北海道帯広市で唯一成長する電信通り商店街

地方都市へ行くと、シャッターを下ろしている店舗が目立ち、寂しさを感じずにはいられない。今や「シャッター商店街」は珍しい光景ではなくなってしまったのかもしれない。車社会が浸透し街が広がり、郊外型の生活に移り変わったことで、街中の商店街が衰退している、というのが地方都市の現状だ。
そんな中、人口約17万人の北海道帯広市に成長を続ける商店街があるという。帯広で最も歴史の古い地域にある、「電信通り商店街」だ。帯広で初めて電信柱が建てられたことから「電信通り」と呼ばれ、親しまれている。

電信通り商店街振興組合の商店街作りのコンセプトは、「〜お年寄り・障がいのある方と、恊働・共生する商店街〜」。

高齢者や障がい者など地域住民が等身大で暮らしていける地域を目指し、福祉を軸に商店街に新店舗を積極的に誘致するなどして成長を続けている。さらに、商店街で古民家を改装したコミュニティ施設「salon(サロン)齋藤亭」を2016年6月にオープンさせた。1時間単位の部屋貸しを行うほか、地域課題と向き合うコミュニティの場ともなっているというので、取材に訪れた。

オーナーでもあり管理運営をする冨山さんにお話を伺ったオーナーでもあり管理運営をする冨山さんにお話を伺った

復活のきっかけは福祉の商店街づくり

電信通り商店街。老舗の高橋まんじゅう屋に加えて最近ではお菓子屋さんが増え、スイーツ商店街としても知られる電信通り商店街。老舗の高橋まんじゅう屋に加えて最近ではお菓子屋さんが増え、スイーツ商店街としても知られる

電信通り商店街は、帯広市の北東部に位置し、1883年に帯広で初めて入植がはじまった地である。しかし、街が南西部に拡大していったことで、人口減少に高齢化もあり、一時は衰退の一途を辿ったという。電信通り商店街振興組合は昭和46年に76店舗で始まったが、2010年には32店舗にまで減少した。

そんな窮地だったにもかかわらず、2017年現在は52店舗が組合に加盟。年々加盟店数を増やしているそうだ。加盟店数が増えるきっかけをつくったのが、2008年に理事長に就任した長谷渉氏だ。商店街の未来を見据え、付き合いのあった福祉事業所を誘致し、福祉の商店街へと舵を切った。以来、事業所は年々増え、総菜屋、お菓子屋、革細工の工房など、12事業所が軒を連ねている。それを皮切りに、事業所以外にもコーヒーロースターの店舗やカフェなどが新しくオープンした。商店街組合のなかで、加盟店数が増えているのは帯広市内では電信通り商店街だけだそうだ。電信通り商店街の過去の取り組みを見ていると、起業家や産学連携のチャレンジショップ事業を行うなど、さまざまな事業を通じて、子育て、高齢者、若者や障がい者への支援に取り組んでいるように感じる。さらに、電信取り商店街で独自に行った地域住民のニーズ調査では、コミュニティ施設の要望が多かった。その結果を踏まえ、地域コミュニティの拠点となる、多様な世代が交流できる場の整備に取りかかることになった。そうして完成したのが、築80年ほどの古民家を改装した「salon齋藤亭」だ。

築80年の古民家が誰でも借りられるレンタルスペースに

salon齋藤亭の建物は、所有者である冨山さんの祖父にあたる齋藤長明氏が1934年に建設した。冨山さん自身も高校を卒業するまでここで暮らしていたそうだ。8年ほど空き家で解体も考えていたところ、「改築して活用しないか」と長谷理事長から声がかかったそうだ。一部床が落ちるなど老朽化していた古民家の改装は、北海道経済産業局の補助金と自己資金を合わせて、約2,800万円が投じられ、ほぼ建設当初の状態に復元された。面白いのは、冨山さんはsalon齋藤亭の大家でありながら、掃除から企画、集客までも行う管理運営者でもあるということだ。しかし、計画当初は、土地と建物を貸すだけの予定だったという。
「血が騒いじゃったんです。先代から引き継いだ愛着のある家を復元していただいて、それを守っていくのが私の最後の使命なのかもしれないと思いました。ただ、実際はとても大変です...」と冨山さん。
キッチンダイニングや洋室、和室、茶室などを有し、部屋ごとに誰でもレンタルスペースとして利用することができる。英語教室やピラティス、フラダンス教室などの定期利用に加え、料理教室や個人パーティーなどの単発利用もあり利用者は多岐に渡る。オープン当初は利用率が1週間に1〜2人程度だったそうだが、SNSなどで情報が広がり、最近は毎日利用者がいるという。取材に伺った日は市外の方が主催した音楽会が行われており、市内外から多くの人が集いにぎわっていた。誰でも気軽に借りることができる場ができたことで、新たに電信通り商店街を訪れるきっかけにもなり、そこから商店街へ立ち寄る人も増えたのではないだろうか。

(左)20畳の和室(右上)洋室(右下)和室で行われていた音楽会、広い和室は、内容によって多様な使い方ができる(左)20畳の和室(右上)洋室(右下)和室で行われていた音楽会、広い和室は、内容によって多様な使い方ができる

地域課題と向き合い、多様な世代が集う地域に開かれた場づくりへ

冨山さんは、レンタルスペースの管理だけではなく、地域課題と向き合いながら、自ら企画も行っている。
2017年の6月からは月〜水曜日の日中にカフェ営業をはじめた。これまでの教室やワークショップのみとなると、限られた人しか訪れない場であった。カフェ営業をすることで誰でも気軽に入ってこれる時間を設けたのだ。カフェは曜日ごとに違う人が営業を行っているそうで、多様なニーズに対応でき、宣伝にも繋がっているという。
さらに、お一人様向けのごはん会を定期的に開催している。
「この地域は、高齢者の方や障がいを持っている方など、1人でごはんを食べている方が多いのです。みんなでごはんを食べたら楽しいっていうのが人間の基本だと思います。そういう方を呼んで、みんなで料理をしたり、振る舞ったり、地域に根付いた場を提供していきたいと思っています。」

冨山さんは、部屋を借りたいというニーズに幅広く答えているだけではなく、周辺で暮らす方々が生き生きと暮らせるようにsalon齋藤亭という場を地域に開放しているように感じる。大家であり、地域に暮らす住民でもある冨山さんだからこそできることだろう。
「長い間空き家になっていた愛着のある建物を地域に開放し、こうやって多くの方に使っていただけるようになったことは、感慨深いものがあります。建物がこれからも生き続けてくれればと思います。」

わずか7年ほどの間に20店舗が増えた電信通り商店街。商店街が生き残っていくために知恵を出し、新しいことに挑戦しながらも、地域住民に求められる環境づくりを目指してきた。電信通り商店街を中心に多様な世代が関わり、新たな繋がりが生まれているように感じる。これからも地域の担い手として、成長を続けていってほしい。

(左)改装前の縁側の様子(右上)改装後の縁側、元の窓を残しながら内側に断熱窓を設置(右下)10畳の和室、お茶会などで使われている(左)改装前の縁側の様子(右上)改装後の縁側、元の窓を残しながら内側に断熱窓を設置(右下)10畳の和室、お茶会などで使われている

2017年 12月17日 11時00分