「本当にここに?」。そんなロケーションにある古民家がモデルハウス
京都市の中心部を東西に走り、百貨店やビルが立ち並ぶ四条通。ここからは南北に細い通りがたくさんのびているのだが、そのうちの一本を南に行くと、昔からの商店や職人の工房、個人経営の飲食店などが立ち並ぶエリアに出た。いわゆる和の情緒とは少し違うかもしれないが、これも京都らしい風景だ。そこからさらに、路地に入ったところに、リノベーション専門店のモデルハウスがあるという。
「こんなところに?」。あると聞いて行っているにもかかわらず、思わずそう口から出てしまった。それほど奥まったところに、「リバー」のモデルハウスはあるのだ。
株式会社 リバーの創業は2005年。不動産業から出発し、現在、代表取締役をつとめる坂田純一さんがリフォームやリノベーションを手掛けるようになったのは10年ほど前のこと。
「当時はまだ“リノベーション”という言葉はあまり浸透してなくて、リフォームと言えば修繕、営繕のイメージしかなかった。古くなり、壊れたところを直すことがメインです。でもそこにデザイン性を持たせたい。例えば水 廻りを直すにしても『ワンポイントでおしゃれなクロスをはりませんか?』とご提案することからスタートしました」。今では滋賀と京都にオフィスを構え、不動産業、新築、リノベーションを業務としている。
“THE”からは、あえて外してオリジナリティを持たせる
このモデルハウスは、2020年11月にオープンしたばかり。築90年ほどの民家をリノベーションしたもので、入り口すぐの土間スペースがダイニングキッチン。そして一段高いところに板間と和室があって窓からは小さな庭が見える。アンティークの照明が天井から下がり、年代を感じるソファなどが置かれている一方、鮮やかなタイルや真新しいインテリアも配されている。
新旧、そして和洋が混在しているのが特徴的だ。決して広いとはいえないが、いろいろな要素がうまく調和して居心地が良い。
「ここは京都でよく見かけるタイプの古い家だったんです。これまでリフォームして、リフォームして住み継いで来られたんでしょうね。それを一度全部スケルトンにしてつくりなおしました。うちはどちらかと言えば『THE和』『THE京都』ではなくて、ちょっと和の中にも洋をいれて、オリジナリティを出すようにしています」
ストーリーを感じさせて、“ノスタルジック”にアップグレード
“THE”からはずしたオリジナリティ。それは建物に込めた物語(ストーリー性)によってもたらされる。
このモデルハウスのコンセプトは「ノスタルジックに暮らす」。具体的には「欧米文化が一般家庭に浸透し、洋間のある暮らしが憧れだった昭和30~40年代。あの頃の郷愁を感じられる空間」(同社HPより)なのだという。
たとえスケルトンにしても、建物が持つ昭和の薫りは残る。であればそれをうまく利用したデザインで“ノスタルジック”に進化させようというのだ。
例えば、板間を見回すと、床の間が残されていることに気付くだろう。しかし全体として違和感はなく調和している。逆にこの存在感が空間の格をあげている。前世代の象徴のように思える民家の床の間でさえ、空間づくりによって雰囲気をヴィンテージ感に変えてくれるのだ。
あえて多種多様に。海外のものも大胆に取り込む
この空間に身をおけば、和に洋のテイストミックスが意外に合うと分かる。同社の場合、それはインテリアだけではなく、塗料や壁紙にも及ぶ。和室と板間を隔てる襖は、和室側は和紙、板間側はウイリアム・モリスの壁紙が貼ってある。「和の物件なので和のインテリアや内装で揃えないとダメという感覚ではなくて、多種多様なものを取り入れていれることで、オリジナルの物件になるんです」
特に気を使っているのは色使い。「壁は白と思う人、多いでしょう。でも白にもいろいろとある。ここでは淡いベージュの海外の塗料を使っています。白ではなくベージュにすることで全然空間が変わるんです。海外のものは色のバリエーションも多いのでよく使います」
まったく趣きの異なる4つのモデルハウス
同社は同時期にもう一軒、京都でモデルハウスをオープンさせている。
そちらのコンセプトは「ジャポネスクに暮らす」。キーワードは「外国人が思い描く東洋の神秘」や「大正ロマン」だ。海外で日本をイメージしてつくられた壁紙を使用している。
「和っぽく見えるけれど、色使いなどがやはり日本の和と違う。色をうまく使っているところが面白いんです」。
部屋ごとに趣きがガラリと違うダイナミックな楽しさは、ノスタルジックとはまた違った、和の一面を見せてくれている。リノベーションの参考に見学ができるほか、ゲストハウスとして宿泊客を受け入れたり、レンタルスペースとして空間貸しもしている。
また、滋賀県にも2軒のモデルハウスがある。
築約40年のマンションをリノベーションした「パリのアパートメントに暮らす」は赤いタイルが印象的。さらに戸建ての「アメリカンミッドセンチュリー」は、1960~70年代を思わせる工業系の無機質さと手作り感が同居したようなテイストだ。
まったく趣きの異なる4つのモデルハウス。実際に空間の雰囲気を体感して、比較し、自分の好きなスタイルを追求することができるのはうれしい。
予算を100%使ってお得に叶えるならリノベーション
最後に、新築とリノベーション、そのメリット・デメリットについて聞いた。
「リノベーションのメリットは、それは予算を100%建物に使えることです。新築で希望の内容を100%実現するのと、リノベーションで100%の要望を叶えるなら、リノベーションのほうが安くつきます。結局、新築だと、基礎、建物の構造など、目に見えないところにもお金がかかりますからね。リノベーションなら自分の思いに100%の予算を使えます」
ただ、思い通りにいかない部分もあるという。
「これはお客様にいつもお伝えするんですけど、どうしてもリノベーションの場合、もともと建っている建物の趣を残さざるを得ません。ゴロっと変えてしまうこともできますが、それをすると新築ぐらいの予算になってしまう可能性もあります。ですから、例えば物件を選ぶ際に、『この趣いいな』という物件にした方がいいと思います。特に外観。屋根の形などはどうしても変えにくい部分ですから」
多彩な要素が同居していながら居心地よくまとまっている同社のリノベーション。
それはストーリー性があるからこそ実現できる。新築にしても、リノベーションにしても、自分の思い描く空間に「ストーリー性」を持たせてみてはどうだろう。きっとインテリアや内装に統一感を持たせるヒントを与えてくれるに違いない。
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