地球温暖化を防止するために建築物の省エネルギー対策を

今年(2019年)の日本は、非常に強い勢力の台風上陸によって甚大な被害を被った。その勢力増大の一つの原因と見られているのが、温室効果ガス排出量の増加による地球温暖化だ。このまま温暖化が進めば、海水の蒸発が盛んになり、大気により多くの水蒸気が蓄えられる。そして、より強い台風に発達するという説があるのだ。このような背景から日本では、「パリ協定」(2016年11月発効)を踏まえた温室効果ガス排出量の削減目標の達成に向けて、住宅など建築物の省エネルギー対策が課題となっている。

その対策の一つとして施行されているのが、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(建築物省エネ法)だ。同法が改正され、その一部が2019年11月16日に施行された。その内容にあるトップランナー制度は、私たちが暮らす住宅に深く関係する部分もあるので解説しよう。

各製品でもっとも優れた消費効率を目標とする「トップランナー制度」

同法の改正で一般の人たちにもっとも関係する部分は、住宅トップランナー制度の対象に注文住宅とアパートを供給する大手事業者も追加されたことだろう。トップランナー制度とは、家電から自動車まで様々なメーカーを対象に、「この期間までに製造する製品の省エネ性能を平均でこれ以上に上げてください」と努力義務を課すものだ。各製品でもっとも優れた消費効率を基準とすることから「トップランナー制度」と名づけられている。

この制度の住宅分野の対象としては、今までもサッシや複層ガラス、電気温水機器といった部材や設備のメーカーのほか、建売住宅事業者も含まれていた。対象となるのは、年間150戸以上供給する建売住宅事業者。2020年度までに供給するすべての住戸が外皮性能基準の省エネ基準に適合すること、そして一次エネルギー消費量基準の省エネ基準よりも15%下回ることを目標としている。

なお、外皮とは外壁や屋根、床など建物の室内と室外を区画している部分を指す。外皮性能基準とは、国が定める建物の外皮面積当たりの断熱性と日射遮熱性の基準だ。つまり、これをクリアした家は、従来のものよりも冬は暖かく、夏は涼しいということになる。また、一次エネルギー消費量基準とは、私たちが普段消費する電気やガスといった二次エネルギーを、化石燃料や太陽光といった一次エネルギーに換算して算出した基準のことだ。この基準を下回る家ほど設備のエネルギー消費量が少ないということになる。

国が定める住宅の省エネ基準では、外皮性能基準と一次エネルギー消費量基準の両方をクリアすることが求められている</br>(国交省「住宅・建築物の省エネルギー施策について」を基に作成)国が定める住宅の省エネ基準では、外皮性能基準と一次エネルギー消費量基準の両方をクリアすることが求められている
(国交省「住宅・建築物の省エネルギー施策について」を基に作成)

トップランナー制度の対象に注文住宅とアパートを供給する大手事業者も追加

そして2019年11月16日、このトップランナー制度の対象に注文住宅とアパートを供給する大手事業者も追加された。具体的には注文住宅は年間300戸以上、アパートは年間1,000戸以上供給する事業者だ。両者とも目標年度を2024年度として、注文住宅事業者の場合は、供給するすべての住戸が外皮性能基準の省エネ基準に適合すること、一次エネルギー消費量基準の省エネ基準よりも25%(当面は20%)下回ることを目標としている。そしてアパート事業者の場合は、供給するすべての住戸が外皮性能基準の省エネ基準に適合すること、そして一次エネルギー消費量基準の省エネ基準よりも10%下回ることを目標としている。

トップランナー制度の対象に注文住宅とアパートを供給する大手事業者も追加された。<br />両者とも外皮性能基準への適合と一次エネルギー消費量基準を下回ることを求められているトップランナー制度の対象に注文住宅とアパートを供給する大手事業者も追加された。
両者とも外皮性能基準への適合と一次エネルギー消費量基準を下回ることを求められている

建売住宅の目標達成率は2018年時点で3~4割程度

これらの目標が達成されれば、私たちの住むことになる多くの新築住宅が冬は暖かく、夏は涼しくなり、光熱費も安く済む。そのため、誰もが歓迎する制度だと思える。だが、これらはあくまで努力目標なので、達成できなくても基本的にペナルティーはない(だたし、まったく努力の痕跡がないといった場合は国土交通省から指導や社名の公表などがあり得る)。国土交通省によると、建売事業者の場合、目標年度前々年の2019年3月時点の達成率は3~4割程度だそうだ。理由は明らかになっていないが、顧客のニーズが高性能よりも低価格に向いていることや、施工者の省エネ化に対する技術不足などが考えられる。もしそうであるなら業界全体で何とか克服し、建売住宅、注文住宅、アパートすべての目標が達成されることを願いたい。

トップランナー制度の基準をクリアする住まいが増えれば増えるほど、快適な生活だけでなく、地球環境の改善も実現するトップランナー制度の基準をクリアする住まいが増えれば増えるほど、快適な生活だけでなく、地球環境の改善も実現する

公開日: