中古住宅の課題は、まだまだ整備途中

もともとは3DKだった間取り。間仕切りを取り払い、つながりのあるひとつの空間にしたリノベーション事例もともとは3DKだった間取り。間仕切りを取り払い、つながりのあるひとつの空間にしたリノベーション事例

HOME'S PRESSの記事に複数のオピニオンリーダーが触れているように、中古住宅の課題はまだまだ整備途中と言えそうだ。
2013年6月の国土交通省の「中古住宅の流通促進・活用に関する研究会報告書」に記された3つの提言を見るとようやく具体的にそれぞれの市場プレイヤーが動く指標が整いつつある、ということのようである。

■中古住宅の流通促進・活用に関する研究会報告書より 提言■
1.中古住宅の適切な建物評価を目指した評価手法の抜本的改善
2.市場プレイヤーの行動に働きかけ、中古住宅流通市場を改善する
3.住宅金融市場へのアプローチ

※詳しくは、「中古住宅の流通促進・活用に関する研究会」資料
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk1_000009.html

日本は住宅金融市場も含め、新築へのサポートが手厚く、中古住宅についての整備は、業界も行政も金融市場も含めて遅れているのが実情のようである。そうはいっても、新築もいつまでも新築であるはずがなく、すぐに既存住宅に分類される。
そもそも、住宅をもっていて、手をかけて修繕や改装をしていても築年が20年を過ぎるとほぼ建物の価値がゼロに近くなるというのは納得がいかない。建物のピークの資産価値は買う前のピカピカの時であり、そのあとは急激に資産価値を落とし続け、ゼロに近づいていく、というのが日本の住宅だ。

また、リフォーム市場は規模によっては参入壁が低くく(工事価格によっては、資格や認定がなくても取り組める)など品質・保証・責任が不明確であり、以前は「悪徳リフォーム業者」という問題も聞こえてきたことがあるのも事実である。

私たち消費者が、新築以外の選択肢を拡げるためにも安心して選べる基準はないのだろうか?
一般社会法人リノベーション住宅推進協議会に取材をしてみた。

リフォームとリノベーション、さらに優良なリノベーションはどう違うのか

そもそも近年良く聞く、「リノベーション」という言葉。
今まで使われていた「リフォーム」とどう違うのだろうか?
・リノベーション=新築時の目論見とは違う次元に改修する(改修)
・リフォーム=新築時の目論見に近づく様に復元する(修繕)
と緩やかに認識されているようだが、公的に明確な定義はなく、「かっこいいからリノベーションと言おう」という会社もあるようだ。

リノベーション住宅推進協議会では、あいまいなまま使われている現状に対して、安心して選べるリノベーション住宅の品質基準を設定し、優良なリノベーション住宅の普及に努めている。協議会が考える「優良なリノベーション」とは、「検査→工事→報告→保証+住宅履歴情報」のフローに則り、住宅タイプ別に設けられた基準を満たす住宅で、「適合リノベーション住宅」と呼んでいる。

この「適合リノベーション住宅」は、見た目の良し悪しではなく、不具合があると生活に支障をきたすインフラ部分を中心に、検査に基づく工事を行いその情報を見える化、万が一の際の保証がつき、売却や今後のメンテナンスにも役立つ住宅履歴情報を備える。

適合リノベーション住宅は、住宅タイプ別にR1住宅~R5住宅まで基準が設けられている。

リフォームとリノベーション、さらに優良なリノベーションはどう違うのか

住み続けるための基本スペックをしっかり備えていることを保証

リノベーション住宅推進協議会の武部さん。個人的にも古い建築物に興味があるのだそうリノベーション住宅推進協議会の武部さん。個人的にも古い建築物に興味があるのだそう

例えばR1基準の規定について言えば、

1)給水配管 2)給湯配管 3)排水配管 4)ガス配管 5)電気配線 6)通信配線 7)分電盤 8)喚起設備 9)住宅用火災警報器 10)床下地組 11)壁下地 12)天井下地 13)浴室防水 

など生活に必要な重要インフラを検査し、必要な部分には工事を施し、既存流用箇所についても保証する、という規定となっている。場当たり対処的に手を入れるのではなく、住宅が住み続けるための基本スペックをしっかり備えていくための基準だ。

「この基準をもとに協議会では、リノベーション住宅の品質確保と消費者への安心のご提供をしていきたいと考えております。」と協議会の武部さんは語る。「中古住宅を選ぶにあたっての不安を取り除くことはもちろん、今年で4回目となるリノベーションエキスポなどを通じて、リノベーションに役立つ情報発信を行ったり、専用の住宅ローンの開発なども検討していきたいと考えています。」という。

「古い住宅は価値がない」というのではなく、「住まいを大切に引き継ぎながら、豊かに暮らす」ことに向けて法整備だけに頼るのではなく、業界の自主的な取組みも拡がりはじめている。

契約はいつでも双方責任である。我々も、そういった努力をしている誠実な会社をリノベーションのパートナーに選んでいく見る目を養うことが大切のようだ。

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