「返済比率35%でも、貸してもらえるんだから返せるはず」は大きな勘違い

初の著書「お金が貯まるのは、どっち!?」(アスコム刊)が好調な菅井敏之さん。写真は経営する田園調布のカフェ「SUGER COFFE」にて
初の著書「お金が貯まるのは、どっち!?」(アスコム刊)が好調な菅井敏之さん。写真は経営する田園調布のカフェ「SUGER COFFE」にて

年収が400万円以上あれば多くの銀行は返済比率35%まで貸してくれる。だが、そもそも、それが間違いと元メガバンク支店長で、現在は不動産投資家として講演やセミナー、テレビ出演などに活躍する菅井敏之さんは断言する。今回は菅井さんに住宅ローンのことについてあれこれ取材してみた。

「健全に家計を切り盛りしていくためには住宅、保険、教育、車の4大固定費は収入の半分に収めるのが基本ですが、住宅ローンだけに35%も使ってしまうと、その他の固定費に充てられるのは収入の15%だけ。それではやっていけません」。

企業が内部留保でお金を溜め込み、借入に慎重になっている今、確実にローンを返してくれる住宅購入者は銀行にとってありがたい存在。だから、返済比率さえクリアできればどんどん貸してくれる。中でも大企業勤務など、いわゆる属性の良い人は銀行にとっておいしいお客さんだ。

「破綻のリスクがもっとも高いのは有名大学卒、大手企業勤務で年収900~1000万円くらいの人たち。世の中一般の平均年収から考えると高給に思えますが、税金その他を考えるとそれほどの差はない。でも、自分たちは特別だ、エリートだと思ってしまい、『あなたにだけは特別にこの価格で』などと言われてその気になってしまう。不動産業界には非公開の情報も多いので、本当に特別かどうかは分からない。だから、余計その気になりやすいんでしょう。逆に年収400~500万円の層はそうした選民意識がなく、堅実。見栄に無駄なお金を使わないので、収入は少なくても破綻の可能性は低い」。

ブランド力のある、住宅価格の高いエリアに家を買うと、それに応じた高級車に乗りたくなるし、周囲に合わせて子どもを私立に進学させるケースも多い。「破綻する人たちは生活のサイズが普通の人たちより大きくなってしまい、それを縮小させることができない。年収が1000万円あれば限度額300万円のカードローンなんて簡単に作れますから、それで毎月の赤字を補填、ボーナスでそうしたマイナスを穴埋めする生活が始まるのです」。

返せる額、最悪の事態を想定、物件を選ぶ

どんな物件を、いくらの頭金で買うかは後日の支払いの楽さを左右する。よく考えて決断をどんな物件を、いくらの頭金で買うかは後日の支払いの楽さを左右する。よく考えて決断を

そうならないために大事なことは「貸してもらえる額、借りられる額がイコール返せる額ではないことを認識、自分たちがいくらまでなら払えるかを冷静に考えること。また、返せなくなった場合に備えた物件選びをすることです。今の社会ではこれまで思ってもいなかったことが起こります。私自身、銀行に就職して二度も合併を経験するなんて思ってもみませんでした。大企業だから安心はありえません」。

どんな会社にもリスクはある。そう考えると最悪の事態になっても買った値段で売れるか、貸してローンが払えるかは必ず考えておくべき点だ。ただ、実際問題として考えると、新築物件では買った価格で売れる、貸してローンが払えるはほぼあり得ない。新築価格には新築という価値が上乗せされるため、実勢価格よりも高く設定されるからである。一方でファミリータイプの家賃は広さに応じて高くしていくと借り手がいなくなるため、広くなったからといってもそれほど高くはできない。そこで貸しても返済額が賄えないという自体が発生するのである。もちろん、シングル向けの物件も状況としては似ているが、比較的3.3m2単価が高いため、傷は浅くて済むことが多い。

「新築は買った途端に2割は下がる。5000万円で買ったものが4000万円になってしまうわけで、いきなり債務超過になり、最初から含み損を抱えてしまう。スタートの時点から不利なのです」。

