百貨店に現れた、雑貨屋のようなDIY専門ショップ
かわいい〜! と思わず店内に引き寄せられてしまう。ニュアンスカラーが効いた壁紙を背景に、シャンデリアや吊り照明、棚のあちこちに飾られた観葉植物が空間に映える。「Decor Interior Tokyo」は、東京・吉祥寺に続く2店舗目となるDIY専門ショップで、大阪初進出となる。2016年に東京・代官山に第1号店をオープンしてから(のち、吉祥寺に移転)、DIY愛好家のなかでも、コアなアイテムを求めるリピーターやファンが多い店だ。2021年12月に、 阪神百貨店梅田本店が1階から9階までの建て替えオープンをする際に、新たに店舗として加わった。
吉祥寺店と 阪神百貨店梅田本店との違いは、ディスプレイブースの広さだ。吉祥寺店と比べても、倍以上の面積がある。店内の壁やテーブル、レジカウンターなどはすべて、商品を使用したDIYが実践されており、実例サンプルとして視覚的にもイメージしやすくなっている。
オリジナルの塗料や輸入壁紙、刷毛などの基本的な施工道具に加え、クッションやファブリックなどのインテリア用品もそろっている。「インテリア」という視点から集められたDIYアイテムが集まっている、雑貨屋さながらのDIY専用ショップなのだ。
「気軽に部屋をリメイクできたり、自分好みにアレンジできたりするうえに、部屋に愛着が湧くこともDIYの魅力。日本的なインテリアでは、“家具”で空間を彩ろうとしますが、私たちが提案するインテリアは、家具に合わせた“背景”を作っていくことです。洋服を着替えたりコーディネートしたりするような感覚で、ワクワクしながらDIYができるアイテムを紹介しています」とDecor Interior Tokyo 阪神百貨店梅田本店 店長の森瑞喜さんは話す。
阪神百貨店梅田本店は「伝える店舗」。DIY初心者に向けた情報を発信したい
店内のテーマは、「素材屋」。物を探すのが楽しくなるような、期待感あふれる空間だ。それもそのはず「Decor Interior Tokyo」を運営する株式会社GONGRIの代表取締役 坂田夏水さんは空間デザイナー。空間デザインやリノベーションを手がける株式会社夏水組も運営している。阪神百貨店梅田本店の店舗についても、坂田さんがインテリアコーディネートの監修を担った。
もちろんスタッフ自身もDIYの実践者。壁の塗装やカウンターの設えも、スタッフ全員でDIYをしたというのも信頼が置ける。DIYをするときの楽しさ、ワクワクをお客さまにも体感してほしいという想いから、ワークショップに重きを置いている。広く設けられたワークショップブースでは、月に数回のペースでワークショップが行われている。初心者の参加も多く、毎回楽しみに訪れるリピーターも増えているという。
「DIYは本当に些細なところから始められるんです。例えば、部屋の飾り付けとして花瓶を置くのと同じ感覚で、壁紙を貼ってみたり、壁の一部を塗ってみたりする。空間が華やかになるとそれだけで気持ちが高揚しますよね。ちなみに壁紙は意外に丈夫で、柄も豊富。使い方も貼るだけでなく、木枠に貼り付けてパネルにしたり、額縁に入れて絵画のように飾ったりすることもできるんです」と森さんは話す。
DIY インテリアのコツ①壁紙をアレンジ
インテリアコーディネートを楽しむようにDIYをしたい!そのコツを教えていただいた。
「まず、壁をアレンジすることは重要です。空間の中で大きな面積を占めている壁。この場所の雰囲気が変わるだけで、空間の印象がガラッと変わります」
オリジナルの水性塗料「NATSUMIKUMI WALL PAINT」が、2021年11月には、30色のうち一部に新色が追加された。フランス・パリの街並みから着想を得たそのニュアンスカラーは、彩度と明度の絶妙な組み合わせが特徴。「こんな色があればいいのにな」という空間デザインの現場のリアルな視点から生まれた塗料なのだ。阪神百貨店梅田本店では、実際に色合いを確かめることができるので、足を運んで自分の目で確認してほしい。
「塗る作業自体もとても簡単なので、色に頼ってください。このカラーが背景にあれば、どんな空間もオシャレになれること間違いなしです」と森さんも太鼓判を押す。
壁を塗ることに抵抗があるならば、壁紙という選択肢も。ゴッホの絵画やフィンランドのファブリックブランド「マリメッコ」のテキスタイル柄やウィリアム・モリスの植物柄など、目を引く輸入壁紙がそろっているのも楽しい。貼るだけで存在感のあるデザイン壁紙は、インテリア初心者にもチャレンジしやすそうだ。
DIY インテリアのコツ②フェイクグリーンを取り入れる
実は使えるアイテムが、フェイクグリーン。DIYに加えて、飾り方次第で雰囲気がぐっとグレードアップする。
「ファッションで例えると、ペイントや壁紙が服のコーディネートとするならば、グリーンはアクセサリーのようなものでしょうか。服が決まったら、合わせて何をつける?という感覚で選んでみてください」
観葉植物だと植物の種類によっては、日陰や室内がNGだったりと置ける場所が限られている場合もあるが、フェイクグリーンであれば場所を選ばずに自由に飾れるのが大きなメリットだろう。
DIY インテリアのコツ③フィルムテープで手軽に
ほかにも意外と役立つのが、小物DIYアイテムたち。モザイクタイルやマスキングテープなど、より手軽にインテリアに活用できるアイテムが豊富にそろっている。インテリアシールやガラス戸などに貼れるフィルムテープなどは、ちょっとした遊び心さえあれば、いろいろな場所で試せるだろう。「こんなの試してみて」と友人の引越し祝いなどにもよさそうだ。
百貨店という新しいフィールドで広がるDIY
DIYは、ここまで身近になった。30年ほど前からじわじわと日本に広まり始めたDIY。汚れたクロスの貼り替えをプロに頼んだり、既製品の棚を購入したりするのではなく、暮らしや生活にまつわるものは手作りする、必要なものは自分たちで作るという実用的な役割を担ってきた。
「コロナ禍でおうち時間が増えたことや在宅ワークの増加をきっかけに、ライフスタイル自体も変わりました。コロナ禍によって、これまで暮らしに目を向けてこなかった人にも、DIYの認識が広まってきたと強く感じています。今後はどのくらい、より身近な存在にできるかというフェーズに入っている気がします」と森さんは話す。DIYがもたらすのは、部屋が暮らしやすくなるということだけではない。一番の効果は、DIYを通して暮らしに愛着が湧くということ。暮らしを楽しむ気持ちそのものが、心を豊かにさせてくれるのだ。
百貨店の中にDIY専用ショップができることは、全国を見ても珍しい事例だ。塗料やDIY用品などは、ホームセンターで買うもので、百貨店で買う文化はこれまであまりなかった。百貨店という新しいチャレンジの場で、DIYがどのように受け入れられていくのか。ぜひ一度足を運んで、暮らしに対してワクワクする気持ちを体感してほしい。
取材協力:
https://decor-tokyo.com/
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