日本の自然災害の頻発化・激甚化と仮設住宅の環境の課題
2023年の夏、猛烈な暑さが続いた。東京都において、この8月はすべての日で30℃以上と観測史上初の31日連続真夏日となった。さらには各地でゲリラ豪雨や台風などによる自然災害が発生。自然災害の不安では、首都直下地震や南海トラフ地震も危惧される。
今年は関東大震災から100年を迎える。この節目にミサワホーム株式会社は、居住環境を備えたトレーラーハウス「ミサワユニットモビリティ『MOVE CORE』」(以下、ムーブコア)を2023年9月1日より全国で発売すると発表した。
ミサワホームは過去に阪神淡路大震災・東日本大震災でも応急仮設住宅の供給実績がある。応急仮設住宅に入るまでには、一時的に避難所等に仮住まいをすることになるが、避難所ではプライバシーや衛生面が保たれにくい。妊婦、子ども、高齢者等から、不安があり安全・安心に眠れない、暑い寒いなどの声を聞いていた。他にも応急仮設住宅が供給されるまで親戚の家に一時的に入らなくてはならないなど、被害者が心身ともに疲弊してしまうという大きな課題を感じていた。
単なる一時しのぎではない住宅品質の応急仮設を少しでも早く届けることが必要不可欠だと感じ、ミサワホームはムーブコアの開発へと至った。
「いつも」と「もしも」の両面で社会課題の解決を目指す
ムーブコアの開発についてミサワホーム技術部の秋元氏は「空間のモビリティ化という新たな領域に対してハウスメーカーならではの提案と長年培ってきた技術・リソースを生かし『いつも』と『もしも』の両面で活用できるフェーズフリーな商品を開発した」と話す。
「いつも」は宿泊施設やカフェ、ワーケーション施設など多様なニーズに応える施設として使用し、「もしも」の際は速やかに応急仮設住宅などに転用されることで良質な住まいとして被災後の暮らしを支えるものとしている。「もしも」に備え、自然発電するための薄型軽量の太陽光発電システムや発電した電気を有効活用する蓄電池、電気自動車から電気の供給を受ける「クルマde給電」を設置した。使用した水のほとんどを再利用できる水循環利用システムや山間部や災害時でも通信可能な衛星通信の設置も可能である。
将来的には、自立循環システムを利用したインフラフリーを目指し、移動・可変・オフグリッドの3つの技術で、日常の「いつも」と緊急時の「もしも」に柔軟に対応する。
住宅同等の居住性能を満たしたトレーラーハウス
トレーラーハウスと聞くと簡易的な住宅を思い浮かべる人もいるかもしれない。
ミサワホーム技術部の秋元氏は、ムーブコアの特徴について「一戸建て住宅と同等の構造で優れた居住環境を備えているのが最大の特徴」と話す。通常の住宅と同じ材料・工場・ラインを利用して同じように組み立てることで品質の安定と住宅同等の居住性能を満たしている。
断熱性能の指標であるUA値は0.59と関東以南の地域でのZEH基準を上回る断熱性で、遮音性や耐久性・メンテナンス性にも優れる。⽊質パネルの製造から内装仕上げまでのすべてを⼯場で⽣産する “工業化”にも注力し、常に同じ品質での供給を行う。ミサワホームは木造・木質化でカーボンニュートラルへの貢献を目指している。ムーブコアでも⽊質パネルで製造するだけでなく、環境に配慮し、将来的には回収・リサイクルまでを行う構想だ。
住宅からトレーラーハウスに造るものが変わったとしても、居住性・品質や環境配慮に妥協しないという意志を感じた。
居住環境を充実させるハウスメーカーならではの細やかな心づかい
実際に展示されているムーブコアを見せてもらった。
先に、宿泊施設を想定した「いつも」に入ってみると、そこには木目調の内装と畳の小上がりなどがあり落ち着いた空間が広がっている。
出入口を兼ねたサッシを閉じてみると外の音はほとんど聞こえない。断熱・気密性能に長けた樹脂サッシが使用されており、居住環境へのこだわりを感じた。ミサワホームの住宅「蔵のある家」を想起させる大容量な収納スペースが就寝スペースの下に設けられている。
一方、応急仮設住宅を想定した「もしも」では、可変性に考慮し、張り替えが容易な床材を使用。正方形のユニットを組み合わせたソファやテーブル・ベッドなど、多様な用途で利用できる収納家具により、最小限のスペースで充実した機能を備えている。広さを調整できる可動式ベッドなど可変性に優れたオリジナル家具は、居住性にこだわるハウスメーカーとしての居住者への配慮を感じた。収納用の棚板側面には溝が彫られており、ハンガーやS字フックをかけることができる。こういった細かい部分にも長く住宅に携わる同社の心づかいがあった。
移動可能な車両であるトレーラーハウスを開発するにあたり、必要だったのが重量制限への対応だったという。天井材を軽い素材にし、複数の機能を備える家具を採用するなど、重量を軽減し、かつ無駄がない設計もムーブコアの特徴といえる。
ムーブコアの今後の展開について
現状はグランピングなどの宿泊施設利用としての引き合いが多いが、今後はそれ以外にオープンカフェ、スポーツ施設やシェアオフィス、更には発熱外来等の医療用途も含めあらゆる場面での活用を想定しているとのこと。
工業化で養ってきた技術を反映し、持続可能な社会の実現に寄与していきたい方針だが、販売ルートとしてはこれまで限定的な実績にとどまっていた地方自治体や法人のニーズを見込む。
居住環境を備えたトレーラーハウスの普及により、「いつも」の多様性を生み、「もしも」の際も安心・安全に生活することが可能になるかもしれない。自然災害が増加している日本では、日常から「非常時の際にいかに快適に生活できるか」までを考え、備えておくことが大切だと感じた。
■取材協力/ミサワホーム
http://www.misawa.co.jp/
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