二子玉川駅徒歩6分、築48年のマンションが甦る

現地は駅からすぐ。右側が国道246号の高架と言えば分かる人にはすぐ分かる立地だろう現地は駅からすぐ。右側が国道246号の高架と言えば分かる人にはすぐ分かる立地だろう

スケルトンにした状態で部屋を選択、そこに好み、暮らしに合わせた床材、壁の色を選んで一部は自分も参加して施工、オンリーワンの部屋を作るというプロジェクトが東急田園都市線・同大井町線二子玉川駅近くでスタートした。リノベーションなどを手掛けるNENGOの「仕立てる賃貸」である。

今回の舞台は二子玉川が今のようにショッピングセンターやタワーの並ぶ街ではなかった時代に建てられた築48年の集合住宅。全29戸のうち、いまだに何室かには40年以上住み続けているという人もいる。歴史ある建物である。

「計画自体は数年前からあったものの、当初は建替えを想定していました。募集をストップしていたので、今回の計画が始まった時点では半分は空室という状態でした」とは今回の計画に当たるNENGOの和泉直人氏。「でも、この建物を大事にしていた先代オーナーの姿が記憶にあったからでしょう、現オーナーは建替えではなく、リノベーションして使い続けるという決断をしました」。

商業施設が集積する二子玉川駅周辺で、徒歩6分の立地は希少である。実際に訪れてみると分かるが、商業施設が途切れてすぐの場所にあり、6分というほどに歩いた感覚がない近さである。入居者に出たくないという声が多かったのも当然で、その人たちには他の部屋に移動してもらい、空いた部屋から順にスケルトン化、リノベーションが始まった。

断熱性能大幅アップを図り、長く、快適に暮らせる部屋を

説明会はスケルトン状態になった部屋で行われた。壁の厚さなどがよく分かる説明会はスケルトン状態になった部屋で行われた。壁の厚さなどがよく分かる

リノベーションに当たり、大きな問題は断熱性能。「壁量が多く、耐震性能は多少の補強をすれば問題ない状態でしたが、ほとんど無断熱の状態だったため、まずはそこを改修することにしています。具体的には建物全体、部屋の内側に発泡ウレタンと呼ばれる断熱材を吹き付け、さらにサッシをガラスだけが二重になった品に交換。これで暖かく、快適な部屋になるはずです」。

リノベーションではどうしても部屋の見た目に意識がいきがちだが、最近のリノベーションではこうした建物の基本性能アップに注力する考え方が増えて来た。いくら見た目がすてきでも、暑くて寒い部屋では長く、快適に住むのは難しい。であれば、基本性能を上げ、それ以外はシンプルに、住む人が自由にできる余地を残しておくほうが良いのではないかというわけだ。

「二子玉川はご存じのように街にいろいろな施設があり、食も遊も充実しています。であれば住まいに特別な共用部は必要ないでしょうし、室内も簡素でいいのではないかと考えました。とはいえ、質にはこだわりたい。そこで、床材は無垢の4種類から選べるようにする、壁の塗料も自然素材利用のものを使うようにしています」。

選べる床材は4種類、家具や壁の色とのトータルコーディネーションを

入居希望者向けの説明会に参加してみた。駅から向かうと、建物はすぐ分かったが、なんとも殺風景。駐車している車だけに色があるように見えたが、今後、建物周辺には植栽が施される予定。地面を覆う植物の他、2~3mほどの中低木が入るそうなので、今後の変化に期待したい。

説明会は物件概要を聞いた後、選択できる床材、塗料を見学、最後に壁塗り体験をするという3部構成。使われたのはいずれもコンクリートがむき出しになったスケルトン状態の部屋。普段はなかなか見ることができない建物の素があらわになっているわけで、壁の厚さがよく分かる。古い建物と聞くとそれだけで耐震性能を疑ってしまうが、実は物件によっては今みると、安心を追求するあまり、やや厚過ぎともいえるほどの壁が作られていることがあるのだ。

床材はくっきりとした木目が特徴のナラ、落ち着いた色目がシックなウォールナット、経年で深みのある色に変化するブラックチェリー、ランダムな色味に自然を感じるメイプルの4種類から選ぶ。色味、木目だけでなく、傷つきにくい、肌に柔らかいなどの特徴もあり、どれを選ぶかはその人次第。持っている家具に合わせる、壁の色とのトータルコーディネートを考える必要もある。これについては後日、インテリアコーディネーターなどを交えた相談会があり、プロのアドバイスをもらいながら選べるようになっている。

実際に選択できる床材、壁の色などが展示された部屋。樹種が異なると床の色も全く異なる実際に選択できる床材、壁の色などが展示された部屋。樹種が異なると床の色も全く異なる

最後はペンキ塗り体験、軽く伸びる、無臭のペンキは体験の価値あり

説明会の最後でペンキ塗りに挑戦する子ども達。子どもが塗ってもきれいに仕上がる説明会の最後でペンキ塗りに挑戦する子ども達。子どもが塗ってもきれいに仕上がる

床材よりも悩む可能性が高いのは壁の色だろう。オーストラリアの水性塗料ポーターズペイントを使い、基本色は灰白、桜鼠の和の色2種類。そこに差し色として用意された、これまた和名の6色を組み合わせられるのだが、いずれも白、ベージュ、青などと簡単には言えない、複雑な色なのである。基本色となる灰白は名前の通り、白ではあるのだが、真っ白ではなく、灰色に黄色を少し混ぜたような色だし、桜鼠はその名の桜色、鼠色とは全く異なる、ピンクや青も感じる、強いていえばベージュっぽい色。さらに、最初に渡された印刷物で見た色と実際にある程度の広さに塗られた色は全く異なって見える。「塗料は小さなサンプルほど濃く見えますし、同じ色で塗っても照明によって見え方が違うことも。特に海外の塗料は陰影があり、面白いですよ」。これはプロのアドバイスがないとなかなか決められそうにない。

床材、壁の色を見た後は実際にポーターズペイントを使った壁塗りを体験する。私は以前にも塗らせてもらったことがあるのだが、驚くのはその伸びの良さ。子どもの頃に工作の授業で使ったペンキとは異なり、軽く、垂れず、伸びる。一度塗料を付けて塗った後、さらにまだ後2度、3度と塗れるのである。それに臭いがないのも不思議な感じ。DIYをやってみたい人なら、まず、ペンキ塗りをしてみると、その簡単さに「自分でもできる感」を抱けるのではないかと思う。

さて、実際の住戸だが、中心は30.24m2の元々2Kだった部屋をワンルーム風にしたもの。階数、部屋の位置で多少異なるが、賃料は10万円前後になる。1階には51.03m2、68.04m2と広めの部屋も1室ずつ。スケジュールとしては説明会、仕立てる内容の検討を経てから申し込みをし、審査、契約と進んだところで仕立て内容を決定、1~2月に施工を行い、2~3月にはセルフペイント。入居は3月の予定という。今後、申込み時期が遅くなると、選択肢が狭まる可能性もある。気になるなら、早めに問い合わせてみることだろう。

仕立てる賃貸 NENGO
http://shitateru.nengo.jp/

2016年 01月16日 11時00分