LEDと従来光源で、電球の消費電力と価格を比較
LED照明と聞くと今年はノーベル賞受賞で今までよりも多く耳にするが、実際私たちが日ごろ使っていても、本当のところよく分かっていないことも多いと思う。今回、知っているようで知らないLED照明のあれこれを、連載を通してお伝えしたい。第2回目は、LEDと白熱灯などを比べて、電球自体の値段と電気代を実際に算出してLEDは本当に省エネなのかを検討する。
現在のLED電球を使う場合、実際に節電効果と購入費の費用対効果はどうか。従来使っていた電球をLEDタイプに交換して従来と同じ明るさを求める場合の、各光源の消費電力と価格を比較してみる。
比較するのは、住宅で使われることが多いタイプのLED電球と白熱電球、電球形蛍光灯の3種類。全光束が同じ電球の製品単体の比較とする。大手メーカーが生産を中止した白熱灯の一般照明用電球は60W形相当を中心に、同じタイプの100W形相当と現在も生産が続いている小形一般照明用電球(クリプトン電球)の40W形相当を、LED電球と電球形蛍光灯と比較する。
LED電球VS.白熱電球(一般照明用電球60W形相当)
「LED電球」…消費電力は10W。価格は1280〜1880円程度の製品の最安値で試算する。
「白熱電球」…消費電力は54W。価格は170円程度。
LED電球は白熱電球に比べて、消費電力は約18.5%に抑えられ、価格は安価な場合と比べて7.5倍程度。
LED電球VS.電球形蛍光灯(一般照明用電球60W形相当)
「LED電球」…消費電力は10W。価格は1280〜1880円程度の製品の最安値で試算する。
「電球形蛍光灯」…消費電力は12W。価格はで800〜1800円程度の製品の最安値で試算する。
電球形蛍光灯をLED電球に置き換えると消費電力は約83%になり、価格はLED電球の1.5倍ほどになる。ただし、電球形蛍光灯には消費電力がLED電球と同等の製品や価格が半額以下の製品も多く、製品の幅が広い。
電気代の計算から見てみる
では、実際に60W形相当の白熱電球1灯をLED電球や電球形蛍光灯に変えた場合の節電効果を見るため、電気代を計算してみる。1〜2人暮らしの賃貸マンションの小規模な部屋を想定する。
(1kWhを19円43銭で計算。季節によって使用量が大きく変わる空調の影響や部屋数によっては、120kWhをこえ300kWhまでに適用される1kWh を25円91銭になる可能性が高い。)
LED電球10W VS.白熱電球(一般照明用電球)54W ※1日に5時間点灯する場合
東京電力の従量電灯B(第1段階料金)の場合。1kWhあたり19円43銭(使用量が120kWhまでに適用)で計算。
<1日あたり5時間 × 1カ月(30日) 点灯の場合>
LED電球と白熱電球(一般照明用電球)の消費電力の差 = 54W-10W = 44W
44W×5時間×30日 = 6.6kWh
6.6kWh×19円43銭 = 128円23.8銭
→電気代は、LED電球を使う場合、白熱電球に比べて、月(30日)に約128円安くなる。
年間(365日)では約1560円、LED電球の方が安くなる。
LED電球10W VS.電球形蛍光灯12W ※1日に5時間点灯する場合
東京電力の従量電灯B(第1段階料金)の場合。1kWhあたり19円43銭(使用量が120kWhまでに適用)で計算。
<1日あたり5時間 × 1カ月(30日) 点灯の場合>
LED電球と電球形蛍光灯の消費電力の差 = 12W-10W = 2W
2W×5時間×30日 = 0.3kWh
0.3kWh×19円43銭 = 5円82.9銭
→電気代は、LED電球を使う場合、電球形蛍光灯に比べて、月(30日)に約5.8円安くなる。
年間(365日)では約71円、LED電球の方が安くなる。
一般照明用電球100W形相当(口金E26タイプ、1520ルーメン)を比較する場合、同等の明るさのLED電球は現在販売されている製品の中で光の広がりが広い200度程度の製品を使うと、消費電力は14.3Wで、購入費は安価な場合で3509円程度。白熱電球の100W形は90Wで200円程度。消費電力は約15.8%に抑えられ、価格は安価な場合と比べて17.5倍まで開いている。電球形蛍光灯の場合は、消費電力が20Wで、価格は1380円程度。消費電力はLED電球が電球形蛍光灯の約71.5%で、価格は安価な場合と比べても2.5倍まで開いている。
小形一般形照明電球(クリプトン電球)40W形相当(口金E17タイプ)を比較する場合は、同等の明るさのLED電球が5.8W。価格は白熱電球が231円で、LED電球は安価な場合で1682円程度。消費電力は約16.1%に抑えられ、価格は安価なケースと比べて7.3倍程度。口金のサイズが同じE17の電球形蛍光灯の場合、7Wなどの製品が販売されていて、価格は安価な場合で800円程度。消費電力はLEDが蛍光灯の約82.8%で、価格は安価な場合と比べて2倍まで開いている。だが、電球型蛍光灯の場合は電球のサイズがクリプトン電球より大きくなり、ダウンライトのような照明器具には同じように使えない場合が多い。LED電球も照明器具によって取り付けられない場合があるが、電球形蛍光灯よりもかなり小さく、白熱灯のクリプトン電球に近い形になっている。
