都市のスポンジ化が多くの自治体で課題に

現在、各地で人口の減少や高齢化が進んでいる。特に地方都市では、郊外に住宅・店舗ができるなどして市街地が拡散し、市街地が薄く広がった状態となってきているところもある。この状態で人口減が進むと、医療・商業等の生活サービスや公共交通などの維持が難しくなり、地域経済の衰退にもつながる。そこで国が推進しようとしているのが、「コンパクト・プラス・ネットワーク」のまちづくり。都市機能をコンパクトに集約した生活拠点をつくり、それらを公共交通のネットワークで結び、効率のよい都市をつくろうというものだ。

コンパクト・プラス・ネットワークを進めるうえでの大きな障害となっているのが「都市のスポンジ化」。都市の中で空き地や空き家などの小規模な低利用・未利用の土地があちこちにランダムにできてしまう現象のことで、計画的な開発を阻害し、生活利便性の低下などの悪影響も及ぼす。

そこで2019年2月に国土交通省主催で、都市のスポンジ化に悩んでいる自治体やまちづくり団体を主な対象とした「都市のスポンジ化対策×賑わい空間創出」セミナーを開催。小規模な区画再編や賑わい創出に活用できる制度が紹介され、来場した自治体の担当者らは熱心に耳を傾けた。

コンパクト・プラス・ネットワークの特徴は、拠点を複数つくり、それらを公共のネットワークでつなぐこと。ただし強制的に移住などを進めるものではなく、ゆるやかに誘導していくというコンパクト・プラス・ネットワークの特徴は、拠点を複数つくり、それらを公共のネットワークでつなぐこと。ただし強制的に移住などを進めるものではなく、ゆるやかに誘導していくという

スポンジ化の穴を防ぐこと・埋めることに役立つ施策とは

国土交通省 都市局 都市計画課 課長補佐の山田大輔氏国土交通省 都市局 都市計画課 課長補佐の山田大輔氏

「都市のスポンジ化対策としては、大きく2つの方向があります」と話すのは、国土交通省 都市局 都市計画課 課長補佐の山田大輔氏。2つの方向とは、都市のスポンジ化により生じる穴を「防ぐ」ことと「埋める」ことだ。2018年7月に施行された「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律」は、穴を防ぐこと・埋めることに役立つ、8つの制度を包括した総合施策だという。

そのうち、山田氏の言う「穴を防ぐ」対策の主なものとしては、「立地誘導促進施設協定(コモンズ協定)」制度の創設がある。これは、地域に必要な身の回りの施設として地域住民が共同で管理する広場やコミュニティ施設をつくった際、それらが適正に管理されずになくなってしまうことがないように、地権者の間で協定を結び、適切に運用していくというもの。この場合に、一定の要件に基づき固定資産税の軽減措置を講じる他、市町村長が周辺地権者に参加を働きかけるよう、協定締結者が市町村長に要請できる仕組みを併せて措置している。住民だけの話し合いでは関係する地域の地権者全員に参加してもらうことが難しいという場合に、地域で進んでいる土地活用や賑わい創出の動きを支援することにつながる。

「穴を埋める」対策の主なものとしては、「低未利用土地権利設定等促進計画制度」の創設だ。これまで低・未利用地を活用しようとする際には、民間の建設会社などが地権者一人ひとりと交渉する必要があり、膨大な手間と時間がかかっていた。この制度を利用することで、行政が地権者と利用希望者とをコーディネートし、土地活用の計画に沿って一括して権利設定や登記を行うなど、より能動的に関われるようになる。行政がある程度のお膳立てをし、実際の建設や運用は民間に任せるという流れにすることで、スポンジ化対策のスピードアップを見込んでいるという。

これらの新設制度は、いずれもコンパクトなまちづくりを進めるためのマスタープランである「立地適正化計画」の区域内が対象となっている。

制度創設の参考事例

青森県八戸市、花小路の事例。私道だが公共性が高いことから、地域の地権者が協定を結び、通りを管理・維持することとなった(上)<br>山形県鶴岡市の事例。一軒一軒と交渉するよりも、先を見通した計画を立てることで、地権者・自治体ともに大きな効果を得られた(下)青森県八戸市、花小路の事例。私道だが公共性が高いことから、地域の地権者が協定を結び、通りを管理・維持することとなった(上)
山形県鶴岡市の事例。一軒一軒と交渉するよりも、先を見通した計画を立てることで、地権者・自治体ともに大きな効果を得られた(下)

