一生で15万回前後も利用するトイレ

私たちの生活のなかでトイレは絶対になくてはならないものだ。1日5回使うとすれば、1年で1,825回、一生で15万回前後も利用する。
単純に用を足すためだけの空間ではない。考え事をする、本を読む、携帯・スマホでメールをするといった独りの時間を確保するためにトイレに行く人は多いはずだ。さらに女性ならば化粧直しをはじめ、バッグの中身の整理、友人とのコミュニケーションの場としても活用されている。つまり女性にとってトイレは、日常生活を快適に過ごすための調整空間でもあるわけだ。それにも関わらず、従来トイレは男性目線で設計されてきたといえるだろう。
このような背景から「内閣官房すべての女性が輝く社会づくり推進室」では、「日本トイレ大賞」を創設した。これまであまり考えられることのなかったトイレに光を当て、社会基盤整備の機運を盛り上げようとしている。

すべての女性が安全で快適な生活をおくるためのトイレとは

多機能トイレの例。多機能トイレとは、車いすでも利用しやすい広めのスペースや手すり、乳幼児のおむつ交換台などを備えたトイレ(資料提供:内閣官房すべての女性が輝く社会づくり推進室)多機能トイレの例。多機能トイレとは、車いすでも利用しやすい広めのスペースや手すり、乳幼児のおむつ交換台などを備えたトイレ(資料提供:内閣官房すべての女性が輝く社会づくり推進室)

同推進室は、安倍内閣のもとですべての女性が、その生き方に自信と誇りを持ち、活躍できる社会づくりを目指している。その活動の中で、すべての女性が安全で快適な生活をおくるためのトイレの重要性に着目。日本トイレ大賞は、トイレの空間やトイレに関する活動の好事例を世の中に紹介すべく、特に優れた事例を募集し、表彰する(応募期間は2015年7月20日まで)。

応募対象は「空間部門」と「活動部門」の2部門。
それぞれ以下の施設などを対象としている。

●空間部門
【一般施設】
① 商業・集客施設(店舗、飲食店、劇場、ホテル等)
② オフィス等
【公共・公益施設】
③ 交通・旅客施設(駅、空港、SA・PA、道の駅等)
④ 公衆トイレ
⑤ 学校・文教施設その他

●活動部門
① 途上国支援・国際貢献(途上国におけるトイレ設置等)
② 災害対応・環境配慮(避難所の災害用トイレの改善、開発等)
③ まちづくり・観光支援(トイレマップの整備、トイレ認証制度等)
④ その他(食と排泄に関する教育、普及・啓発の取組等)
原則、上記マル付き数字の施設類型、活動類型ごとに表彰することを予定している。

公衆トイレ利用者のうち女性の割合はわずか3%

空間部門の対象となるのは商業施設、オフィス、交通機関や道の駅等のトイレの所有・管理者、公衆トイレを所有・管理している自治体、学校など(個人の住宅は不可)。これらは現在さまざまな問題を抱えている。東京都千代田区が行った調査によると、同区内の公衆トイレの全利用者のうち女性の利用率は3%だった。ようするに公衆トイレを利用した100人のうち、女性は3人しかいなかったのだ。
この低い割合の主な理由としては、汚い、防犯性に不安といった意見が多いそうだ。さらに公衆トイレには、まだまだ和式のものが多く、足腰の弱い高齢者では使いにくいということもある。

また学校のトイレでは、汚いというイメージと同時に、暗くて閉鎖的な空間であることから、いじめの温床となる傾向がある。そのため学校ではトイレに行かない子どもが増えているそうだ。

このようなことから空間部門の審査は、以下のことなどが基準とされている。

●清潔さ
床、便器等の清潔さや臭気やゴミへの配慮など。

●安全・安心
老若男女問わず使いやすいユニバーサルデザイン、明るさ、落書き、破損といった防犯対応など。

●快適性
子どもの世話や介助のしやすさ、休息や身繕い、化粧など女性への配慮など。

女性目線のトイレは、デザイン性が優れているだけでなく、小物入れの設置や化粧がしやすい照明など機能性にも工夫がある。写真はイメージ(資料提供:内閣官房すべての女性が輝く社会づくり推進室)女性目線のトイレは、デザイン性が優れているだけでなく、小物入れの設置や化粧がしやすい照明など機能性にも工夫がある。写真はイメージ(資料提供:内閣官房すべての女性が輝く社会づくり推進室)

災害時にトイレに行かなくなる女性も

また、活動部門で募集しているトイレに関する途上国支援や災害対応などの分野も、多くの課題がある。
途上国のなかには、トイレそのものが無い国もたくさんある。これは衛生上よくないだけでなく、女性でも野外で用を足すため、性的暴力の温床ともなっている。そのため怖くて学校に行けない女生徒も多いそうだ。

また、トイレ設備が不足するという事態は日本でもありうる。そのひとつが災害時だ。東日本大震災では、避難所を中心にこうした問題が起こった。その結果、利用する人数に対してトイレが圧倒的に不足し、汚物があふれてしまったのだ。
このような不潔な状態での利用を拒んだ女性や高齢者のなかには、トイレに行きたくないがゆえに飲食をしなくなり、脱水症状など起こした人もいたそうだ。

活動部門では、上記のような課題を解決する事例を募集する。審査基準には、以下のようなものがある。

●地域や社会生活等の課題解決への寄与
途上国や地域の街づくり、災害時対応、環境保全などの課題に適切に対応する活動かどうかなど。

●新規性・独創性・将来性
活動内容や方法、成果に独自性があるかどうかなど。

●継続性・持続可能性
トイレの整備や維持管理等が効率的に行われているか。費用対効果や工夫、地域コミュニティの参加や他団体等との連携など。

対象団体には個人やNPO、地域での活動団体などが考えられるが、ほかにも汚物を肥料に変えるバイオトイレや携帯トイレを開発しているメーカーなど幅広く募集している。

結果は今年9月に大臣臨席のもとで表彰式を開催するとともに、官邸ホームページ及び内閣官房ホームページにおいて公表する予定だ。

今回は募集対象として住宅は含まれていないが、表彰される事例は、さまざまなトイレが抱える問題を解決するヒントになるはず。一般的な戸建住宅の快適なトイレづくりの参考にもなるだろう。

取材協力:内閣官房すべての女性が輝く社会づくり推進室
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kurashinoshitsu/hyosho/index.html

携帯トイレ。災害時に仮設トイレへ行きにくい女性のために家庭に常備しておきたい(資料提供:内閣官房すべての女性が輝く社会づくり推進室)携帯トイレ。災害時に仮設トイレへ行きにくい女性のために家庭に常備しておきたい(資料提供:内閣官房すべての女性が輝く社会づくり推進室)

2015年 07月28日 11時09分