々と聞いてみた。

HAPSについて

HAPSの拠点を実際にリノベーションしている様子HAPSの拠点を実際にリノベーションしている様子

――HAPSが生まれたきっかけを詳しく教えてください。
藏原氏:京都市内に芸術大学が4つありますが、卒業と同時に京都を離れてしまう人も多いので、市として歯止めをかけつつ、アーティストとして成長できるよう、そしてゆくゆくは地域活性につながれば文化的にも地域的にもより盛り上がるだろうという事で計画されました。

京都市の空き家率は14.1%(2008年京都市統計)との調査報告があります。空き家は多く、だからといって実際に活用するのは難しい状態です。不動産の流通市場に出すためには、家の状態が悪いためリフォームやリノベーションを行う必要がありますが、費用面でもハードルが高く着手できないというのが実際のところです。
そんな双方をつなぎあわせるのが「HAPS」の活動です。アーティストはつくる技術はありますが、つくる「場所」がありません。一方で、空き家を活用したいオーナーにとっては、借主自身が手を動かしてくれれば、費用負担が減るので、お互いのメリットが合致します。

――このHAPSの拠点事務所もリノベーションですか?
芦立氏:この事務所の町家のオーナーは島根にお住まいです。親から相続で引継ぎ、いざ活用しようとしても、一般の不動産に流通させる為には、リフォーム・リノベーションをする必要がありますが何百~何千万円という費用が発生してしまいます。オーナーさんにとって、ほとほと困っていた物件でした。そんな物件でしたが、自分たちでDIYやリノベーションを行うというお話でお借りし、現在、活動拠点とさせていただいています。

――年間何件ぐらいの問い合わせがくるのですか?
芦立氏:アーティスト、関係者の方、そしてオーナーの方から年間累計で300件程度相談がきます。本当に様々な問い合わせがきます。物件に関してはアトリエとして使用したいという相談、その他映画の撮影場所を探している、ギャラリーとは異なる場所で展覧会を開催したいという人もいた…。一つをとっても、陶芸の電気窯や木工機材を置きたいので周囲に気兼ねなく音を出せる場所を探している、土間か庭があるなど、求めることは様々です。空き家にある古い家具の引き取り者を探しているような問合せもあります。

藏原氏:今年の4月に京都市で空き家条例が施行されて、改修のための助成金制度も始まったため、以前よりも問い合わせが増えてきた傾向にあります。

――最近の認知度は上がってきましたか?
藏原氏:アーティストには浸透してきたと思いますが、一般の方には、まだまだだと感じることも多いです。最近は、京都外からの問い合わせも多く来ています。

HAPSの役割は色んなニーズをマッチングさせる「相談所」

HAPSが具体的に行うのは、以下の4つ。

①芸術家支援
   京都在住の芸術家たちの居住・制作・発表を包括的に支援する
②地域創造
   芸術家たちの創造性を京都市の活力へとつなぐ
③ネットワーク形成
   国内外の芸術機関と多様な協力体制を構築する。
④イノベーション活動
   新たな芸術のあり方と、新たな社会のあり方を共に探求する

この上記ミッションを達成すべく、具体的な活動として「相談窓口」として、物件の相談は京都市全域を対象にアーティストとオーナーとのマッチングを行い、住む為の場所やアトリエ、制作したものを展示できるスペースを提供するきっかけづくりを行っている。


――オーナーの年齢層は比較的高いですか?
芦立氏:年配の方が多いです。例えば東山区は5軒に1軒が空き家という調査結果もあり京都市の中でも非常に割合が高い場所です。オーナーの高齢化が進んでいる場所でもあります。また子供も少なくなっている地域で、多くの小学校が合併していいます。観光地として有名ですが、若い家族の場合には実際に欲しい広さを購入するには価格が高い。

――借りる方とオーナーのそれぞれのメリットは何ですか?
芦立氏:たとえば、アーティストが制作する際に、壁に直接くぎを打ちつける必要がある場合がありますが、通常の賃貸用物件ではNGなことが多いです。しかし、改修が必要な空き家であればアーティストが思うような空間をつくりあげることができ、手間はかかるが、アーティストにとってメリットも多い。
オーナーによって、水廻りまでは費用をだすなど物件によって条件は様々。活用される物件が増えていけばアーティストも活躍できる場が増えるし、空き家が循環する為の一つの方策となっていくでしょう。

――そんな中でHAPSの役割はどのようなことですか?
藏原氏:一般的な賃貸契約とは異なる契約内容になることも多いので、借り手が改修を行う場合など、オーナーの不安が無いよう、双方の意思を確認して、細かな調整を行います。また、地域にアーティストが増えてくることで借りるアーティスト同士の交流も増えて、京都での芸術の創作活動をつなぐ環境もつくれてきていると感じています。

アーティストの展示スペースとして利用しているアーティストの展示スペースとして利用している

地域との関わりも大事にして活動を行う

六原学区の『空き家の手帖』完成記念トークイベントの様子六原学区の『空き家の手帖』完成記念トークイベントの様子

HAPSが事務所を構える東山区・六原学区は京都市でも特に空き家対策について活発に活動しているエリアである。
たとえば、以下のような活動を行っている。

・六原まちづくり委員会の活動
 地元有志を中心に、専門家等も参加し、2011年より発足。2012年よりHAPSも参加している。地域の空き家問題や高齢化等の問題に取り組んでいる。

・「空き家の手帖」
六原まちづくり委員会が空き家の活用を促すべく専門家とともに制作し、エリアの方に配布している冊子。空き家が町に対してどのような影響を及ぼすか、一つの家族をストーリーの軸に様々な意見交換をしながら空き家の影響や対策解説をしている。

HAPSでは地域の活動にも積極的に参加。回覧板でニュースを発信するなどして地域との交流を深めている。

空き家対策は?

今回取材したHAPSでは空き家対策の一つの案として、京都市と一緒に街のニーズと活動する若手芸術家等をマッチングする機能を果たしながら、空き家を活用する取り組みを行っている。

交通に不便な場所というだけではなく、住みたい側の人と住んでもらいたい側の人の不動産に対する価値観のズレが生じる場所でも、ニーズと現実のミスマッチによっても空き家が生まれていることがよくわかる。 
今回のHAPSの活動のように、住む側の隠れたニーズをうまく引き出すことで、空き家が新たに活用される事に気付かされた。

空き家の理由は様々で、街の特性も全く異なる。エリアの特性を理解し、様々な空き家対策が施策され、実行に移すことで一歩ずつ社会全体の「空き家」対策の効果が得られると感じた。

2014年 11月23日 10時49分