木材の利用は地球環境の保全に貢献する
木材は非常に有用な建築資材だ。地球温暖化の原因となる大気中の二酸化炭素を固定するはたらきがあり、同じ大きさで比較すると、木造住宅は鉄骨プレハブ住宅の約4倍もの二酸化炭素を固定する。また、植林などを行うことで再生産が可能であるし、鉄骨などほかの資材に比べて比較的安価なところも魅力だ。
ところが木材は、住宅以外の建築物の構造材としてはあまり利用されてこなかった。たとえば木造の中規模以上の商業施設や工場を見る機会はあまりないはずだ。これは非常にもったいない状況といえる。
しかしながら、どんな木材でも利用すればいい、というわけではない。木材は樹種などによって強度が異なり、含水率などによって反りや割れが生じる割合も変化する。このような木材の品質、性能、大きさ、形状などの一定基準を定めているのがJAS規格(日本農林規格)制度だ。これは農林水産大臣が制定した基準を満たす商品にのみJASマークを付けることができる任意の制度。したがって、このマークがついている木材で建てられた建物は、より安心できるというわけだ。
このような背景から国は、非住宅分野の建築物などに対して「JAS構造材利用拡大事業」を行っている。その内容を紹介しよう。
国が定めている「JAS構造材」の基準とは
まず、木材におけるJAS規格の基準を説明する。同基準は次のようになっている。
●樹種
スギ、ヒノキ、カラマツなどの樹種を表示。
●等級(機械等級区分)
機械等級区分装置で強度(ヤング係数)を測定し、等級区分(E50~150)を表示。
(等級には目で確認する「目視等級区分」もあるが同事業では対象外)
●寸法
正確な寸法を計測して表示。
●乾燥
木材は乾燥するほど反りや割れが生じる可能性が減少する。そこでSD(かんな掛けした乾燥材)とD(鋸挽きしたままの乾燥材〈表面が未仕上〉)に分けて含水率計で計測し、15・20・25といった含水率を表示。
JASマークがついた木材は、以上のような表示によって品質・性能が明確に分かるようになっている。
「JAS構造材利用拡大事業」は2つの事業で構成
さて、今回紹介する「JAS構造材利用拡大事業」は、「JAS構造材活用宣言事業」と「JAS構造材個別実証支援事業」の2つの事業で構成されている。
「JAS構造材活用宣言事業」
工務店など木材を必要とする事業者を対象に、「JAS構造材活用拡大宣言(達成目標含む)」を募集(2019年3月末日まで)。宣言を行った事業者は、JAS構造材利用拡大事業の下記ホームページで公表されるので企業PRにもなる。
https://www.jas-kouzouzai.jp/sengen_list/
●宣言例
工務店:JAS構造材利用率アップ宣言
設計者:JAS構造材活用設計宣言
製材会社:JAS構造材増産宣言
「JAS構造材個別実証支援事業」
JAS構造材活用拡大宣言の登録事業者が、非住宅建築物の建築を他の建材からJAS構造材に切り替えて実証的に行う場合、JAS構造材の調達費の一部を支援する。
●助成対象のJAS構造材
機械等級区分の構造用製材、2×4工法構造用製材、CLT(直交集成板)
●支援額
「機械等級区分の構造用製材または2×4工法構造用製材」
①物件申請時に予定していた助成対象木材を使用する階ごとの床面積の合計(住宅部分を除く)に2,000円/m2を乗じた金額。
②助成対象木材を実際に使用した階ごとの床面積の合計(住宅部分を除く)に2,000円/m2を乗じた金額。
③助成対象木材の調達費(JAS構造材の材料費およびそれに係る加工費、運搬費)。
上記①②③の中でもっとも低い金額を助成(上限100万円)。
「CLT(直交集成板)」
①物件申請時に予定していた助成対象木材の材積量に15万円/m2を乗じた金額。
②実際に使用した助成対象木材の材積量に15万円/m2を乗じた金額。
③助成対象木材の調達費(JAS構造材の材料費およびそれに係る加工費、運搬費)。
上記①②③の中でもっとも低い金額を助成(上限1,500万円)。
●支援対象物件
具体的な支援対象の非住宅建築物は下記サイトで確認してほしい。
https://www.jas-kouzouzai.jp/_files/jigyou2/taishobukken.pdf
●実証の内容
申請書にはJAS構造材の使用予定量などを記載する必要がある。また、助成金の交付申請時には、JAS構造材の施工性や課題などの報告書(レポート)を提出する。
なお、「JAS構造材活用拡大宣言」の募集は2019年3月末日まで、「JAS構造材個別実証支援事業」の申請は2019年1月末日までとなっているが、その後も延長されることが決定している。
事業者にとっても一般ユーザーにとっても有用な事業
JAS規格は国が定めた規格。そのため樹種、寸法、等級などを指定すれば全国どこでも同等の品質の木材を入手することができる。これは工務店や設計者などの事業者にとってビジネスリスクを軽減し、顧客からの信頼を得ることにつながる。また、一般ユーザーにとってJAS構造材を使用しているか否かの確認ができることは、建物に対する安心材料になるはずだ。前述の地球環境のためにも今後より一層、このような事業が盛り上がることを期待したい。
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