住宅用太陽光発電のこれから

講師を務めたNPO法人日本住宅性能検査協会理事の北村稔和氏講師を務めたNPO法人日本住宅性能検査協会理事の北村稔和氏

2009年11月に始まった再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)。同制度は、再生可能エネルギーで発電した電力を、電力会社が一定価格で一定期間買取ることを国が約束するもので、住宅用太陽光発電の買取期間は10年と定められている。2019年11月以降に、その10年間の買取義務が終了することから、売電収入や太陽光発電そのものの行方がどうなるのかと話題になっており、「2019年問題」とも呼ばれている。「問題」とつくのは、不安や疑問を感じている利用者がそれだけ多いということだろう。

東京都では、消費電力に占める太陽エネルギーを含めた再生可能エネルギーの利用割合を、2030年度までに30%程度にすることを目指し、住宅用太陽光発電の利用促進に取り組んでいることから、「2019年問題」および太陽光発電の今後に関して、都民に情報を提供する必要がある。その一環として、2019年7月20日、「2019年度太陽エネルギーセミナー」が開催された。

「2019年問題」から「卒FIT」が一般的に

住宅用太陽光発電の導入時期によっては、2020年以降に10年間の買取義務が終了するケースもあることから、「2019年問題」という呼び名はふさわしくなく、「現在は『卒FIT』と呼ぶのが一般的になってきました」とセミナーの講師であるNPO法人日本住宅性能検査協会理事の北村稔和氏。北村氏によると、2019年11月に卒FITになるのは約53万件。住宅用太陽光発電の累計導入件数は2017年で230万件を超えるため、その後もしばらく「卒FIT」は続くことになる。

卒FITに対して、国は新たなFITを設けず、買取市場に任せる方針のために、利用者の選択肢は①そのまま自家消費分のみ使う。余剰分は不使用、②既存電力会社を含む小売電気事業者と、新たに買取契約を行う、③蓄電池等を導入し、自家消費率を上げる、以上の3つとなる。①について、発電した電力は無償で電力会社に引き取られ、売電収入が得られない場合もあるといわれてきたが、北村氏は「各電力会社からそのまま買取りを続けるプランが発表されています」と説明。売電収入が得られないということは、基本的にはないようだ。

2009年までに住宅用太陽光発電を導入した559,438戸は、2019年から順次買取義務が終了=卒FITとなる(セミナー資料より)2009年までに住宅用太陽光発電を導入した559,438戸は、2019年から順次買取義務が終了=卒FITとなる(セミナー資料より)

余剰電力の買取り金額は大幅安に

大手電力各社の買取り金額。7~9円の範囲で設定されている(セミナー資料より)大手電力各社の買取り金額。7~9円の範囲で設定されている(セミナー資料より)

3つの選択肢に対して、既存電力会社を含む小売電気事業者では、余剰電力の買取りをはじめ、具体的なサービスのプランを明らかにしている。一例として、東京電力の場合は、東京電力エナジーパートナー株式会社が、「余剰電力の買取り」「電気のお預かりプラン(仮称)」「定額機器利用サービス『エネカリ』」の3つを用意している。他の大手電力会社でも、多少の違いはあるが、同様の3つのプランを用意しているそうだ。

「余剰電力の買取り」では、同社のプランでは手続きは不要で、自動的に買取りが継続される。ただし、買取り金額は1kWhあたり、10%の消費税込みで8.5円。2009年の契約では48円なのでかなり安くなる。また、FITのように10年間固定という仕組みもない。ちなみに東京電力以外の大手電力会社の買取り金額も、1kWhあたり7円から9円で設定されている。

電力各社のプランは「安心」「納得」できるか要検討

次に「電気のお預かりプラン(仮称)」について、東京電力ではプランの詳細が未定のために、北村氏は、東北電力の同様のプランである「でんきお預かりサービス」を例に内容を説明した。
このプランは余剰電力を売電ではなく、電力会社に預けて、発電量が少ない月に返してもらったり、離れた家族などに分け与えたりするというもの。蓄電池などの設置が必要ないので、一見すると得に思えるが、毎月の基本料金がかかることや、再生可能エネルギー発電促進賦課金、燃料費調整額はこれまで同様請求されることから、北村氏は「発電量や消費量をよく計算して比較してください」と注意を促していた。

「定額機器利用サービス『エネカリ』」は、太陽光発電システム、蓄電池などの機器を購入せずに、毎月のサービス料金を払って利用するというもの。「このプランはリースと考えてよいでしょう」と北村氏は言い、初期費用がかからないから、というだけで決めずに、こちらもゆっくり考えることが必要とアドバイスしていた。また、新電力各社からも、さまざまなサービスプランが出ている。これらに関しても「安心できる」「納得できる」を基準に選ぶことが大切というのが、北村氏の意見だ。

なお、11月に卒FITを迎える利用者には、6ヶ月から4ヶ月前までに具体的なプランを通知することになっているので、北村氏は「7月に入っても電力会社から通知が届いていない人は、問い合わせてください」と呼びかけていた。

蓄電池の選択は、必要を十分に考えた上で

卒FITが近づき、蓄電池やソーラーパネルのメンテナンスに関して誤った情報が流れやすくなっている。しっかりと情報収集をしておきたい卒FITが近づき、蓄電池やソーラーパネルのメンテナンスに関して誤った情報が流れやすくなっている。しっかりと情報収集をしておきたい

最近、住宅用太陽光発電の利用者の間で、蓄電池の導入が増えている。そのメリットは「何といっても、停電時にも電気を使えることです」と北村氏。蓄電池を選択する際に確認すべきポイントとして、充電時間、200V出力の可否、出力能力、充放電の合計回数であるサイクル回数及び保証年数を挙げた上で、「蓄電池は容量に幅があり、しかも高価なので、どのような機器を、どのくらいの期間使いたいのかを判断して、適したものを選んでほしい」と付け加えていた。
また、蓄電池の導入や卒FITに関して、北村氏は「蓄電池は○年で元が取れる」「蓄電池は劣化しない」「早く契約しないと、契約できなくなる」といった誤った情報が出回りがちと指摘。正しい知識に基づいた、落ち着いた判断を、と訴えていた。

住宅用太陽光発電で得た電気は今後、自家消費、地産地消が進むだろう、と北村氏。「電気を小売電気事業者から購入するだけでなく、個人間での取引もできるようになるはずです。すでに実証実験も始まっています」と話し、将来は再生可能エネルギーを使って、地域でつくった電気を地域で使う形になるのでは、と展望していた。

卒FIT後に提供される各電力会社のプランについては、詳細が決まっていないものもあるが、いずれにせよ電気が無駄になってしまうことはなさそうだ。まだ少し期間があるため、今から十分に情報収集を行い、吟味しておくのがよいだろう。

2019年 09月02日 11時05分