2021年の干支は辛丑(かのと・うし)。干支は大自然の摂理から未来を計るためのもの

2021年の十二支である「丑」という漢字は、生命エネルギーが蓄積され、今にも弾けそうになっている状態を表している2021年の十二支である「丑」という漢字は、生命エネルギーが蓄積され、今にも弾けそうになっている状態を表している

2021年の干支は「辛丑(かのと・うし)」。どうやら痛みを伴う衰退と、新たな息吹が互いに増強し合う年になりそうだ。干支から何が分かるのかという話だが、そもそも干支は、未来に起きる出来事を知るために生み出された暦のシステムである。

東洋思想では、未来は既に定まったものとされている。しかし人はそれを知ることはできない。そこで世の中の摂理を解明し、何とか未来を知る術を得ようと、さまざまな思想体系や暦のシステム、占いなどが数多く生み出されてきた。

干支もそのひとつで、日本では干支というと一般には「十二支(じゅうにし)」を思い浮かべる人が多いと思うが、本来は10種類の「十干(じっかん)」と、12種類の「十二支」を組み合わせた、合計60種類の干支が存在する。

十干、十二支とは、太陽や月の運行と、生きとし生けるものの生命サイクルを、それぞれ10と12の段階で示したもので、それらを組み合わせることで、世の中の循環、大自然の摂理を知り、未来を計ろうとしたのである。

また干支は「陰陽五行思想」の影響を強く受けているため、干支を知るためには五行での分類も押さえておく必要がある。

陰陽五行思想とは、世の中のすべては「木・火・土・金・水」の5つの元素に分類され、それぞれに「陰」と「陽」が存在するというものである。

ちなみに陰陽五行思想では、元素単体が持つ意味だけでなく、その組み合わせにより意味が変わる。例えば、十干と十二支の組み合わせ次第によっては、どちらかが片方を強めたり、邪魔をしたり、相殺してしまうこともある。

もうひとつ、東洋思想では言葉や文字に「天意」が宿ると考えられてきたことも、干支を知るためには押さえておきたいポイントとなる。干支に使われている文字には意味がある。

このようなすべての要素を組み合わせ解析することで、人は人知を超えた真理にたどり着こうとしたのである。

さて、2021年の干支「辛丑」は、十干が「辛(かのと)」で、十二支が「丑(うし)」である。果たしてこの組み合わせはどんな未来を指し示しているのか、まずは十干の「辛」から見ていこう。

「辛」は痛みを伴う幕引き、「丑」は殻を破ろうとする命の息吹、そして希望

2021年の十干である「辛」という漢字は、からい、つらいといった身体的な苦痛を伴う感覚を表している。五行思想では五味の「辛」は金行に属する2021年の十干である「辛」という漢字は、からい、つらいといった身体的な苦痛を伴う感覚を表している。五行思想では五味の「辛」は金行に属する

「辛」は、十干の8番目に位置する。十干は生命のサイクルを「甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸」の10段階で示している。

「辛」は季節でいえば秋の終わり頃、植物なら枯れた状態にあり、実は腐って地面に落ち、次世代のタネを大地に還す途中といったところだろうか。

陰陽五行思想では、「辛」は「金の弟」と表され、「金の陰」に分類される。「金」は冷徹、堅固、確実、秋の象徴である。陰とは大人しいとか小さいといったイメージでいいだろう。つまり「金の陰」とは、黙考する、黙想するといった意味になる。

また「辛」という漢字は、刺青をする針を表した象形文字である。針で刺すことから身体的な苦痛を表す言葉に当てられ、ツライ、カライ、ヒドイなどの意味を持つ。

これらのことを考え合わせると、「辛」は思い悩みながら、ゆっくりと衰退していくことや、痛みを伴う幕引きを意味する。

「丑」は十二支の2番目に位置する。十二支は生命のサイクルを「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」の12段階で示している。

「丑」は、発芽直前の曲がった芽が種子の硬い殻を破ろうとしている状態で、命の息吹を表している。種の中に今にもはち切れそうなくらい生命エネルギーが充満している状況といえば分かりやすいだろうか。陰陽五行思想においては、「丑」は「土」に分類される。

「丑」という漢字は、手の指に力を込めて曲げた形を表した象形文字である。元々は、ひねるや曲げるといった意味で使われていたが、作業の準備段階も表していることから、「はじめ」といった意味が派生した。

では「辛」と「丑」はどのような関係にあるのか。この2つは「土生金」と呼ばれる「相生」の関係にある。

相生とは相手の力を生かし強め合う関係をいい、緩やかな衰退、痛みを伴う幕引きと、新たな命の息吹が互いを生かし合い、強め合うことを意味する。

つまり、衰退や痛みが大きければ命の初動が大きくなり、芽吹きが大きければその分、激烈に枯れる。辛いことが多いだけ、大きな希望が芽生える年になることを指し示しているのである。

大きな希望を確実なものとするためのカギは?「納音」や「二十八宿」で見てみる

さて東洋では古来、干支や陰陽五行思想の他にも、未来を知り、真理にたどり着くためのさまざまな試みがなされてきた。

今回は、2021年の「辛丑」に生まれる大きな希望を確実なものとするために、そのカギとなるものを探してみよう。中国の古代思想に大きな影響を受けている占術には、他にも「納音(なっちん)」や「二十八宿」、「九星」などが存在する。

