女の子の憧れの存在、リカちゃん。その暮らしも憧れの対象に

初代リカちゃんハウス。現在のように住宅の一戸を模したものではなく、「リカちゃんのお部屋」を表現し、畳むとバッグ型になる形状だ初代リカちゃんハウス。現在のように住宅の一戸を模したものではなく、「リカちゃんのお部屋」を表現し、畳むとバッグ型になる形状だ

「リカちゃん人形」といえば、国民的人気を誇る着せ替え人形だ。1967年に株式会社タカラ(現・株式会社タカラトミー)から発売されて以来47年間、変わらず支持されている。

リカちゃんのプロフィールを簡単に紹介したい。名前は香山リカ、小学5年生の11歳。フランス人の父、日本人の母に、双子と三つ子の弟、妹の8人家族だ。その他にも、お友達などたくさんのキャラクターがいる。
こうした家族の人形を用いた「ごっこ遊び」を通して子どもたちはお母さんの疑似体験をし、家事や生活習慣を身に付けるといった教育効果があると言われている。衣食住に関する関連商品も多数展開されており、中でも1967年のリカちゃん登場と同時期から販売されているのが「リカちゃんハウス」だ。

「リカちゃんハウス」は、時代や流行に合わせて常に進化を続けている。時代や文化、流行を反映する「リカちゃんハウス」から、日本の住まいの変遷と「憧れの暮らし」の歴史を探ってみることにした。

時代とともに移り変わるリカちゃんの暮らし

各年代のリカちゃんハウスの特徴と時代背景を見てみたい。

1967年発売の初代リカちゃんハウスは「ドリームハウス」というその名の通り“女の子の夢がつまったハウス”をコンセプトに開発された。レースのカーテンにソファとテーブルの応接セットが付き、畳むとかわいらしいバッグ型になるハウスである。この時はまだ、家族が暮らす家というよりも、リカちゃんのお部屋を表現したもだった。

その後、1971年には「リカちゃんマンション」という一般的に当時憧れの対象だったマンションタイプに階段付きの屋上テラスもある贅沢なハウスが登場した。この時代のハウスには、ベッドやシャンデリアなど当時の様式の生活への憧れが反映されている。

次いでバブル期に突入する80年代は、マンションブームの継続を反映しつつも、少し様子が変わっている。今回お話を伺った株式会社タカラトミー ガールズ事業部リカちゃんグループの椎葉彰氏は、「この時代から、マンションの一戸分を平置きの形状で表現したハウスが登場し、2LDKから4LDKまでのマンションが展開されました。広いリビングやカウンターキッチンはこの頃から登場し、より家族を意識した“ごっこ遊び”ができるようになっています」と説明する。「ゆったりさん」というネーミングで1984年に発売されたこのシリーズは現在も様々な商品が開発される人気商品となっている。1985年、1994年発売のタイプの商品説明には「新築」との記載もあり、新築物件への憧れが表れていて興味深い。

1980年代から1990年代前半の「ゆったりさん」シリーズには、リビングの隣に和室が設けられているのも特徴的だ。客間や、子どもが遊んだり昼寝したりするスペースとして、リビングと続き間の和室を一部屋確保したいというファミリーの要望は現在も多いもの。そうしたリアルな“住まい観”もきちんと反映されていると感じた。

1990年代以降は、平置きの平面タイプの形状は変わらないものの背景に2階のイラストを描き一戸建てを表現したものも登場し、大画面テレビやウォシュレット付きのトイレなど、当時の最新設備を反映したものが続く。

主なリカちゃんハウスの移り変わりと、実際の住宅や暮らしのトレンド比較年表</br>1990年代~2000年代は、リカちゃんハウスのコンセプトは大きく変わらず、</br>主に関連商品や付属小物で当時のトレンドが反映されているようだ</br>※ここに記載以外にも、リカちゃんハウスは多数発売されている主なリカちゃんハウスの移り変わりと、実際の住宅や暮らしのトレンド比較年表
1990年代~2000年代は、リカちゃんハウスのコンセプトは大きく変わらず、
主に関連商品や付属小物で当時のトレンドが反映されているようだ
※ここに記載以外にも、リカちゃんハウスは多数発売されている

最新のリカちゃんハウスはスマートハウス!

では、最新のリカちゃんハウスはどんなものだろうか?なんと時代に反映してスマートハウスだという。2014年7月に発売したパナホーム株式会社とのコラボ商品「おしゃべりスマートハウスゆったりさん」を見てみた。

ハウス以外にもドーナツショップや回転寿司店など実在の企業とタイアップしたショップシリーズを展開しているが、ハウスメーカーとのコラボは初めてだという。その理由について椎葉氏は「これまで、外食企業などお子さん自身も普段から馴染みがある企業様とコラボしてきました。その点で、ハウスメーカーさんとのコラボは前例が無かったのですが、今回はスマートハウスということで環境配慮型の住宅、エコやソーラー発電など環境教育の観点でも意義があると考え、実現に至りました」と話す。

最新のリカちゃんハウスは太陽光で発電できるという設定となっており、HEMSモニタを模したスマートモニタ、エコバッグ、IHコンロなど、環境を配慮したトレンドのグッズがさりげなく配されている。また、ペットのインコが「水を出しっぱなしにしちゃだめよ」「冷蔵庫ちゃんと閉めてよね!」と喋ったりと、遊びの中でエコへの気付きや環境配慮の心が自然に育まれるような仕組みだ。

スマートモニタはスマホやタブレット端末をかざすことで、ARアプリと連動して発電量の画面を表示し、子どもがHEMSの疑似体験をしたり、太陽光発電を模したミニゲームもできる機能付きだ。椎葉氏が「環境教育の要素を取り入れつつ、あくまでも玩具なので勉強っぽくなりすぎないよう注意しました」と語る通り、遊びと教育をバランス良く配していると感じた点だった。エコの意識は近年急速に高まっているが、大人でも実際にHEMSモニタを触り、どんなものか知っている人ばかりではない。遊びを通して、子どもが楽しみながら自然に次世代の暮らし方や設備に慣れ親しむきっかけとして、こうした玩具への反映は意義があるものだと感じた。

(左上)最新のリカちゃんハウス「おしゃべりスマートハウス ゆったりさん」</br>(右上)キッチンにあるスマートモニタにタブレット端末をかざすと、ARアプリで発電のミニゲームで遊ぶことができる</br>(左下)女の子の人形遊びは、靴を脱いだところから始まるそう。そのため近年のリカちゃんハウスには、</br>玄関と靴箱がしっかりつくられているようだ</br>(右下)リカちゃんのお母さんが持つエコバッグ、IHコンロなどさりげなくエコのグッズが置かれている(左上)最新のリカちゃんハウス「おしゃべりスマートハウス ゆったりさん」
(右上)キッチンにあるスマートモニタにタブレット端末をかざすと、ARアプリで発電のミニゲームで遊ぶことができる
(左下)女の子の人形遊びは、靴を脱いだところから始まるそう。そのため近年のリカちゃんハウスには、
玄関と靴箱がしっかりつくられているようだ
(右下)リカちゃんのお母さんが持つエコバッグ、IHコンロなどさりげなくエコのグッズが置かれている

これからのリカちゃんハウス、日本の住まいはどうなる?

今回お話を伺った、株式会社タカラトミー ガールズ事業部 リカちゃんグループの椎葉彰氏今回お話を伺った、株式会社タカラトミー ガールズ事業部 リカちゃんグループの椎葉彰氏

このように、時代背景を反映しながら推移してきたリカちゃんハウス。今後の展望はどのようになっていくのだろうか?
「子どももわかる一般的な住まいのあり方や形状は普遍的なものなので、家電や生活まわりの設備などの面でトレンドを反映していくのではないでしょうか」と株式会社タカラトミーの椎葉彰氏は語る。確かに2000年代以降のリカちゃんハウスは、ドラム式洗濯機など最新設備が追加されるといった変化はあるが、家そのもののコンセプトは大きく変わっていない。そう考えると、この「スマートハウス」はリカちゃんハウスにとっても、実際の住宅事情にとっても大きな変化だ。

近年、トレンドなっている暮らし方をリカちゃんハウスに反映すると…と考えてみた。例えばリカちゃんがお友達と一緒に暮らす「シェアハウス」や(リカちゃんは11歳なので現実的ではないかもしれないが…)、壁紙のデザインが多数用意された「DIY」などをコンセプトにしたリカちゃんハウスが登場したらおもしろいかもしれない。

こうして振り返ってみると細部に時代が反映されている過去のリカちゃんハウスにはやはり懐かしさを覚える。現在では真新しいと感じる最新の「スマートハウス」も、それで遊ぶ世代が大人になる頃にはすっかり当たり前の物として定着し、現在では想像できないような設備が搭載されたリカちゃんハウスが発売されているかもしれない。暮らしの変化がどのように表れていくのか、大変興味深い。

2015年 04月27日 11時06分