そうならないためには、購入額が売却額にできるだけ近い中古物件を選ぶか、下がるだろうと思われる額は頭金で用意、借入額は実勢価格までに留めるか。住宅は損得だけで割り切れるものではなく、どうしてもここに住みたいと思ってしまうケースもある。その時にはリスクを軽減する手を考えた上で選択しよう。

返済比率は25%以内、物件価格は賃料の200倍が目安

我が家の購入では利回りという発想で価格を考える人は少ないが、いざという時のことを考えると検証しておくべきだろう我が家の購入では利回りという発想で価格を考える人は少ないが、いざという時のことを考えると検証しておくべきだろう

具体的な数字を見ていこう。返済比率は35%ではなく、25%以内に抑え、前述の4大固定費を50%までにする努力をしよう。住宅購入後に教育費がかかるようになることもあるだろうし、リタイア後の長い老後に備えて資金を貯めておく必要もある。

物件価格は賃料の200倍が目安と菅井さん。「これは投資利回りで見た場合に5~6%。現状首都圏では投資に見合うと言われている数字です。計算式は年間の家賃収入÷物件価格=0.06となります」。

具体的に例を挙げて説明しよう。自分が購入しようとしている地域では、自分が買おうとしている物件が10万円で借りられるとする。すると、そこで買って貸したとすると家賃は年間に10万円×12カ月、つまり120万円の家賃収入が上がる計算になる。この金額が0.06になるように物件価格を考えると、120万円÷物件価格=0.06ということになり、逆算してみると物件価格は2000万円となる。もし、家賃が20万円取れるところであれば物件価格は4000万円、30万円なら6000万円となるが、残念ながら現在、首都圏で20万円以上の家賃が取れる場所は非常に限定される。

ただ、住宅価格が上昇傾向にある今、首都圏で10万円の家賃が取れ、2000万円で買える物件はいくら中古でもそれほど多くはない。西高東低と言われる首都圏の住宅相場で考えると、いわゆる西側エリアではまずありえず、あるとしたら東側エリア。このエリア内には都心に近いにも関わらず、物件価格は安め、賃料はそこそこ取れるという場所がまだ存在する。こまめに探してみることだ。

妻の収入、ボーナスはあてにしない。家計運営法を見直すことも必要

お金の話をすることは家族のこれからの話をすることでもある。協力して知恵を出していきたいお金の話をすることは家族のこれからの話をすることでもある。協力して知恵を出していきたい

共働きの場合には妻の収入をあてにしないこと。出産、子育てでキャリアを中断せざるを得ない可能性があり、その場合には返済が難しくなる。特に総合職で正社員という場合には、一度離職すると再就職しても給料が大きく下がるケースが多い。であれば、最初から算入しない、安全な資金計画を立てたいところだ。逆に手に職系の仕事をしている人なら、離職後の再就職もしやすいそうだ。同様にボーナスもあてにしないようにしたい。

また、これから買おうとしている人なら家計の運営方法を見直すのも有効。「一番、家計全体が見えず、危ないのは、夫が妻に生活費を渡し、それでやってくれというやり方。妻は夫が貯金してくれているだろうと思っているかもしれませんが、大体の夫は貯めてなどいません。全部使ってしまい、何も残っていない、そういうケースが多いですね」。

最近では夫婦で働き、会計は別という家庭も多い。「この場合、支出項目ごとに負担を決める、一定額を出し合ってそこから共通の経費を支出するなど、支出に関してはルールを決めていることが多いようですが、貯金に関しては互いに知らん顔というケースが一般的。稼いだ分をそれぞれが使うのは良しとしても、互いに収入の2割は貯蓄、年に1度は達成できているか確認するようにしたいところですね」。

夫は稼ぐ人、妻は管理する人というやり方で、夫は家計に関心無しというやり方も良くないと菅井さん。「毎日の管理、記帳などは妻がやるとしても家計全体は夫婦で把握しておくべき。夫としては面倒なことは妻に任せた、自分は稼いでくるからと思っているかもしれませんが、今の時代は大企業でも働けば稼げるというわけにはいきません。限られた給料をどう使うか。知恵が必要なのです」。

世の中にはオリンピックに向けて景気の良い話も出始めてはいるが、それが自分の給料として実感できる人はまだまだ少ないはず。そんな時代に家を買うのであれば、慎重さは必要だ。

2014年 07月19日 11時34分