コロナ禍のキャンプブームで山バブルの兆し?

第2次キャンプブームの今日、キャンプ・ソロキャンプ目的に限らず、趣味の場に、山林投資に…と、山を買う人が増えており、山林市場が活況だ。

そもそも、同じ不動産であっても、山林は一般的な土地とは価格感が大きく違う。
以前の記事(キャンパーたちがあこがれる「山の購入」。ところで…山ってどう買うの?)でも書いたように、山の価格は「土地の値段+生えている木材(立木)の値段」で決まるのだが、土地代金は数十円から数百円という驚愕の低さ!加えて、木材価格も高くなく、所有後の固定資産税なども低いため、「想像していたよりずっと山は安い!」「その価格で買えるなら私も『自分の山』を持てそう!」と夢を実現しやすい状況となっている。

そのように購入しやすいのは嬉しい限りだが、では、山を買った後はどうだろうか?

伐採をはじめ維持管理が不可欠なのはさることながら、いつまで所有するのか・遺すならば相続先はあるのかなど“持ち山”の将来も考えておく必要がありそうだ。
そこで今回は、「山を売る」ことについて、山林売買サイト『山いちば』を運営している株式会社山いちばの比賀真吾さんに話を聞いた。

例えば「気兼ねなくソロキャンプができるように」と自分専用の山を購入したとしても、この先ライフスタイルや趣味が変わることも十分に考えられる。将来、山を手放すことになった時のことも考えておきたい例えば「気兼ねなくソロキャンプができるように」と自分専用の山を購入したとしても、この先ライフスタイルや趣味が変わることも十分に考えられる。将来、山を手放すことになった時のことも考えておきたい

実は「山を買う」よりも格段にハードルが高い「山を売る」

株式会社山いちばの比賀真吾さん。山林の売買や仲介業務を行っている同社の母体は、素材丸太の生産をはじめ育林事業や山林調査などを行う木材会社。木材のプロとしての目も持ちながら、各メディアや自社サイト「山いちば」で購入時・売却時のアドバイスなどを発信している株式会社山いちばの比賀真吾さん。山林の売買や仲介業務を行っている同社の母体は、素材丸太の生産をはじめ育林事業や山林調査などを行う木材会社。木材のプロとしての目も持ちながら、各メディアや自社サイト「山いちば」で購入時・売却時のアドバイスなどを発信している

山いちばに届く山林売買の希望や問合せは、前年比で5-6割は増えているという。

この数を聞いても山林市場が活況なのがわかるが、そうなれば山の売却もスムーズに行われているのかと思いきや、売りたくても売れない山、さらに言えば“売り物にならない山”がとても多いのだと比賀さんは話す。

「木材価格も1年前に比べると値段が多少上がってきているので売りやすくはなっていますが、山の売却についてお問合せいただいたものに対して、最終的にサイトに掲載までできているのは2割もいかないぐらい。実のところ『売りたくても売れない山』の方が圧倒的に多いのです」(比賀さん)

現在、山林売却についての問合せは月150件ほど入っているそうだが、そのうち成約に至るのはわずか2-3件。
その程度しか売買が成立していないことに驚くが、それどころか売却希望の山の1-2割ほどしか“売却物件”としてサイトに掲載されていないと言うから更に驚いてしまう。

売れる山、売れない山

では、大多数を占める「売りたくても売れない山」とはどんな山なのだろうか?

先述の通り、山の価格はそのほとんどが立木の値段、つまり木材価格で決まる。ゆえに、その山に生えている木の値段が低すぎたり値が付かない様なら売却自体が難しいのだという。

「特に『人工林の放置林』は厳しいですね。天然林ならばまだ良いのですが、何十年も人が入っていないような人工林ですと、伐採ができない・陽当たりが悪く木がひ弱・土壌が健全でないなどありますから」(比賀さん)

