今後低下の懸念もある東京の国際総合力

東京の国際線就航先数は、香港やソウルといったアジアの主要空港と比較しても大きく下回っている(出典:国土交通省『羽田空港のこれから』)東京の国際線就航先数は、香港やソウルといったアジアの主要空港と比較しても大きく下回っている(出典:国土交通省『羽田空港のこれから』)

森記念財団 都市戦略研究所から世界の都市総合ランキング(2018年)が発表された。
これは世界の主要な都市の経済、研究・開発、文化・交流、居住、環境、交通・アクセスを合わせた総合力を採点して順位付けするものだ。このランキングにおいて東京は第3位だった。これで10年連続トップ5を維持したことになる。まさに世界に誇るバランスの取れた巨大都市ということだろう。

その一方で、海外と東京を行き来する国際線の就航数が少なく、アクセスの悪さが懸念されている。世界の主要都市と比較すると、羽田空港・成田空港を合わせてもその数は少ない。東京が108都市とつながっているのに対して、ニューヨークは131都市、ロンドンは360都市という状況だ(国土交通省「羽田空港のこれから」より)。また、香港やソウルといったアジアの主要空港と比較しても就航先数は大きく下回っている。そこで政府は今後の外国人観光客の誘致や首都圏の国際競争力アップを見据え、2020年3月29日から羽田空港国際線の増便を計画している。

新飛行経路運用に立ちはだかる騒音などの懸念

ところが、羽田空港はすでにフル稼働状態。これ以上国際線を増やすことは困難だ。
仮に滑走路を増設する方法を取ったとしても、東京湾上空は現在でも大変混雑しており、やはり便数を増やすことはできない状況だ。そこで都心上空を航空機が往来する新飛行経路の運用が考えられている。しかし、これも容易なことではない。経路の下に住む人たちへの「騒音」「落下物」「地価の下落」といった不安が拭えないからだ。

このような課題について国土交通省は、住民らに対して情報提供などから始める説明会を、6つのフェーズに分けて2015年からスタートしている。そしてフェーズ⑥が2019年11月から2020年1月まで開催中だ。このフェーズ⑥の資料を基に「騒音」「落下物」「地価の下落」がどうなるかを見ていこう。

なお、具体的な新飛行経路は下記サイトで公開している。

■羽田空港の増便のために  新飛行経路の詳細
https://www.mlit.go.jp/koku/haneda/international/new.html#newFlightPath

運用時間や航空機制限などによる騒音対策

一般に航空機の騒音は、高度が高いほど小さく、低いほど大きく聞こえる。着陸前の高度1,000フィート(約305m)では80db前後。これは掃除機や騒々しい街頭レベルだ。多くの人にとって、かなり気になるレベルではないだろうか。このような騒音に対しては、以下の対策を徹底するとしている。

・新飛行経路の運用時間を限定
・着陸料の料金体系に騒音要素を追加
・着陸経路の高度引き上げ
・着陸前の飛行高度を上げるため着陸地点を移設
・着陸時の降下角の引き上げ
・離陸する航空機の制限
・条件を満たす施設への防音工事の助成
・測定局の設置と効果公開

なお、2020年1月30日から3月11日までに北風・南風それぞれ7日間程度、実際の航空機による新飛行経路の確認を行い、新たに設置した騒音局の機器調整を実施する予定だ。

2020年1月30日から3月11日までに行う実機飛行経路。【1】は北風時の新飛行経路(出発)。【2】は南風時の新飛行経路(到着)。【3】は南風時の新飛行経路(出発)(国土交通省「羽田空港のこれから」)2020年1月30日から3月11日までに行う実機飛行経路。【1】は北風時の新飛行経路(出発)。【2】は南風時の新飛行経路(到着)。【3】は南風時の新飛行経路(出発)(国土交通省「羽田空港のこれから」)

抜きうちチェックや報告制度などで落下物を防止

国内における落下物は、2008年から2018年までの間に23件発生している。そのうち成田空港周辺が21件(部品16件、氷塊5件)、関西空港周辺が1件(部品)、熊本空港周辺が1件(部品)で、羽田空港周辺では0件だった。

羽田空港の新飛行経路運用時には、次のような世界に類を見ない厳しい基準を策定し、対策を強化する。

・落下物防止対策措置の義務化
・駐機中の機体を抜きうちでチェック
・全国の空港事務所等を通じ、落下物に関する情報を収集
・航空会社の部品欠落の報告制度を充実
・落下物の原因分析強化
・落下物の原因者である航空会社への処分実施
・落下物による被害者に対する補償等を充実

新飛行経路下の不動産価格下落はあり得ないのか

「騒音が気になる」「落下物の可能性がある」、このような地域の地価は下がってしまうと考えるのは自然だろう。この懸念に対し国土交通省は、比較的離着陸の多い成田・伊丹・福岡の3空港周辺の地価の調査・分析を行った。その結果、「商業地であること」や「最高価格地点からの距離」による地価への影響は判明したが、飛行経路が地価下落につながることを示す因果関係は確認できなかったそうだ。

以上のように国は、羽田空港の新飛行経路の安全な運用のための対策を徹底するとしている。とはいえ、これらは空港が存在する間ずっと継続して実施できなければ、絵にかいた餅となってしまう。そのジャッジをするのは、国は当然としてわれわれ国民も含まれるのではないだろうか。航空機からの落下物は、主要空港周辺部に限らない。他人事とは思わず、今後どうなっていくのか注視していきたい。直近の詳しい状況や説明会日程の確認などは下記サイトでできる。

■「羽田空港のこれから」
http://www.mlit.go.jp/koku/haneda/

羽田空港の新飛行経路は、国の発展に貢献することが期待できる一方で、騒音などの懸念も残る。どのような防止策が有効なのかわれわれ一般市民も注視していきたい羽田空港の新飛行経路は、国の発展に貢献することが期待できる一方で、騒音などの懸念も残る。どのような防止策が有効なのかわれわれ一般市民も注視していきたい

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