増え続けている日本の耕作放棄地

日本の農地が減り続けている。おもに宅地への転用や耕作放棄地の増加などによって1961年に約609万ha(ヘクタール・以下同)あった農地は、2016年には約447万haにまで減少してしまった。(出典:『荒廃農地の現状と対策について』農林水産省)。

耕作放棄地とは、以前は耕作していたものの過去1年以上作付けせず、今後数年間に再び作付けする意思のない土地だ。1990年の耕作放棄地は約21.7万haだったが、2015年には約42.3万haに増加した(出典:同上)。

『荒廃農地の現状と対策について』によると、このような農地減少のもっとも大きな理由は「高齢化・労働力不足」(88%)で、次は「農作物価格の低迷」(43.4%)だ。このまま農地が減り、就農人口も減少し続ければ、現在でも低いといわれている日本の食料自給率がさらに下がり、農業技術の伝承も途絶えてしまうといった懸念がある。

農地が減り、就農人口も減少する理由には、農業の不安定さもあるだろう。サラリーマンと違って農業をはじめるには土地の確保や農機具の用意など、ある程度まとまった初期費用が必要になる。一方で収入は天候などによって大きく左右されてしまう。したがって、今後の農業の発展には安定した収入が確保できることも不可欠なはずだ。

そこで注目したいのが、営農を続けながら農地の上部に太陽光発電設備を設置する営農型発電設備、いわゆるソーラーシェアリングだ。

上:農地の上部に太陽光発電設備を設置するソーラーシェアリングの事例。下:営農型発電設備を設置するための農地転用許可の件数は年々増えている(出典:「営農型発電について」(農林水産省))上:農地の上部に太陽光発電設備を設置するソーラーシェアリングの事例。下:営農型発電設備を設置するための農地転用許可の件数は年々増えている(出典:「営農型発電について」(農林水産省))

農地で再生可能エネルギー固定価格買取制度を利用する仕組み

ソーラーシェアリングとは、農地で再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT制度)を利用して売電収入を得る仕組みこと。この仕組みによって農業経営者は、経営をサポートする安定した副収入を得ることができる。また、増加傾向の耕作放棄地を再び有効活用する方法としても期待されている。

ただし農地は基本的に農業以外に利用できないことになっている。そこでソーラーシェアリングを行うには、各市町村に設置されている農業委員会へ農地一時転用の許可申請書を提出して許可を得なければならない。農業委員会とは農地法に基づく売買や賃借の許可など農地に関する事務を執行する機関だ。またこの申請をするには、事前に経済産業省へ事業計画認定の申請と電力会社へ電力受給契約の申込みも行う必要がある。

一時転用が許可されるには次のような条件がある。

・一時転用許可期間は3年間
問題がない場合は再許可が可能。

・営農の適切な継続が確実であること。また周辺の営農に支障がないこと
農地における単収(10a当たり)が同じ地域の平均と比較して概ね2割以上減少しないことなど。

・年に1回の報告義務で農産物の生産に支障が生じていないかチェック
著しい支障がある場合は発電設備を撤去して農地を復元することを義務づけ。

このように農地はあくまで農地として活用し、発電と両立させることを目標としている。

ソーラーシェアリングを実施するまでの流れ。農地一時転用の許可申請をするには、事前に経済産業省へ事業計画認定の申請と電力会社へ電力受給契約の申込みも行う必要がある(出典:「ソーラーシェアリングの魅力」(神奈川県HP))ソーラーシェアリングを実施するまでの流れ。農地一時転用の許可申請をするには、事前に経済産業省へ事業計画認定の申請と電力会社へ電力受給契約の申込みも行う必要がある(出典:「ソーラーシェアリングの魅力」(神奈川県HP))

設備資金は金融支援策の利用でも調達可能

ソーラーシェアリングを行う上で、大きな壁となるのが太陽光発電設備などの資金調達だろう。これに対しては、おもに2つの支援策がある。

1.スーパーL資金(㈱日本政策金融公庫の長期低金利融資制度)
認定農業者が、農業経営の改善のために営農型太陽光発電設備を設置する場合に利用可能。
償還期限:25年以内(据置期間(元金の返済が猶予となる期間):10年以内)
貸付限度額:原則個人3億円、法人10億円
貸付利率:0.20~0.30%(2018年5月23日現在)
くわしくはこちらで確認を↓
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/a_30.html

2.農業信用保証保険制度
農業者が、営農型太陽光発電設備を設置するために民間金融機関から融資を受ける場合、農業信用基金協会の債務保証を受けることができる。
くわしくはこちらで確認を↓
http://www.maff.go.jp/j/keiei/kinyu/hosyo/hosyou.html

ブルーベリーを栽培しながら年間200万円の売電収入

ソーラーシェアリングのための農地転用許可の実績は、上記の表にもあるように2015年度まででも800件近くある。そのなかの一例を紹介しよう。

千葉県のある農家は、移住者から「地域資源を活かした太陽光発電に取り組まないのはもったいない」という助言をもらった。そこでソーラーシェアリングに着手。5種類のブルーベリーやイチジクを栽培する10aの農地の上に、約1,500万円を費やして発電設備を設置した。資金の調達方法は、地元金融機関からの融資だ。その結果、年間200万円の売電収入を得ることに成功。さらに発電設備で日陰ができることによって、真夏の収穫が楽になったほか、乾燥も防げるので散水も楽になったそうだ。

営農と発電の両立が課題

こういった成功例がある一方で、うまくいかないケースもある。そのおもな理由は、営農と発電の両立だ。ソーラーシェアリングは、あくまで農業が成り立つことが前提。売電がおもな目的となったら本末転倒となってしまう。しかし、発電設備を設置すれば日陰ができるので、栽培できる作物の種類は限られてしまう。たとえば、お茶、稲、さといも、しいたけ、みょうがなどだ。ソーラーシェアリングを成功させるには、計画段階でこのような適した作物に向いた気候や地質か、さらに販路はあるのか、などを見極めなければならない。また、長年作物の栽培が行われていなかった耕作放棄地などで行う場合は、土づくりからはじめなければ狙い通りの収穫は得られない。

農林水産省では、営農と発電の両立のために様々な情報をサイト上で発信している。
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/einou.html

ソーラーシェアリングは、日本の農業発展の有効な手段になるはずだ。このような取り組みが活性化し、農地の有効活用につながることを期待したい。

ソーラーシェアリングは、日本の農業発展の有効な手段になるはずだ。増加傾向の耕作放棄地を再び有効活用する方法としても期待できるソーラーシェアリングは、日本の農業発展の有効な手段になるはずだ。増加傾向の耕作放棄地を再び有効活用する方法としても期待できる

2018年 07月03日 11時05分