空き家の数は848万9,000戸で過去最多を更新

放置された空き家は、庭木の枝が隣地まで伸びるなどさまざまな問題を引き起こす放置された空き家は、庭木の枝が隣地まで伸びるなどさまざまな問題を引き起こす

空き家が増えているという話が聞こえてくるようになって久しい。総務省統計局の「平成30年住宅・土地統計調査」によると、空き家の数は848万9,000戸で過去最多を更新。全国の住宅のうち空き家が13.6%も占めていることが分かった。

空き家は放置しておくと、さまざまな問題を引き起こす。庭木が繁茂すれば隣地まで枝が伸びて枯葉や果実を落とすかもしれないし、害虫の発生源にもなる。また、建物の劣化が進むと強風時は雨どいや外壁材などの落下もあり得る。さらに不法投棄や不法侵入、放火などの治安悪化の温床にもなりかねない。

しかしながら放置される空き家は増える一方だ。その大きな原因は、少子高齢化である。高齢者が持ち家を手放さずに放置し、介護老人福祉施設などに転居するケースが増えている。また、持ち主が亡くなった家の相続人が複数いるなどの理由で、誰が管理するのか決まらなかったり、管理するべき相続人が遠方に住んでいるため手が回らないというケースも多い。このような空き家問題に対処するのが、空き家管理サービスだ。

月々100円から利用できる空き家管理サービス

空き家管理サービスは、有料でさまざまな空き家問題に対処する。例えば本サイトで以前紹介したNPO法人空家・空地管理センターでは、月額100円の外観からの点検や、月額4,000円で室内外の点検ができるサービスを提供している。

メニューにもよるが、具体的には以下のような内容だ。

・目視での建物点検
・クレームの一時対応
・報告書のメール送付
・近隣挨拶
・敷地内ゴミ処理
・敷地内庭木確認
・換気
・雨漏り点検
・通水
・ポスト掃除
・冬季の雪庇除去や排雪

このような空き家管理サービスは、住宅・不動産業界の最大手企業も展開している。例えば、大東建託パートナーズ株式会社の「空き家管理サービス」や、大和ハウスグループの「リブネス空き家管理サービス」などがそうだ。
いずれも全国に広がるネットワークを活用し、全国各地の空き家に対応する。

しっかり管理できていれば資産価値も維持できる

空き家管理サービスを利用すれば、次のようなメリットを期待できる。

・近隣住民とのトラブル回避
上記のような庭木の繁茂や建物の一部が落下するといった苦情のほか、悪臭の発生、不審者、害獣の侵入といったクレームも回避できる。

・資産価値の維持
定期的に換気や通水を行っていれば、カビや排水管からの悪臭、木材の腐食などを低減できる。また、定期点検することで建物の劣化により早く気づくことができ、適切な補修を行えるので資産価値の維持につながる。

・経済的負担を軽減できる
空き家は「空家等対策の推進に関する特別措置法」によって、所有者に管理義務が定められている。そして空き家を放置し、自治体から周囲に著しい悪影響を及ぼしていると判断されると「特定空家」と指定され、解体撤去されることもある(行政代執行)。この解体撤去費用は、後日所有者へ請求される。また、「特定空家」に指定されて改善の勧告がなされると、土地の固定資産税が6倍になる。

他にも、前述の大和ハウスグループの「リブネス空き家管理サービス」は、警備会社のALSOK(アルソック)(綜合警備保障株式会社)と提携した緊急時の駆け付けサービスも付いている。

このように警備を主とするサービスもあれば、清掃を主とするサービスや資産管理を主とするサービスなど、空き家管理サービスの選択肢は増えている。

自治体によっては補助金制度もある

自分で空き家を管理できない場合、空き家管理サービスの利用を検討するのは一つの手である。だが、多くの人にとってその費用が問題となるはずだ。そこで頼りにしたいのが自治体。近年の空き家問題を背景に、空き家管理サービスの導入に対して補助金を支給する自治体も現れている。例えば、次のような補助制度がある。

福井県
空き家の所有者が民間事業者の管理代行サービスを利用した場合、一戸あたり最大で年3万6,000円を補助する。

目黒区(東京都)
空き家の管理委託費用の2分の1(上限は1ヶ月2,000円)を助成する。条件は適切に空き家を管理すること、管理委託事業者等の名称および連絡先の掲示物を設置することなど。

このほか空き家の解体に対する補助金制度を設けている自治体もある。ただし、補助金制度の有無や内容は自治体によって異なる。くわしくは空き家のある自治体へ問合せをしてほしい。

目黒区の空家適正管理助成事業のパンフレット。管理委託だけでなく樹木(庭木)の剪定に対しても助成を行っている目黒区の空家適正管理助成事業のパンフレット。管理委託だけでなく樹木(庭木)の剪定に対しても助成を行っている

「逆の立場だったらどう感じるだろう」という想像を

自分が住むことのない空き家、ましてそれが遠方の場合、管理をすることは非常に腰が重くなるだろう。だが、自分には見えていないだけで、その空き家は今も近隣住民に迷惑をかけているかもしれない。「逆の立場だったらどう感じるだろう」。空き家問題ではそんな想像力が重要だ。経済的な負担は自治体などの補助金で軽減できる可能性がある。放置している空き家の所有者は、まずは重い腰を上げてほしい。

管理委託事業者等の名称および連絡先の看板例。このような掲示物は周辺住民に対して「しっかり管理している」というアピールにつながり、防犯にも役立つ(資料提供:空家・空地管理センター)管理委託事業者等の名称および連絡先の看板例。このような掲示物は周辺住民に対して「しっかり管理している」というアピールにつながり、防犯にも役立つ(資料提供:空家・空地管理センター)

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