「立地誘導促進施設協定」の制度創設にあたり、参考にした事例として紹介されたのが、青森県八戸市の花小路という通路。大部分が民有地だが、長年公共的な通路として提供されていた。
周辺には集客力のある施設が集まっているうえ、花小路につながる形で新しい施設もオープン。周辺地域の賑わい創出と快適な空間を維持するため、「花小路周辺地区まちづくり協議会」が花小路周辺地区まちづくり計画を策定。市と協議会で花小路を公共用通路として活用することを定め、協議会で管理を行うことになった。

「低未利用土地権利設定等促進計画制度」の参考事例は、山形県鶴岡市とNPOつるおかランド・バンクが連携して行った事業。複数の地権者の希望が絡む複雑な区画再編を、市の計画に沿ってランドバンクが推進。空き地を解消したい市にとっても、従前の土地に不満を抱えていた地権者にとっても望ましい結果となった。このような連鎖的な区画再編は、地権者一人ひとりと調整していたのでは思うように進まない。地権者の意向を踏まえながら、適正な土地利用に向けて総合的に調整を図るコーディネーターがいてこそ実現したものと言える。

似た問題を抱えている自治体にとっては、いずれも新制度活用のヒントとなる事例だろう。

「誘導施設整備区」を定めることで計画通りの区画整理を

現位置での換地、任意の集約換地にはそれぞれに問題がある。新設の「誘導施設整備区」を利用しての換地は、それらの問題点をクリアできる新たな区画再編手法だ現位置での換地、任意の集約換地にはそれぞれに問題がある。新設の「誘導施設整備区」を利用しての換地は、それらの問題点をクリアできる新たな区画再編手法だ

今回のセミナーで大きく取り上げられたのは、新たな区画整理の手法となる「空間再編賑わい創出事業」だ。

これまでの「土地区画整理事業」は、土地の権利関係を交換する「換地」手法を使って宅地整備や公共用地をつくり出していた。
換地は「照応の原則」に則って行うことと土地区画整理法に定められており、換地後の土地が従前の土地よりも悪い土地になってしまわないよう、諸条件が同じになるように定める必要がある。このため、通常の換地をする際には、同じ位置で敷地の整形化のみを行うことが多く、結局小規模な空き地等が点在する状況は変わらないケースがあった。
一方、「集約換地」という手法は、バラバラに存在している土地を、一定の区域に集約してまとまった土地をつくり出すもので、関係する権利者全員の合意があれば照応の原則の例外となり、場所を移転することが可能だ。こちらのほうが土地の活用はしやすいが、反対する地権者がいた場合や所有者不明の土地があった場合、計画通りに集約が行えないという問題があった。

このような場合、今回新設された集約換地の特例制度「誘導施設整備区」を利用することが有効だ。この制度を利用した事業が通称「空間再編賑わい創出事業」と呼ばれるものになる。

「空間再編賑わい創出事業」で中心的施設の建設を後押し

空間再編賑わい創出事業のイメージ図。集約した土地には地域の顔となる誘導施設をつくることで、周辺の通行量が増加し、周辺に残る空き地等へと影響が伝播する可能性もある空間再編賑わい創出事業のイメージ図。集約した土地には地域の顔となる誘導施設をつくることで、周辺の通行量が増加し、周辺に残る空き地等へと影響が伝播する可能性もある

「誘導施設整備区」は、公共性の高い施設をつくるべきであると定められた区域のことで、エリア内で換地を行う際、法に基づいてその区域内に空き地等を集約することができる。法の後ろ盾があるため、一部地権者の合意が得られず土地がまとまらないということを予防でき、土地の有効利用がしやすくなるうえ、新たに建設された施設によって、近隣地域に賑わいが生まれることも期待できる。この制度の活用により、これまで滞っていたまちづくりが動き出す可能性もありそうだ。

また、「空間再編賑わい創出事業」は社会資本整備総合交付金や都市開発資金貸付金による支援対象にも追加されている。計画的な集約換地と賑わい創出、交付金などによる充実した支援など、行政・地権者の双方にメリットがある制度となっているのだ。

「空間再編賑わい創出事業」をはじめ、今回新設された制度は、主に自治体などが小回りの利く柔軟なスポンジ化対策が行えるよう創設されたもの。うまく使えば、各自治体がコンパクトシティ化を進めていくうえでも効果的な施策と言えそうだ。
自治体だけでなく地権者にとっても、効果的なまちづくりによって賑わいが生まれ、エリアの価値が向上することは喜ばしい。今回新設された制度の中には、地権者が主体的に進められるものもあるので、低・未利用地の活用に困っている方は、国土交通省が配布しているガイドラインなどを参照し、よりよい土地活用を検討してみてはいかがだろうか。

2019年 03月30日 11時00分