観光クルーズ船による海外旅行客の増加

長崎港は、1571年にポルトガル船の来航によって開かれた。鎖国時代も西洋や中国への唯一の門戸として栄え、その後も一貫して欧米や東アジアとの交易を続けた由緒ある港だ。
長崎市を訪れる国内外からの観光客が増えているなか、インバウンド向けの対応についてどのような動きをしているのか、市に伺った。

「海外からを含めて多くの観光客の方々に長崎市を訪れていただいていますが、近年は、クルーズ客船を使って中国から訪れるケースが増えています。中国と日本、韓国も含めた周遊型のクルーズが一般的です。2017年、長崎港には過去最高の267隻の客船が寄港しています。例えば、10万トンを超えるような客船には、5,000人を上回る乗員・乗客が乗っています。多くの船は朝に長崎港に着き、主要な観光地を見ていただきながら、お買い物も楽しまれ、その日の夜に次の港へ向けて出発する、という形が多いようです。2012年、長崎の夜景は香港やモナコと並び、『世界新三大夜景』に認定されています。クルーズで来られたお客様にも、出航の際は、船上から夜景を楽しんでいただきたいですね」と、長崎市商工部商工振興課の大塚研吾さんは話す。

長崎港に浮かぶクルーズ船。船が寄港すると、長崎の町中は一段と賑わいをみせる長崎港に浮かぶクルーズ船。船が寄港すると、長崎の町中は一段と賑わいをみせる

市の援助で活性化する、インバウンド向けの対応

お話を伺った、長崎市商工部商工振興課の大塚研吾さんお話を伺った、長崎市商工部商工振興課の大塚研吾さん

港と町が近く、コンパクトなのが長崎の町の特徴だ。船が着いたらすぐ目の前には、外国人居留地の面影を今に伝える「グラバー園」や国宝「大浦天主堂」などがあり、中心市街地や平和公園などには、路面電車で片道30分程度で移動することができる。市民の生活を古くから支えてきた「浜んまち商店街」には、ドラッグストアやカフェなどナショナル・チェーンの出店も年々増え、老舗の店舗と相まって活気にあふれているが、外国人観光客の増加の流れを汲み、中国の銀聯カードへの対応や消費税免税一括カウンターの設置や商店街としてQRコード決済へ対応するなど、誘客に向けた様々な事業を実施している。

「外国人観光客が今後も増加すると見込まれており、長崎市商工振興課では、個店が行う誘客や消費拡大を図る取組みに対して、『長崎市まちなか商店街誘客事業』を実施し、支援しています。これは市の中心部の小規模の小売業・飲食サービス業の方を対象に行っている補助制度で、2017年度は16の事業者の皆様に利用いただきました。取組みはメニューや看板の多言語化、クレジットカード決済端末の導入、店舗の改修、トイレの洋式化など、多岐に渡ります。文字ではなく、商品を映像でわかりやすく紹介するショップもありましたね。制度を利用されたかたから、外国からのお客様がより多く来店されるようになった、との声もいただいています。今後も、このような支援に取り組むことで、長崎により長く、より身近に滞在いただけるようになればと考えています」と大塚さんは話す。

町を歩いて観光する「長崎さるく」

2006年に始まった『長崎さるく』という活動がある。居留地や造船など、長崎の歴史をテーマに沿って、ストーリーのある町歩きを行うためのモデルコースを用意しており、長崎市は観光の一環として積極的に取り組んでいる。事前に申し込む必要があるものも含めると、ガイド付きのものや講座付きのもの、日帰りツアーや、外国人を対象としたツアーなど数十通りが用意されている。諏訪神社や孔子廟など、その場所の物語や歴史に触れながら町を歩いて回ることで、長崎の町により興味が持てそうだ。

また、2018年夏には、長崎電気軌道株式会社が、路面電車の停留所の名称を一部リニューアルし、名所・旧跡などを取り入れている。眼鏡橋や新地中華街など、県外から訪れた観光客にとって訪れたい場所がイメージでき、路面電車での移動がしやすくなっている。

市内には多くの観光地がある。町を歩きながら、商店街に立ち寄るのはどうだろうか市内には多くの観光地がある。町を歩きながら、商店街に立ち寄るのはどうだろうか

もう少しだけ足を運んで。まちなかの商店街を盛り上げたい

長崎市では、こうした町中の動きに賑わいの軸を作る取組みを行っている。

「市の中心部では、路線バスや電車を5~10分間隔で利用することができます。身近な交通手段とともに、市民には、坂道や小さな路地など、町を歩いて回る(さるく)という習慣があります。『長崎さるく』も、長崎の地形を生かした独自のやり方だと思っています。食文化の発信に取り組んでいる新大工から、眼鏡橋がかかる中島川、浜んまち、中華街、居留地があった大浦までに至る『まちなか軸』として整備しており、この軸に沿って移動することで、商店街と観光地を巡ることができるようになっています。観光客の皆様が、この軸を中心に行き来していただき、長崎のまちの魅力に触れていただけたらと思っています。

長崎の商店街についても、他都市と同じように、商店主の高齢化や後継者不足という課題があり、市では、新たにお店を出したい、創業したい、という方とのマッチングを図る取組みを行っています。昨年12月には『まちなか空き店舗ツアー』として、出店を希望される方々に、市内の5つの商店街の物件を実際に見ていただきました。今後も、観光客の方々も気軽に立ち寄っていただけるように、商店街が今後も続いていくための取組みを続けていきたいと思います」。

市民の日常生活に欠かせない「足」となっている路面電車市民の日常生活に欠かせない「足」となっている路面電車

2019年 03月10日 11時00分