寮生同士が交流しながら、互いに切磋琢磨できる環境作り

チェルシーハウス国分寺のエントランスチェルシーハウス国分寺のエントランス

少子化の進行にともない、各大学は学生集めの一環として、学生寮の充実にしのぎを削っている。近年は、数百人収容の大型学生寮を建設する大学が多く、「至れり尽せり」の豪華な学生寮も増えている。しかし、豪華な学生寮は料金が割高で、寮の規模が大きくなればなるほど、学生同士が交流する機会も失われてゆく。学生寮の居室が「相部屋」から「個室」にシフトしていることもあって、「寮生の中で友人と呼べる相手は1人か2人しかいない」というケースも珍しくない。

そんな中、人と人との交流を重視する”コミュニティ型”の学生寮が注目を集めている。今年3月、東京・小平市にオープンする『チェルシーハウス国分寺』も、その1つだ。
これは、低価格で利用できる、収容人数56名の小規模な学生寮。教育関係のNPO法人ニューベリーが、学生寮の仲介・斡旋事業を手がける株式会社ネストレストと提携して企画したものだ。その最大の特長は、さまざまな仕掛けにより寮生同士の交流をうながし、互いに切磋琢磨できる環境を作りながら、「学生の成長の最大化」を目指す点にある。ニューベリー理事長・山本繁氏はこう語る。

「チェルシーハウスという名前は、かつてニューヨークにあった『チェルシーホテル』から借用したものです。このホテルには一流アーティストが数多く滞在し、互いに交流しながら創作活動を行っていました。このチェルシーホテルのように、若い人たちが刺激し合いながら成長できる場を作りたい――そんな思いから、この学生寮をチェルシーハウスと名づけたのです」

やりたいことに集中できる場を提供し、学生の成長を支援する

学生の交流の場となるリビングルーム学生の交流の場となるリビングルーム

ニューベリーでは2009年から、大学の教育支援の一環として、”中退予防”のための取り組みを続けてきた。そして、中退に追い込まれる学生の多くが、大学で他の学生と交流する機会を持てず、周囲から孤立してしまう現実が浮かび上がってきたという。

また、ニューベリーが2006年から取り組んできた「トキワ荘プロジェクト」の経験も、大きなヒントとなった。トキワ荘プロジェクトとは、漫画家志望の若者たちに低家賃でシェアハウスを貸し出し、プロの漫画家になるための支援を行う取り組みだ。このプロジェクトを通じて、「同じ目的を持つ若者が、共同生活を通じて切磋琢磨することが、相乗効果をもたらす」と実感。「研究教育は大学が担うべきだが、人間教育は学生寮が担うべきだ」と考えるに至ったという。

「学生は、人の輪の中で群れて育ちます。ニューヨークのマンハッタンから一流のアーティストが生まれ、シリコンバレーが世界的な起業家を輩出したのは、一流を目指す人たちが集まって交流できる環境があったから。誰かが本気でがんばっていれば、その本気は他の人にも感染していく。本気で学生生活を充実させたい学生を集めて、やりたいことに集中できる環境を作れば、学生の成長を最大化できるのではないか――チェルシーハウス国分寺の企画は、そんな発想から生まれました」(山本氏)

短期滞在用ゲストルームも併設し、国内外の学生や社会人と交流

大浴場を改装した多目的フリースペース大浴場を改装した多目的フリースペース

『チェルシーハウス国分寺』の建物は、企業の社員寮を再生したリノベーション物件。2名1室の相部屋制で、1階が男子フロア、2階が女子フロアとなっている。また、1階には共用のリビングダイニングやキッチン、スタディルーム(自習室)などを設置。元の大浴場は改装され、イベントや交流の場として活用できる多目的フリースペースに生まれ変わった。
この他、短期宿泊が可能なゲストルームも併設。国内外から意欲的な学生を招き、寮生との間で親交を深められるようにした。「チェルシーハウスを、世界中の学生や社会人が集まる交流の場にしていきたい」と、山本氏は意気込む。

「チェルシーハウス国分寺の設計にあたって目指したのは、学生のクリエイティブな感性を刺激して、やりたいことを追求でき、コミュニケーションが生まれる空間作りです。そのために、勉強に集中できるスタディルームと、グループでの共同作業の場となるフリースペースを用意しました。フリースペースでは元の浴槽を活かして中に芝生を敷き、テーブルや本棚も置いて、くつろげる空間にしたいと考えています。庭や屋上も広いので、バーベキューやマルシェ(市場)など、やりたいことがあれば自由に使って欲しい。あえて作り込みすぎず、住む人と一緒に手を加えていけたらいいな、と考えています」(ネストレスト・シェアハウス事業部、金指了氏)

経験豊かなメンターが伴走し、学生生活をサポート

居室は2名1室。これがコミュニケーションの最小単位となる居室は2名1室。これがコミュニケーションの最小単位となる

一方、管理運営面でも、学生の成長を支援するための工夫が随所に凝らされている。
寮生8名で1グループを構成し、グループ単位でやりたいことを追求しながら、互いのコミュニケーションを深めていく。また、月1回は寮生による全体会議を開き、寮の自治を円滑に行うための問題解決やルール作りにも取り組んでいく。

学生の成長を加速させる工夫は、それだけではない。最大の目玉ともいえるのが、他に類をみないほど手厚いメンター制度だ。チェルシーハウス国分寺では、56人の寮生に対して16人のメンターを配置。寮生8名につき2名の専属メンターが付く。メンターは月1回程度、寮生と交流しながら学生生活をサポート。寮生の相談に乗り、寮生の将来に役立つ人脈や情報を提供していく。

現在、メンターとなっているのは、各界で活躍する20代~30代の社会人。大企業の社員やフリーランス、ベンチャー経営者など経歴もさまざまで、バラエティに富む人選となっている。
「メンターの人選にあたっては、“自分自身が描く未来に向かって突き進んでいる人”を選びました。発展途上にある先輩の背中を見ながら、寮生自身も自分の未来を作っていって欲しい。そんな思いで、メンターの発掘とコーディネートに取り組んでいます」(チェルシーハウス国分寺キュレーター・斉藤寛子氏)

今後5年間で、チェルシーハウス500室の運営を目指す

1月19日、都内で「第2回チェルシーハウス国分寺説明会」が行われ、約30人の学生が集まった。会場は熱気にあふれ、6人のメンターによるトークライブが始まると、参加者は目を輝かせて話に聞き入っていた。
説明会終了後のアンケートでは、「メンターの人柄が素晴らしく、ここでなら自分を成長させられると思い、ますます興味をもちました」「素敵な学生と触れ合えて、テンションが上がりました」などのコメントが寄せられ、反応も上々。なかには、「(メンターのトークライブを聞いて)心が震えました」というコメントもあり、メンターの存在が学生に強い印象を与えたことがうかがわれた。

チェルシーハウス国分寺は現在、入寮申し込みを受付中。3月1日に入寮を開始し、グランドオープンは新学期の4月1日を予定している。なお、ニューベリーとネストレストでは、チェルシーハウス国分寺を皮切りに、今後5年間で500室の運営を目指すという。

それにしても、寮の役割を「学生の成長を支援する場」と明確に定義し、その目的にこれほどコミットした学生寮も珍しいのではないか。その意味で、チェルシーハウス国分寺の試みはまさに画期的だ。この寮が、真の意味で日本版”チェルシーホテル”となり、未来を担う新たな人材供給源となることを期待したい。

1月19日に行われた説明会でのメンターによるトークライブ1月19日に行われた説明会でのメンターによるトークライブ

2014年 02月08日 17時07分