次世代邸宅モデル「RATIUS | GR」を見学してきた
「モダニズム建築」と聞いて、どのような建築物を思い浮かべるだろうか。有名なのは、ル・コルビュジエのサヴォア邸(1931年)、ヴァルター・グロピウスのバウハウス校舎(1926年)、日本では、前川國男の東京文化会館(1961年)、丹下健三の広島平和記念資料館(1955年)などが挙げられる。モダニズム建築とは、合理的・機能的な価値を重視し、直線や平面で構成された建築様式のことを指す。おもに鉄とガラス、コンクリートなどの素材が用いられ、装飾が極めて少ないシンプルな佇まいは、普遍的なデザインとして時代を問わず世界各地で受け入れられてきた。サヴォア邸は今から約90年前に建てられた建物であるが、今もなお現代的な美しさを感じる人は多いだろう。
このように、長い時を経ても色褪せることなく、後世に受け継がれていく次世代邸宅をいまの日本で建てるとしたら、どのような条件が必要になるだろうか。
まず、流行に左右されることなく、人々に長く愛される普遍的なデザインであることが求められる。モダニズムの特徴である、シンプルで合理的なデザインや機能美は、まさにこの要素にあてはまるだろう。次に、時代の変化に対応できる、フレキシブルな建物設計であることだ。特に昨今の技術革新により、人々のライフスタイルは急速、かつ多様に変化している。頑丈な骨組みの中で、住む人の生活にフィットするよう空間を変えられる、創造的な設計が必要となるだろう。3つ目に、これは前提条件となるのだが、耐久性や耐震性、耐火性といった建物の基本性能が高い水準であることが求められる。
普遍性・可変性・耐久性、これら3つの条件を体現していると感じたのが、2023年春に発表された、ヘーベルハウスの2階建て新邸宅モデル「RATIUS | GR(ラティウス ジーアール)」だ。ヘーベルハウス50周年の記念モデルとして開発された、RATIUSシリーズのうちの一つで、カタログ撮影用のモデルを取材で見学させてもらうことができた。次世代邸宅を体現する、「RATIUS | GR」の設計思想や実現する暮らしをみていきたい。
普遍的なデザインを生み出す、素材美・造形美の追求
まず、次世代邸宅の条件として挙げられるのが、普遍的なデザイン性だ。「RATIUS | GR」の外観を一目見て、従来のヘーベルハウスの外観とは一線を画す印象を受けた。
ヘーベルハウスの全シリーズに共通して、外装建材にはALCコンクリート・ヘーベルが使われている。同建材が持つ素材特性により、ヘーベルハウスを街中で見かけると、無機質でクールな印象を受けることが多かった。それが「RATIUS | GR」からはあまり感じられないのだ。
RATIUSシリーズは「テクスチャ(素材美)」と「フォルム(造形美)」に徹底してこだわっているという。「RATIUS | GR」の外壁を近くで見ても、天然の黒御影石と見間違えるほどだ。本物の石のようにマットな艶のない仕上がりで、吹付け塗装により豊かな石肌の表情が生み出されている。工業化住宅でありながらも、天然素材に近い質感や自然由来の柔らかさが感じられる。
バルコニーのアルミ手摺や笠木、室内の巾木や丁番一つとっても、デザインのノイズとなるものがなく、今までのヘーベルハウスと比べてシャープな印象を受ける。徹底したノイズレスなデザインへのこだわりを感じた。モダニズム建築の巨匠ミース・ファン・デル・ローエが残した名言に、「神は細部に宿る」という言葉があるが、建材の納まりや仕上げなど、ディテールへのこだわりが室内全体の洗練された印象や居心地のよさにつながっている。
一般的にハウスメーカーの商品は、建築家が一軒一軒手がけた作品に比べ、ある程度規格化・工業化されているため、人工的な質感だったり細部の仕上がりが単調であったりするが、「RATIUS | GR」は外観も室内空間も格式高く、自然素材の持つ柔らかさや職人の手仕事を目にしたような体感がある。QOLの高い暮らしを求めるターゲット層に、本物志向や自然回帰を思わせる設計思想は好まれるだろう。
モダニズムと日本の伝統建築の融合により、暮らしの変化に対応
次世代邸宅の条件として、次に注目したいのが、暮らしの変化にフレキシブルに対応できる空間設計だ。「RATIUS | GR」は、ヘーベルハウスの中でも珍しい大屋根構造であることで、空間利用の自由度と用途を広げている。
従来のヘーベルハウスは、フラットな陸屋根構造が主流だった。もともとヘーベルハウスの住宅設計には、モダニズム建築の思想が宿っている。シンプルな直線美を軸とするモダニズム建築の様式にならい、ヘーベルハウスの外観も屋根を含めて箱型が基調である。
しかし「RATIUS | GR」の屋根はフラットではなく、軒が大きくせり出した大屋根が採用されている。奥行きは最大2.7mと、非常にダイナミックな見た目だ。重鉄構造ならではの深い軒と大屋根があることで、軒下に広い空間が生まれ、庭先やバルコニーなど、半分内・半分外の空間が生まれる。1階の軒下の出は1.8mとのことで、住む人によってアウトドアリビングのように自由度の高い空間活用ができるだろう。軒の存在によって室内に陰影がもたらされ、神社仏閣のような上質な静けさ、内と外の緩やかな連続性が生まれていると感じた。モダニズム建築と日本の伝統建築のエッセンスがバランスよく融合、調和している。