納音とは、陰陽五行思想を基に、中国語の音韻理論で干支を整理したものである。干支は60種類で、納音は30種類のため、基本的に干支2つに納音が1つ割り振られている。

「辛丑」の納音は「壁上土」である。これは壁の上に塗られた土という意味で、地道で堅実、不動の精神力を指し示している。

次に、二十八宿で見てみよう。二十八宿とは分類すれば占星術に当たるだろうか。天の黄道を十二星座では無く、東西南北に四分割し、その一つ一つを7宿に等分し、4×7=28宿として吉凶を占うものである。

二十八宿は、暦の上で年・月・日にそれぞれ当てはめられている。これは干支も同じである。それによると2021年は「觜宿(ししゅく)」にあたり、意味は「稽古始め・運搬始めに吉、造作・衣類着始めに凶」というものである。

つまり、新しく習い事を始めるにはいい年だが、そのために新しい服を着るのはダメ。材料を運び始めるのには縁起がいいが、作り始めるのはダメと、なんともはやもどかしい年であることを指し示している。

これらを総合しまとめてみると、「辛」で思い悩みながら衰退をしつつ、「丑」で新しい生命の息吹がある。その際、マイナスが大きければ大きいほどプラスも大きくなる。そして大きな希望を手に入れるカギは「壁上土」、堅実で強い精神力にある、といったようなことになるだろうか。

加えて二十八宿では、運び始めても作るべからず、習い始めても新品を着るべからず。つまりは、焦らず慎重に進めることが重要と、何とも強い意志が試される1年になりそうである。

マカオ歴史地区にあるモンテ砦城壁。幾多の騒乱を乗り越え、孤高な佇まいを今に残す姿が、まさに壁上土を体現しているマカオ歴史地区にあるモンテ砦城壁。幾多の騒乱を乗り越え、孤高な佇まいを今に残す姿が、まさに壁上土を体現している

運搬始めはどっちに進むと吉?方位を知りたいなら九星、大凶方位は4種類

さて2021年の「辛丑」は、運搬始めに吉ということなので、どうせなら吉方位もチェックしておこう。東洋思想では方位を占うのに「九星」を用いてきた。

九星とは古代中国の思想を礎に生み出されたものであり、一白金星、二黒土星、三碧木星、四緑木星、五黄土星、六白金星、七赤金星、八白土星、九紫火星の九つの運命星が、年・月・日それぞれを循環するという考え方である。月は12ヶ月を9星が巡るので、12と9の公倍数の36、つまり3年で一巡する。

九星で占う際には、中央と八方位の9つのマスで作られた「魔法陣」を使用する。占いたい年や月、日に合わせてマスを埋め、方位の吉凶を判断する。

2021年の九星魔法陣は、中央が六白、北が二黒、南が一白、東が四緑、西が八白、北東が九紫、南西が三碧、北西が七赤、南東が五黄になる。

ちなみにその年ごとに万人にとっての大凶方位が4つ存在し、五黄殺、暗剣殺、歳破、月破と呼ばれている。2021年は南東が五黄殺、北西が暗剣殺、南南西が歳破に当たる。

月破は各月ごとに変化し、1月は西南西、2月は西、3月は西北西、4月は北北西、5月は北、6月は北北東、7月は東北東、8月は東、9月はと東南東、10月は南南東、11月が南、12月が南南西と決まっている。

この他にも、生年月日により、個人の本命星が決まっていて、本命殺や本命的殺と呼ばれる大凶方位もある。吉方位も個人によって異なるので、興味のある諸兄姉は暦を買って調べてみるのもいいだろう。

また、九星では1年を通して、年盤中央の星の影響を受けるとされる。2021年は六白金星であり、その意味は「元(おお)いに享(とお)りて貞(ただし)きに利(よ)ろし」、つまり貞節を重んじ、正しき行いを心がける者は、その望みが大いに通るということになる。

2021年は、六白金星が魔法陣の中心に位置する。九星では1年を通して年盤中央の星の影響を受けるとされる2021年は、六白金星が魔法陣の中心に位置する。九星では1年を通して年盤中央の星の影響を受けるとされる

2021年「辛丑」の初詣は、恵方の「丙の方位」にある神社がお勧め

嘴宿の「嘴」とはクチバシのことで、大きな嘴を持つコウノトリは幸せを運ぶ鳥とされている嘴宿の「嘴」とはクチバシのことで、大きな嘴を持つコウノトリは幸せを運ぶ鳥とされている

さて2021年の「辛丑」はどんな年になるのか。東洋思想が生んだ世の中の摂理を知るシステムや占術によると、古きことに悩みながらも終わりを告げ、新しき芽生えを見いだす年になりそうである。

何を終わらせて、何を見いだすのかはその人次第であろうが、その標となるのは心の強さと日ごろの行いだということらしい。

また習い事初めに吉ということなので、気分を入れ替えて何か新しいことをスタートさせるのもよし、これまで滞っていたことをまた再開するもよしである。これは受験生にとってもいい年回りとなり、コロナ禍で不安は多いとは思うが、きっと未来は明るいと信じ、頑張ってほしいものである。

そんな2021年「辛丑」の初詣にお勧めなのは、この年の恵方である「丙の方位」、つまり自宅から見て、真南から15度東に寄った辺りにある寺社である。地図アプリを使えば、探すのもそう難しくないと思う。

恵方にはその年の福を担当する歳徳神がいるとされる。受験生はその方位にある天神社に合格祈願をするといいだろう。

人は未来を知るために古代よりさまざまな試みを行ってきた。干支を知ることは、単に占いというだけでなく、古くから積み重ねられてきた世の理を知ることにも繋がる。2021年が希望あふれる年になることを祈りたい。

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