山の値段に直結している立木だが、平成10年に輸入自由化されたことで木材価格は大きく下落。多少は上がってきたとはいえ現在も低値安定状態であることは否めない。
そもそも人工林は、木材価格が上がっていた昭和40年~50年代に「木材はお金になる」と見込んで一気に増えたものでもあるが、その目論見が外れてしまっている現状がある。

木材価格の低さが山を売るハードルを上げているのは確かだが、理由はそれだけではない。

大きな要因となりがちなのが、接道条件の悪さ。
山は「ひと山いくら」で売られている訳ではなく、山の一区画が所有物になるため、そこが車両の乗り入れができない場所となると、キャンプ用途にしても伐採時にしても利用しづらく需要が期待しにくくなってしまう。

また、広ければ 広いほど伐採時の単価を低く抑えられることもあり、3,000坪以下の山もなかなか難しいと比賀さんは話す。
中には、1,500坪ほどの山でも樹齢90年程の立派な立木の山で売却成立した山もあるそうだが、小さすぎる山には「原野商法」のケースも多く、地目が「山林」になっていても実際には木が生えていなかったり、境界すらわからない…ということも珍しくはないそうだ。

「例えば、資材置き場や太陽光パネル設置用地だったり、プライベート用の中・大型犬向けドックランや果樹栽培といったピンポイントの用途や趣味には適している山でも、他の使い道だと難しい『二次利用がしにくい山』もそうですね。このような条件に一つでも当てはまると売りにくくなってしまいます。山の価格よりも手数料の方が高くなってしまって売買が成立しないのです」(比賀さん)

持ち山を売りたいという希望はたくさんあるものの、すべてが売り出される訳ではなく、“狭き門”を通った山だけが「売却物件」としてスタートラインに立てる…というのが山林売却の現状のようだ持ち山を売りたいという希望はたくさんあるものの、すべてが売り出される訳ではなく、“狭き門”を通った山だけが「売却物件」としてスタートラインに立てる…というのが山林売却の現状のようだ

山林売買はどうして「負」の状況に?

そもそも、の話なのだが、山は住宅や土地と違って境界が曖昧だ。
登記簿などに記されていたとしても、大きく違っていることも多々あるのだという。

では、しっかりと境界線がわかるように行政が管理すればよいのに…と思うのだが、これまた悩ましいことに、山は固定資産税もとても低いため、行政による国土調査や地籍調査も後回しになりがち。特に大都市はそれが顕著だという。

「中には、法務局の図面にある境界と、都道府県の山林資源を管理している林業課や林業振興室の図面が一致しないこともあります。そうなるとお手上げですよね…。実際に現地に入って自分の足で確認して、その山の歴史を自分で調べて、周辺や隣接する山の状況も把握して、各所有者にお礼などもして…などを個人で行うなんて現実的ではないですから」(比賀さん)

木材価格が高額ならば、専門の会社などが生まれても良いものだが、如何せん価格が低い(低すぎる)ために「商売にならない」というのが正直なところのようだ。
運悪くそのような条件の悪い山を持ってしまうと、「所有したのは良いが、売れない上に木も切れない…」になってしまい、それに約8割が該当しているのが現状なのだとか。

山の所有者は高く売りたい想いがあって当然だが、希望価格に合わないことが断然多く、売れそうであっても売買手数料の方が高くなってしまうようなケースすら珍しくないそう。
そんな現状から、山林売却の問合せがあっても、5人に1人程度のオーナーの山しか山林購入サイトで扱うことができないのが悩ましいと比賀さんは話す。

山いちばの姉妹サイトとなる『フォレステ』。売主からすると手数料がお値打ちなのも魅力な山林売買の掲示板サイトだ木材価格や接道条件、不確かな地籍などで8割方が売りたくても売れない山…という厳しい現実

山を売るときは…

山林売却の難しさを聞くと落ち込んでしまいそうだが、ここで売る際の手順もご紹介したい。

まずは問合せ。
その際には、山林の登記簿謄本や固定資産税の通知書で地目や地番、面積などを予め確認・整理しておき、地元の木材会社か「山いちば」などの山林売買サイト、もしくは不動産会社へ山の情報を伝える。

