子どもが巣立ったらリタイアすると決めていた

大阪府内で、オーナーシェフとして長年レストランを営んできた惟康さんご夫妻。若い頃から「子どもが大きくなったらリタイアして移住しよう」と決めていたそうで、6人のお子さんの手が離れた14年前に移住への行動を開始した。
「四国に行ったことがなかったので、愛媛に住む友人を訪ねつつ四国を旅行したんです。その時に惹かれたのが、古い町並みが残る香南市の赤岡。その足で役場に飛び込んだのですが、皆さんとても親切に対応してくださいました」とご夫妻。
その時はお気に入りの物件を見つけることができなかったものの、再度訪れて町を歩いている時に雰囲気のよい町屋を見つけ、賃貸で入居を決めたそう。

赤岡で10年ほど生活し、2012年に香南市夜須に引っ越し。「住むなら夜須がいいよ」と友人からアドバイスされたのだそう。高知県の職員と30件ほど物件を探し歩いたものの理想的な家が見つからず、最終的には不動産事業者の紹介で、現在のお住まいを見つけた。築12年の家をリノベーションし、一緒に住むことになったお嬢様2人と同居を楽しんでいる。

そもそも、ご夫妻が移住先に高知を選んだ理由は何だったのだろう? これには妻のさちほさんが「高知の太陽にやられました」と、明快な答えをくれた。南国特有の力強い太陽の光が、さちほさんの心を捉えて離さなかったようだ。「健康的な太陽に惹かれたほか、澄んだ空気や身近にある山や海など、自然の恵みが豊富なことにも魅力を感じました」

大阪府から移住してきた惟康さんご夫妻。「趣味の時間を大切にしていたら案外忙しくて。こんなに忙しく過ごすつもりじゃなかったのだけど」と笑う。それでも、時間に追われて仕事をしているわけではないので、ストレスはまったくないそうだ。「移住では市や県の職員の方にたいへんお世話になりました。私たちが移住してきた14年前と比べ、今なら移住のためのプログラムがもっと整備されているので、よりスムーズに移住できるのではないでしょうか」大阪府から移住してきた惟康さんご夫妻。「趣味の時間を大切にしていたら案外忙しくて。こんなに忙しく過ごすつもりじゃなかったのだけど」と笑う。それでも、時間に追われて仕事をしているわけではないので、ストレスはまったくないそうだ。「移住では市や県の職員の方にたいへんお世話になりました。私たちが移住してきた14年前と比べ、今なら移住のためのプログラムがもっと整備されているので、よりスムーズに移住できるのではないでしょうか」

「移住して来た方が新入り。地域に溶け込めるようにコミュニケーションを大切にしました」

とても立派で風情がある惟康さんのお住まい。以前は日本人とオーストリア人の夫婦が住んでいたそう。「このあたりは高知市内より冬は2度ほど暖かく、逆に夏は2度ほど涼しいんです。風が抜けるので、夏もエアコンや扇風機はほとんど使いません。とても快適な暮らしを楽しんでいます」とても立派で風情がある惟康さんのお住まい。以前は日本人とオーストリア人の夫婦が住んでいたそう。「このあたりは高知市内より冬は2度ほど暖かく、逆に夏は2度ほど涼しいんです。風が抜けるので、夏もエアコンや扇風機はほとんど使いません。とても快適な暮らしを楽しんでいます」

大阪にはまだ家があるものの(お子さんが暮らしている)、「大阪に戻りたいと思ったことは一度もありません」と話すご夫妻。「たまに所用で大阪に行っても、空気の質、時間の流れの違いを肌で感じ、『すぐに高知に帰ろう』と思ってしまうんですよ」と苦笑する。

高知県に移り住んで14年。高知の住み心地、また地域社会に溶け込むためにどのようなことを意識して暮らしていたのかを聞いてみた。
「たとえば都会なら挨拶をしないなど、人との関わりがなくても生活できるかもしれませんが、ここではそうはいきません。人とつながらないと生活できないと思います。それぞれのやり方があると思いますが、自分のやり方で地域に溶け込んでいくことが何より大切だと思います」と紘さん。

「大阪から赤岡に引っ越した時は、とにかく近隣の方に挨拶をすること、行事には必ず顔を出すことを意識しました。私達が新入りですから、とにかく町に溶け込むことを大切に考えました」。積極的に溶け込もうとする姿勢が受け入れられ、ご近所付き合いの仕方、冠婚葬祭の作法、地元のしきたりなどを、隣近所の人が丁寧に教えてくれたという。

