合計13路線が乗り入れる巨大ターミナル
埼玉県の大宮駅は、1885年(明治18年)3月に高崎線と東北本線(宇都宮線)の分岐点として開設された。そして交通の利便性とともに豊富な繭原料などが注目されて発展し、やがて「鉄道のまち」と呼ばれるようになった。現在の大宮駅は、JR京浜東北線や東武アーバンパークラインなど在来線7路線、東北や北陸など新幹線6路線の合計13路線が乗り入れる巨大ターミナルであり、乗車人員数はJR東日本の駅で7位(2022年度)となっている。
その大宮駅の周辺が今、大きく生まれ変わろうとしている。2017年7月28日、閣議決定によって都市再生特別法第2条第3項に基づき「都市再生緊急整備地域」として指定された。そして現在は、多くの団体や組織がそれぞれの立場で再生事業に取り組んでいる。しかし、本来まちづくりというものは、地域全体を俯瞰し、目線と足並みをそろえて行うべきである。そこで大宮駅が位置するさいたま市では、各団体・組織の考えを整理し、2021年に「大宮GCS(グランドセントラルステーション)プラン2020」を策定した。その内容を基に日本屈指の巨大ターミナルの周辺地域が今後どのように生まれ変わるのか、最新(2023年6月)の情報も併せて紹介しよう。
大宮駅周辺地域が抱える5つの課題
まずは現在、大宮駅周辺の地域が抱えている課題を整理したい。
課題①:駅周辺の交通の利便性
13路線が乗り入れているゆえに、特に混み合う朝夕において路線間の円滑で安全な乗り換え環境の改善が必要。また周辺の幹線道路は慢性的に渋滞している。
課題②:歩行者の交通量に対して狭い歩道
駅周辺では歩行者が集中し、車道へのはみ出しや乱横断、雨天時の傘交錯などが日常的に発生している。これらの改善と同時に、バリアフリー化やユニバーサルデザイン化も求められている。
課題③:主要な施設を結ぶ緑豊かな回遊ネットワークの強化
氷川神社を含む緑豊かな大宮公園、大宮図書館、鉄道博物館、ソニックシティ(総合コンベンション施設)、見沼田んぼなど駅周辺の主要な施設を結ぶ回遊ルートは、現状では魅力が十分ではない。より安全、安心、快適、歩きたくなる街並み等が必要。
課題④:東口の西口と連携した再開発
大宮駅西口では、1970年代より土地区画整理事業に基づき、ソニックシティやアルシェ(複合商業ビル)などビジネス・商業施設の開発が進んできた。今現在も複数の大規模な再開発事業が進行中だ。そこで東口では、西口の開発状況や駅周辺の市場性を見据えた開発を検討することが課題となっている。また、東西をつなぐ歩行者の回遊ネットワークをつくり出すことも必要だ。
課題⑤:防災性の強化
東口周辺は宿場町として発展した歴史があり、現在も幅の狭い街路と比較的小さい規模の建物が密集している。それが大宮ならではの雰囲気を醸し出しているともいえるが、防災的な観点からすると、建物の老朽化や避難経路の脆弱性が不安視されている。
さいたま市が設定した「都市空間形成の目標」
以上のような課題を背景にさいたま市では、「都市空間形成の目標」を設定している。これは下記6つ目標と、それぞれにひも付く合計24項目の整備指針を掲げるものだ。
回遊性
駅周辺の混雑解消や乗換動線の課題を解決すると同時に、地域住民や観光客などが各施設を快適に往来できるように回遊性の向上を図る。
交通
限られた駅前空間を有効に活用するために、地上約6.5mにある改札から地下まで立体的な交通空間を整備。さらに公共交通等の移動手段を集約することで交通利便性を高める。
都市機能
東京から東日本の各地域につながる在来線や新幹線のハブである大宮駅周辺に、ビジネス・商業・宿泊・居住といった機能を集積させる。
防災・環境
都心部と近距離にあることや、災害に強い安定した大宮台地に位置していることから、災害時における都心部の生活・業務等のバックアップ機能を備えたまちづくりを目指す。また、ヒートアイランド現象や地球温暖化等の環境問題に積極的に取組み、住む人々や訪れる人々にとって居心地の良いまちを実現するため、多様な環境活動を推進していく。
景観
地域住民が大宮に住むことを誇りに思い、来訪者が地域資源や風景に魅了されるようなまちを創造していくため、大宮らしさを感じる広場や歩行者空間のデザイン、建物の形状・色彩等を用い、一体感のある景観を形成する。
エリアマネジメント
まちを持続的に発展させていくためには、地元の事業者等が継続的に維持・管理・運営(マネジメント)に主体的に関わりながら、まちを育て、価値を高めていく必要がある。エリアマネジメントの仕組みを構築することで、将来にわたってまちの質や魅力を持続し、価値を高めていく。
「回遊性」と「交通」に関する具体策
上記を踏まえて具体的にどのような構想があるのか、その一例を紹介する。
回遊性
●アーバン・パレット(仮称)
約6.5mの高低差がある駅改札と地上の間で、スムーズな人の流れをつくり、にぎわいを創出するため、駅改札と同等の高さのデッキ「アーバン・パレット(仮称)」を整備する。
●ストリート・テラス(仮称)
建物と道路の歩行者空間が一体的にデザインされた「ストリート・テラス(仮称)」を整備。歩行空間を確保しながらテーブルや椅子などの設置により、日常的な憩いの場をつくり出す。
●辻空間
主要な道路が交差する十字路(辻空間)において、歩行者が集まり、次の目的地へ移動する起点の場とするため、統一した建物のデザインやイベント開催に必要な電気設備の設置等を行う。
交通
●地下車路ネットワーク
地上部の混雑緩和を目的として、地下車路を一般車と荷さばき車両の交通動線とし、地上部を公共交通優先として整備する。
●新東西通路の整備とロの字ネットワーク
西口と東口のにぎわいが連続してつながるように新東西通路を整備する。さらにこの通路と中央連絡通路を結ぶ南北通路も設置し、ロの字のネットワークを形成することでにぎわいの連続性を図る。
現在は構想を更新していく段階
「大宮GCSプラン2020」は全85ページ。非常に充実した再開発構想だ。それゆえ、着工から完成の目途は今のところ立っていない。現在の進捗状況をさいたま市に聞いたところ、今年度中にリニューアルした「大宮GCSプラン2023」をまとめることを目標としているそうだ。詳細は未定だが、主な改善点としては、「グリーン・キャピタル(国内外に発信するグリーン社会先導都市)への挑戦」を掲げるとのこと。大宮ならではの自然を維持しつつ、最新のグリーン×デジタル技術を駆使して環境にやさしいまちづくりに挑戦していくそうだ。その姿を見ることができるのは、もしかしたら数十年後かもしれない。しかし、そもそもまちづくりというものは、それだけ長いスパンを要する壮大な事業だ。その歩みが止まらないように今後も注視していきたい。
公開日:












