住宅の断熱性能にもっとも影響を与えるのは窓などの開口部
昨今は「異常気象」が異常ではなくなってきている。たとえば気温。昨夏(2023年6~8月)の全国平均気温は、1898年の統計開始以降もっとも高くなった。今年に入ってからも、2月の最高気温を更新した地域は200地点を超えている。真冬の2月なのに20℃を超えた場所が続出したのだ。ところがその多くの地点で、翌日は一桁の気温となった。寒暖差が激しくなっている中、今後の住宅はますます断熱性能が重視されるようになるだろう。
住宅の断熱性能にもっとも影響を与えるのは、窓などの開口部といわれている。一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会の資料によると、冬の暖房時に熱が流出する割合は外壁が15%に対して開口部は58%、夏の冷房時に熱が入る割合は外壁が7%に対して開口部は73%だ。
そこで政府は、令和5(2023)年度補正予算による補助金事業「先進的窓リノベ2024事業」を開始する。既存住宅の断熱窓へのリフォームを促進し、省エネ化を促すことで光熱費の軽減、快適な暮らし、CO2排出削減などの実現を目指す。
高断熱窓へのリフォームに対して最大200万円を補助
先進的窓リノベ2024事業は、既存住宅の高断熱窓へのリフォームに対して費用の2分の1相当(上限200万円)を補助する制度だ。具体的な内容は以下になる。
●補助対象
既存住宅に行う開口部(窓等)の断熱性能を向上させる工事が対象。先進的窓リノベ2024事業における「住宅」とは、人が居住するための家屋だ。店舗や施設等の住宅以外の用途に使用している建物は対象外となる。
●補助額の上限
補助額の上限は、200万円/戸。住宅の建て方、設置する窓の性能と大きさ、設置方法に応じて定められている。
●対象者
住宅所有者などの工事発注者が、補助を受けられる。
ただし、事務局に登録を済ませたリフォーム事業者が申請手続きを行い、事業者から住宅所有者等に全額還元する。つまり、手続きはリフォーム事業者にお任せで構わないということだ。
還元方法は「補助事業に係る契約代金に充当する」「現金で支払う」の2種類がある。
●工事着手期間
2023年11月2日以降に対象工事に着手したもの
●交付申請期間
2024年3月中下旬~予算上限に達するまで
(遅くても2024年12月31日まで)
対象となる6つの工事とそれぞれの補助額
対象となる開口部のリフォーム工事は以下の6つだ。
●ガラス交換
先進的窓リノベ2024事業における「ガラス交換」とは、既存窓のガラスのみを取り外し、既存サッシをそのまま利用して複層ガラス等に交換する工事のこと。交換するガラスが同じであっても、既存サッシとの組み合わせによって窓の性能に差が生じるので、性能区分と補助額が下の図のように異なる。なお、屋外から施錠できるドアのガラスのみの交換は対象とならない。
窓の性能区分がUw値(窓の熱の伝わりやすさを表す数値)が1.1以下で、ガラスのサイズが1.4m2以上の場合、補助上限額は最大の5万5,000円となる。
●内窓設置
先進的窓リノベ2024事業における「内窓設置」とは、既存窓の内側に新たな窓(内窓)を新設する工事、または既存の内窓を取り除いて新たな内窓に交換する工事のことをいう。ただし、外皮(外側)部分に位置する既存窓の開口面から屋内側へ50cm以内で平行に設置するものに限る。こちらも性能区分とサイズによって補助額が異なる。
窓の性能区分がUw値1.1以下で、ガラスのサイズが2.8m2以上の場合、補助上限額は最大の11万2,000円となる。
補助額は性能区分とサイズによって異なる
●外窓交換(カバー工法)
先進的窓リノベ2024事業における「外窓」とは、住宅の外皮(外側)部分の開口部に設置する建具のうち、屋外から施錠できないものをいう。また「カバー工法」とは、既存窓のガラスを取り外して既存窓枠の上から新たな窓枠を覆い被せて複層ガラス等に交換する工事を指す。補助額は下の図のように性能区分とサイズによって異なる。
窓の性能区分がUw値1.1以下で、ガラスのサイズが2.8m2以上の場合、補助上限額は最大の22万円となる。
●外窓交換(はつり工法)
ここでの「はつり工法」とは、既存の窓ガラスと窓枠を取り外して新たな窓枠を取り付け、複層ガラス等に交換する工事を指す。補助額は下の図のように性能区分とサイズによって異なる。
窓の性能区分がUw値1.1以下で、ガラスのサイズが2.8m2以上の場合、補助上限額は最大の18万3,000円となる。
「カバー工法」と「はつり工法」の違い
●ドア交換(カバー工法)
先進的窓リノベ2024事業における「ドア」とは、住宅の外皮(外側)部分の開口部に設置する建具のうち、屋外から施錠できるものを指す。「カバー工法」とは、既存のドアの枠を残して取り除き、既存の枠の上から新たな枠を取り付けてドアを交換する工事のことである。こちらもドアの断熱性能とサイズによって補助額は異なる。
ドアの性能区分がUd値(ドアの熱の伝わりやすさを表す数値)が1.1以下で、ドアのサイズが2.8m2以上の場合、補助上限額は最大の22万円となる。
●ドア交換(はつり工法)
ここでの「はつり工法」とは、既存ドアを枠ごと取り外して新たな枠を取り付け、ドアを交換する工事のこと。補助額はドアの性能とサイズによって異なる。
ドアの性能区分がUd値1.1以下で、ドアのサイズが2.8m2以上の場合、補助上限額は最大の18万3,000円となる。
環境省に寄せられた「よくある質問」を紹介
環境省では、先進的窓リノベ2024事業の専用サイトを立ち上げている。そこには、「よくある質問」も公開されているので一部を抜粋しよう。
Q.二世帯住宅の場合、2戸として申請できますか?
A.2戸として申請可能。ただし、2戸であることを確認するための追加書類の提出等が求められる。
Q.新築住宅でも申請できますか?
A.新築住宅は対象にならない。
Q.増築を行った場合、対象となりますか?
A.増築部分が住宅であり、要件に該当する外窓設置工事であれば対象になる。ただし、住宅瑕疵担保履行法上の資力確保措置の義務の対象になる工事は対象とならない。
Q.別荘や賃貸住宅、シェアハウスの窓のリフォーム工事は対象となりますか?
A.要件を満たせば対象となる。
Q.店舗併用住宅(複合用途)の窓リフォームは対象となりますか?
A.住宅部分の窓リフォームは対象となる。
開口部の断熱性能向上は、光熱費の削減だけでなく、家中の室温が一定に保たれて快適で健康にも良い影響があるとされる。もし今の住まいの温熱環境に不満を感じているのであれば、ぜひ先進的窓リノベ2024事業の利用を検討してはいかがだろうか。
なお、政府は同事業以外にも「住宅省エネ2024キャンペーン」としてさまざまな補助制度を用意している。詳細は以下の関連記事を参照いただきたい。
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