その面積やエリアなどから、売れるか売れないかがシビアにジャッジされ、売れるとなれば山林売買サイトなどに載ることに。売却条件は、委託会社に任せることも、自分で値を決めることもできる。

また、買主を探すのではなく、委託会社に引き取ってもらうケースが多いと聞いた。
植林状況や、等高線の入った図面・法務局の構図などの資料から金額を想定し、そこからフィーを差し引いて買い取ってもらうもので、取引のボリュームゾーンは200~300万円程度だとか。
例は少ないが、「先祖代々引き継いだ山だから買主にご挨拶をしたい」というような売主もあり、そのような場合は、買取ではなく仲介として業者が入ることもあるようだ。

そして驚いたのが、フリマアプリやインターネットのオークション・掲示板などでも山林売買がされているということ。

もちろんそこには専門の会社もいるのだが、売主本人が持ち山の情報を把握していない状態で出品していることも。
そのような山を購入した場合、自分が所有しているうちは何も問題はなくとも、売却する時になって明確な情報が集められないなども考えられる。
山のオーナーが亡くなった場合、その方の固定資産が山しかなければ相続放棄もできるが、それはなかなか考えにくい。「山だけを放棄・寄付」のようなことは今の民法では基本的には無理な話だ。
売れない場合はあきらめるしかない厳しい現状があるからこそ、そこはじっくり検討いただきたい。

なお、山いちばでは姉妹サイトとして、手軽な価格で購入できる山林物件掲示板サイト『フォレステhttps://foreste.yamaichiba.com/』を運営。
山林を財産として考えるだけでなく、所有するメリットや楽しさを感じられるようにすることを目的としたサイトで、ここには、広さや立木的に売却が難しいとされた山も掲載されている。
山林売買のハードルを下げた掲示板サイトを作ったのには、売りたくても売れない山を少しでも減らしたい、との想いもあるようだ。

まだ続きそうな山林売買ブーム。山いちばでは、山林所有をもっと身近にするためのお役立ち動画をyoutubeチャンネルで配信中。参考にしてみてはいかがだろうか?山いちばの姉妹サイトとなる『フォレステ』。売主からすると手数料がお値打ちなのも魅力な山林売買の掲示板サイトだ

手放すときのことも見据えながら山林購入を

山は案外高くない・買いやすい、ということは、当然のことながらそもそもの値段が安いということ。
固定資産税も安いため所有時のコストも負担は高くないと言えそうだが、手入れも必要な上に、自己資産となるため、次の代への継承の責任もある。自分の代で手放そうと思っても、「売れない山」だったとなると哀しいことではないだろうか?
そんな“負の財産”になってしまわないように、衝動的に購入するのは避け、先を見据えた購入を考えたい。

最後に、これから山を買う方に心がけて欲しいことを聞くと、

「ご自分で境界の判断がつく山かどうか。その山が再販(売却)できる山かどうか。そして、山林の販売会社が言っていることが本当かどうかを、自分自身がセカンドオピニオン的に判断をして欲しい」と比賀さん。

「高く売りたい・早く売りたいなど、どのくらいの物差しで山林売却を考えているかを業者さんにしっかり伝えた方が良いと思う」とも話していた。

キャンプブームも手伝って、山を買うことにスポットが当たりがちな今は、山林売買のサイトも増えてきているという。
そこには、厳しい目で審査を通って「売れる山」と認められた山林も多いだろう。
境界や地番が明確な"素性の分かった"山を選んで購入することも、山林売買のポイントになるのではないかと思った。

まだ続きそうな山林売買ブーム。山いちばでは、山林所有をもっと身近にするためのお役立ち動画をyoutubeチャンネルで配信中。参考にしてみてはいかがだろうか?まだ続きそうな山林売買ブーム。山いちばでは、山林所有をもっと身近にするためのお役立ち動画をyoutubeチャンネルで配信中。参考にしてみてはいかがだろうか?

■取材協力 山いちば https://yamaichiba.com/

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