痛ましい交通事故を防ぐためのさまざまな対策
あくまで筆者の感覚値だが、年に数回は痛ましい交通事故のニュースを見聞きする。例えば昨年(2021年)6月に千葉県八街市で起こった、下校途中の児童の列にトラックが突っ込み、幼い2人の命がなくなった事故などは胸を痛めた人が多いのではないだろうか。このようなことから、住む場所を選ぶ際、周辺環境の安全さを気にする人は少なくないはずだ。特に小さい子どもや高齢者がいる世帯では、優先順位が高くなるだろう。
これに対し行政はさまざまな対策を打っており、国土交通省の生活道路の交通安全対策に関するポータルサイトを確認すると、その具体例として44種類の対策実施事例が公表されている。ここでは、対策の具体例や効果を紹介する。住まい探しの参考になれば幸いである。
対策の事例
・ライジングボラード
道路に突き出て上下させることにより車の進入を抑止し、特定の車のみの進入を可能とするポール。
・ハンプ(凸部)
道路に設けられた凸状の部分で、事前にこれを見たドライバーが速度を落とすことを目的とする。
・狭さく
道路の通行部分を局所的に狭くする、または視覚的にそう見せることで自動車の速度を抑制する構造物。
・シケイン
道路をジグザグにしたり蛇行させたりして運転者に左右のハンドル操作を強いることにより、車の走行速度を低減させる構造。
・カラー舗装
路側帯(歩行者専用エリア)をカラー舗装化し、車道と区別することで運転者に歩行空間の存在を認識させて通行速度の抑制を図るもの。
このような対策の効果などもあり、交通事故の死者数は確実に減っている。ピークの1970(昭和45)年度は1万6,765人だったが、2021(令和3)年度には2,636人まで減少し、過去最少となった。
犠牲になる確率が高いのは子どもと高齢者
ただし、安心はできない。車道幅員5.5m未満のいわゆる生活道路における交通事故発生件数の減少率は鈍化しており、全交通事故発生件数に占める割合は横ばいで推移している。その内容(2020年)を見ると、自転車乗車中と歩行中の死傷者の割合が、幅員5.5m以上の道路よりも約1.8倍も多い。また、生活道路の人口10万人あたりの年代別事故件数(2019年)は、小学生が最も多く15.2件と、2位の75歳以上の10.5件を大きく引き離している。そして人口10万人あたりの年代別死亡事故件数(2019年)では、75歳以上が0.31件で他の世代よりも圧倒的に多い。つまり、交通事故から子どもや高齢者を守るには、生活道路の安全対策が重要だということだ。
事故減少が証明された「ゾーン30」の効果
その効果的な対策の一つが「ゾーン30」だ。これは生活道路の一部に最高時速30kmの速度規制を設けると同時に、必要に応じてその他の対策も組み合わせて歩行者等の安全な通行を確保するものである。その他の対策とは、例えばハンプなどの物理的デバイスの設置による速度抑制、標識の設置、周辺道路の交通量の円滑化によるゾーン内の流入抑制などだ。
なぜ最高時速を30km以下に規制するのかというと、図のように自動車と歩行者が衝突した場合、自動車の時速が30kmを超えると歩行者の致死率が急激に上がるからだ。ゾーン30は、2011年に整備目標を全国で3,000ヶ所と設定されていたが、2020年度末までに4,031ヶ所も整備されている。そして実際に効果も証明されている。2018年度末までに全国で整備されたゾーン30(3,649ヶ所)を対象に、整備前年度の1年間と整備翌年度の1年間の交通事故発生件数を比較したところ、交通事故発生件数は23.9 %減少し、そのうち対歩行者・自転車事故件数は19.6 %減った。
物理的デバイスの設置などにより注力した「ゾーン30プラス」
このように安全効果が証明されているゾーン30だが、昨年(2021年)8月、さらに効果が期待できる「ゾーン30プラス」も設定されることとなった。これは国や県などの道路管理者と警察が緊密に連携し、最高速時速30kmの区域規制と物理的デバイスとの適切な組合せにより交通安全の向上を図ろうとする区域だ。ゾーン30との明確な線引きはないが、より標識や物理的デバイスの設置に注力するとのことなので効果アップが期待できる。
これから住まい探しをする人は、自分や家族の安全のためにゾーン30・プラスが周辺にある街を選択条件の一つに入れてはいかがだろうか。
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