また、大屋根があることで、2階の天井は勾配天井となり、高さのある大空間が生まれている。「LOFTY ROOF(ロフティルーフ)」と名付けられたこの空間の最大天井高は、5.1mとのこと。実際に勾配天井の下に立つと、開放感のある頭上の空間と差し込む自然光により、1階とはまったく異なる落ち着きを感じた。用途を絞らずに、趣味や作業場、くつろげる場所として、多用途に使えるスぺースになりそうだ。同じ宅内でありながら縦・横へと空間のグラデーションが生じる設計となっており、1階は横に広がる邸宅、2階は縦にゆとりのある開放的な空間といったように異なる体感が楽しめる。
加えて、日々進化するライフスタイルを支える設備仕様も重要な要素となる。旭化成ホームズでは、人々の生活・ウェルネス向上のためにさまざまな研究開発が進められており、「RATIUS | GR」にもハウスメーカーならではのデジタルサービスプラットフォーム構想が搭載されている。
その一つが、新しい宅配の形となる、「スマートクローク・ゲートウェイ」だ。室内に設けられた鍵付きの「置き配」スペース、「スマートクローク」を活用したサービスのことで、宅配員がワンタイムパスワードを使ってアクセスし、非対面で宅配便を受け取ることができる。荷物をそのまま置いておくこともでき、玄関をすっきり保ちやすくなるだろう。昨今の買い物習慣を考えれば、どの家庭でもニーズが高いだろうと感じた。
また、スマートクロークに蓄積されたデータの活用や、AI技術を用いた自律移動ロボットによる宅配物の移動の自動化といった、研究開発も進められている。まさに次世代型のライフスタイルといえる。
また、天井が高く、開口部が大きいと冷暖房効率が気になるところだが、「RATIUS | GR」には「ロングライフ全館空調」という空調システムが搭載されている。見学に訪れたのは真夏であったが、確かに夏の室内であっても、部屋ごとに明確な温度差は感じられず、玄関から建物全体まで快適な状態に整えられていた。このシステムによって、エアコンの室内・室外機が必要以上に目立つことがなく、ノイズレスデザインとなることもメリットの一つといえる。
建物性能と頑強な構造躯体が、ロングライフを実現する
すべてのヘーベルハウスで用いられているALCコンクリート・ヘーベル。ALCとは「Autoclaved Lightweight aerated Concrete」を略したもので、軽量気泡コンクリートを意味する。名前のとおり水に浮くほど比重が軽いことで、住まいの軽量化、ひいては地震や台風時の建物・地盤への負荷軽減にもつながる(提供:旭化成ホームズ)次世代邸宅に求められる3つ目の条件として、上述したような可変性を生み出す大空間を実現しているのが、ヘーベルハウスに共通する建物の基本性能や開発技術力の高さだ。
ヘーベルハウスの特徴でもある外装建材ALCコンクリート・ヘーベルは、住宅に必要な8つの性能(耐久性、耐火性、断熱性、軽量性、高強度、寸法安定性、遮音性、調湿性)に優れ、同社では理想的な住宅建材として、創業以来一貫して自社ブランドの住宅に採用し続けてきた。
耐久性の高い外装建材を強みとし、ヘーベルハウスは「ALL for LONGLIFE 」をコンセプトに掲げている。災害に強く、耐久性の高い住まいを提供し、50年にわたる長期点検システム(2023年現在は60年)を導入するなど、業界に先駆けてロングライフの実現のため開発を続けてきた。さらに「RATIUS | GR」では、地震に強い強靭な構造躯体として、新たに開発された新躯体が採用されている。
RATIUSシリーズに共通する新躯体「重鉄制震・デュアルテックラーメン構造」は、柱と梁で構成される重鉄制震・システムラーメン構造と、地震エネルギーを効果的に減衰することができるハイパワード制震ALC構造という2つのテクノロジーが合わさって生まれている。異なる構造体の組み合わせだが、過去に起きた巨大地震8波と今後予想される巨大地震4波を想定した実験により、その安全性は確認されている。
制震技術により大地震で発生するエネルギーを効率的に吸収し、頑強な新構造体により、重鉄構造らしい大スパンの空間が実現している。大開口の窓から見える悠々とした景色は、邸宅ならではの上質な借景となるだろう。
新しい感覚を取り入れる、次世代邸宅の設計思想
同社の開発技術力や住まいづくりのノウハウが結集された「RATIUS | GR」は、ノイズを極限までそぎ落とした普遍的なデザイン、モダニズム建築と日本の伝統的建築との融合、住む人により可変性の高い空間設計、従来のヘーベルハウスらしい耐久性の高い家づくりなど、時代を超えて住み継がれる住宅の在り方が追求されている。日本の感性を生かした新しい住宅として、そこに次世代邸宅の設計思想を感じ取ることができた。
もともと「モダニズム」という言葉は、“文学・芸術などの分野で、伝統的な手法や既成概念にとらわれることなく、現代的で新しい感覚を常に求めていく傾向”を意味する。「RATIUS | GR」は、この思想を体現しているといえる。ヘーベルハウスが市場に提供してきた合理的、機能的な住まいの価値に加え、これからの上質な暮らしを実現する本物・自然志向を取り入れた次世代邸宅として、5年10年の流行りではなく、長いスパンで愛される住宅となりうるだろう。
■取材・画像協力:旭化成ホームズ株式会社
■新邸宅モデル:「RATIUS | GR」
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