また、住居がまばらで人も少ない現在お住まいの夜須町に引っ越してきた時は、赤岡ほどすぐに溶け込むのが難しかったそう。しかし、「毎日散歩する時に出会う人には必ず挨拶をするようにしました。最初は『誰だろう』という感じでけげんな表情をされたこともありましたが、そのうちに挨拶を返してくれて、会話をするようになりました」とさちほさん。

知らない人に対して最初はちょっと距離を置くものの、会話を交わしたり一緒にお酒を楽しんだりして親しくなると一気に距離を縮めてくる、高知人気質が垣間見えるようだ。

カフェを開くのが夢。そのための準備も着々と

高知県産の果物などを使い、無添加のジャムづくりを行っているご夫妻。趣味に忙しいご夫妻の夢、それがカフェを開くこと。
「この家の隣の土地も一緒に購入したのですが、そこに暮らしやすい小さな家を建てて、今住んでいる家を改装してカフェを開くのが夢です」とご夫妻。取材時も手づくりケーキのほかに、「たくさんいただいたのでつくった」というショウガのお菓子をふるまってくれた。ジャムやケーキづくりのほかに、月に2回は高知の食材でスモークづくりも行うそう。時には大阪から往年のファンが当時の店の味を求めて遊びに来ることもあり、「このハムや~」と喜んで味わって帰っていくそうだ。

「ニラやナス、ショウガ、時にはゆずが効いた美味しいお寿司など、色々なものを食べ切れないぐらいいただくんですよ」と、すっかり地域社会の中に溶け込み、完全に「高知県人」として生活を楽しんでいる様子のお二人。店がオープンしたあかつきには、確かな味はもちろん気さくなご夫妻との会話を楽しみに、多くのお客さんが店まで足を運んでくれることだろう。

紘さん手づくりのジャム。文旦やミカン、イチゴ、直七など地元のフルーツを使いジャムづくりを行う。いただいたケーキも</br>紘さんのお手製で、ほのかにゆずの香りがする美味なる一品。「本業ではないので」と謙遜するものの、完全にプロの出来映えだ。</br>「カフェを開くための予行演習です」と、毎日をエンジョイしている様子が伝わってきた紘さん手づくりのジャム。文旦やミカン、イチゴ、直七など地元のフルーツを使いジャムづくりを行う。いただいたケーキも
紘さんのお手製で、ほのかにゆずの香りがする美味なる一品。「本業ではないので」と謙遜するものの、完全にプロの出来映えだ。
「カフェを開くための予行演習です」と、毎日をエンジョイしている様子が伝わってきた

「医療面の心配は不要です」とご夫妻。医療に関する複数のデータで日本一の高知県

洋裁好きなさちほさんの部屋。時間を見つけては洋服をつくっているそう。昔ながらの足踏みミシンは高知に来てからいただいたもの洋裁好きなさちほさんの部屋。時間を見つけては洋服をつくっているそう。昔ながらの足踏みミシンは高知に来てからいただいたもの

高知への移住を考えている人に、ご夫妻が朗報となる情報を提供してくれた。
「夫が狭心症になり、その後精密検査をしたら動脈瘤が発見されました。医療に関することは誰しも心配することだと思いますが、心配は不要です。手術も滞りなく終了し、その後は近所のかかりつけの先生に診てもらっています。連携もいいので安心ですね」とさちほさん。

90歳を超える、高齢のさちほさんの叔母とも2年間一緒に暮らし、デイケア施設にお世話になりながら最後を看取ることができたという。「叔母はすごく幸せな老後を送れたと思います」

ちなみに、高知県の医療事情についてデータを提示すると、
●都道府県別にみた人口10万対病院病床数/2522.4床で全国1位(東京都:948.3床)
●都道府県別にみた人口10万対常勤換算医師数/246.1人で全国1位(東京都:208.5人)
【出典:厚生労働省「平成27年(2015)医療施設(動態)調査・病院報告の概況」】
●都道府県別にみた人口10万対就業看護師数/1314.4人で全国1位(東京都:727.3人)
【出典:厚生労働省大臣官房統計情報部「平成26年衛生行政報告例(就業医療関係者)」】
となり、医療面の充実ぶりが際立っている。
移住をする際、医療面が充実しているかどうかを重視する人は多いと思うが、高知県に関してはその心配は不要なようだ。

「今はこの場所しか考えられない」と高知県での暮らしに愛着を感じているご夫妻。高知の太陽、人、気候、自然、食などを存分に楽しみつつ、豊かな第二の人生を心から満喫されている。

次号では別のご夫妻の移住例を紹介する。お楽しみに。

■香南市ホームページ
http://www.city.kochi-konan.lg.jp/

2017年 01月11日 11時05分