白熱電球の照明からLED電球と電球形蛍光灯に交換した場合、どのくらいの期間で元のランニングコストより安くなるか、イニシャルコストも含めた計算をしてみた。
LED電球10W VS.白熱電球(一般照明用電球)54W
・消費電力の差:44W、1日に5時間点灯する場合
1時間当たりの電気料金差額:19.43円×0.044kWh=0.85492円
1日当たりの電気料金差額:0.85492円×5時間=4.2746円
・購入費の差(白熱電球はランプ交換1回。定格寿命を1000時間と想定)
LED電球-電球形蛍光灯=1280円-(170円×2個)=940円
940円÷4.2746円=219.9036167日
→220日で購入費を回収できる。
(220日×5時間=1100時間 > 定格寿命1000時間)
LED電球10W VS.電球形蛍光灯12W
・消費電力の差:2W、1日に5時間点灯する場合
1時間当たりの電気料金差額:0.002kWh×19.43円=0.03886円
1日当たりの電気料金差額:0.03886円×5時間=0.1943円
・購入費の差(電球形蛍光灯はランプ交換1回。定格寿命を8000時間と想定)
1280円-(800円×2個)=-320円
→購入費のみで電球形蛍光灯がLED電球を上回ってしまうため、電気代の差額で購入費を回収することができない。
ただし、電球形蛍光灯の寿命が13000時間のタイプを使用する場合はランプ交換が必要ないため、
・購入費の差:1280円-800円=480円
480円÷0.1943円=2470.406588日
2470.406588日÷365=6.768237227年
→約6年半(2471日)で購入費を回収できる。
(2471日×5時間=1万2355時間 > 定格寿命8000時間)
さらに電球形蛍光灯は、消費電力が60W形相当のLED電球と同じ10Wの製品や価格が300〜500円台などの製品を使うと、電球形蛍光灯の方が費用対効果が高くなる。
購入した電球を何年使うかがポイント
これらの年間の電気代から費用対効果を比較することはできるが、購入した電球を何年使うかがポイントになる。4万時間という長寿命のLED電球は、どのくらいの期間で定格寿命まで使い切れるのだろうか。
LED電球と白熱灯の一般照明用電球を比べると、年間で1500円以上の電気代の差が出て購入費が上回る可能性が高い。だが、既存の照明器具に小型の電球を使う場合や、光の広がりが変えられない場合などは白熱灯を使い続けなければならないこともある。さらに蛍光灯をLEDに替える場合は電気代に大きな差が出ず費用対効果が小さいケースもあるため、既存の照明器具を活用する場合は蛍光灯を選ぶこともあるだろう。
LED電球と電球形蛍光灯の選択に迷う場合は、交換までのランプの定格寿命もポイントになる。ここで注意したいのは、照明器具は10年が交換の目安になるということだ。照明器具の耐用年数は「適正交換時期」が8~10年、「耐用の限度」が15年と定められている。照明器具の部品が劣化する可能性があるため、10年を超える器具は点検や交換をするように日本照明工業会やメーカーも注意を促している。適正交換時期は年間3000時間(1日に10時間)、10年で3万時間点灯することを想定した目安だが、使用頻度が低い場合も部品の経年劣化を考慮して、一般的な照明器具の寿命は10年と考えられている。
一方でLED電球を定格寿命の4万時間まで使い切るためには、1日に5時間点灯する場合は21.9年かかり、照明器具の適正交換時期までの10年間で使い切る場合は1日に10.9時間以上かかる。ただし、定格寿命を迎えた電球が突然不点灯になるとは限らないため、定格寿命が近づいた時に徐々に暗くなっていたことに気づいて交換するかどうかは住まい手に任されることになる。
既存の照明器具を数年使ってからLED電球を取り付けた場合は、器具の適正交換時期まで数年しかない場合もある。照明器具を交換しても器具交換前に使っていたLED電球を使い続けるかどうかを検討することも必要だ。
最近まで電球形蛍光灯の方がLED電球よりも購入費が安く省エネ効率も高いため費用対効果は高かった。器具交換や数年での引っ越しを想定すると、電球形蛍光灯の6000〜13000時間という定格寿命も住宅での利用においてはさほど問題にならなかった。だが、LED電球の価格は下がり続けており購入費の差が縮まりつつある。さらに環境への配慮から水銀を使って作られる蛍光灯の使用を控えようと考える住まい手が増えれば、LED電球は普及する一方だろう。
電球を替えるだけでなく、費用を抑えて節電を両立するには、照明器具にLEDユニットを組み込んだLED照明器具の利用や調光制御、照明器具の特徴に合わせた具体的な使い方も重要になる。次回はこの使い方を考えてみたい。
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