「住宅ローン控除」の要件を把握して最適化しよう

転勤、引っ越し、借換えの場合など、特例が適用される条件を確認しよう転勤、引っ越し、借換えの場合など、特例が適用される条件を確認しよう

「住宅購入をする前に知っておきたいこと(前編)」では、「住宅ローン控除」の仕組みや主な要件、中古住宅の場合の注意点等について紹介した。さらにメリットを確認するには、所得税や住民税の額を把握することが必要であることも述べたが、ご自身の還付税額はいくらであっただろうか。後編では、以下の3つのありそうな例について特例適用の条件等を確認しておこう。

(1)夫婦共働きで購入する場合
(2)転勤になった場合
(3)住宅ローンを借り換えた場合

(1)共働きの場合

これまでお伝えしてきたとおり、「住宅ローン控除」は、年末の住宅ローン借入残高の最大1%が所得税や住民税から還付される特例である。近頃の高止まりする住宅価格水準では、夫婦共働きを前提とせざるを得ない状況だ。夫婦で住宅を購入し、夫婦で住宅ローンを借入れし、夫婦ともに所得税を納めていれば、一定の要件のもと夫婦ともに住宅ローン控除の対象となる。共有名義や連帯債務を検討する際、互いの税額を意識して持ち分を検討すれば、「住宅ローン控除」を効果的に利用することができる。

例えば、共働きで所得税を夫22万円、妻13万円を納めている夫婦が、4,000万円の住宅ローンを借入れて新築マンションを購入したとしよう。4,000万円全額を夫名義で借入れると、住宅ローン控除の対象は夫のみとなる。12月末の借入残高が3,900万円あれば、その1%である39万円が初年度の控除上限額だ。ところが、夫の所得税は20万円。住民税の控除分(※)を合わせても、控除対象額39万円の全額について還付を受けることはできない。「もったいない」が発生する。

住宅ローンを夫婦で分担するとどうだろう。4,000万円の借入れのうち、夫2,500万円、妻1,500万円と夫婦で借入れれば、夫の所得税22万円と妻の所得税13万円は全額還付され、住民税の還付額を含めると、除対象額の全額39万円の還付を受けることも不可能ではない。夫婦で借入れることで「もったいない」を解消し、個々の税額を考慮して分担することで効果的に還付を受けることができるのだ。

留意点もある。住宅ローンの年末残高は返済が進むにつれて減額する。初年度の控除対象額は39万円だが、年々減少していく。また、産休、育休、介護休暇等で収入が減ったり、退職によって収入が無くなったりした場合、妻から夫へあるいは夫から妻へと控除枠を振替えることはできない。住宅購入時のライフプランニング、キャリアプランニングがポイントとなる。
※住民税からの控除額の上限:136,500円または97,500円

(2)転勤になった場合

やっとマイホームを手に入れた矢先に転勤を命じられた…。そんな場合も一定の要件のもと「住宅ローン控除」の適用を受けられるやっとマイホームを手に入れた矢先に転勤を命じられた…。そんな場合も一定の要件のもと「住宅ローン控除」の適用を受けられる

「住宅ローン控除」の要件の一つに入居要件がある。「住宅ローン控除」の適用には、個人が住宅ローン等を利用して居住用家屋を新築または取得し、その日から6ヶ月以内に入居し、かつ、その年の12月31日まで引き続き居住していることが必要だ。所有者で住宅ローンの契約者である本人が、転勤等のやむを得ない事情により、その住宅の取得等の日から6ヶ月以内に入居できない場合や年末まで引き続き居住することができない場合であっても、一定の要件のもと「住宅ローン控除」の適用を受けられる。適用対象となる3つのケースをみてみよう。

1.単身赴任の場合
住宅の所有者が、転勤、転地療養その他のやむを得ない事情により、配偶者、扶養親族、その他生計を一つにする親族と日常生活を共にしない場合において、その住宅の取得等の日から6ヶ月以内にその家屋にこれらの親族が入居し、その後も引き続き居住し、当該やむを得ない事情が解消した後はその家屋の所有者が共にその家屋に居住することと認められるとき。

2.家族とともに引越しする場合
「住宅ローン控除」の適用を受けていた人が家族と共に転勤し、再びその住宅に戻って来た場合はどうであろうか。居住していない期間は「住宅ローン控除」の適用はないが、要件を満たせば
その住宅に再び居住した年(その年において、住宅を賃貸していた場合は、その年の翌年)以後、「住宅ローン控除」対象期間の残りにおいて再適用を受けることができる。購入して2年目に転勤、3年後に戻ってきたとすると適用期間の残り5年間において「住宅ローン控除」の適用があるということだ。

3.住宅を購入して入居後、年末を待たずに引越しする場合
「マイホームを買うと転勤になる」、そのような実しやかな都市伝説がある職場が未だにあるかもしれない。できれば避けたい事例だが、そのようなケースはどうであろうか。住宅を購入して入居したが、その年の12月31日を待たずに転勤となり、家族全員で引越しをした、というパターンも当該住宅に再び居住すれば、一定の要件のもと、残りの控除対象期間において「住宅ローン控除」の適用が受けられる。


◎要件と手続きを要確認
上記3つのパターンには、それぞれの要件があり手続きが必要だ。例えば、「勤務先からの転任の命令その他これに準ずるやむを得ない事由があること」、「当初、住宅の取得の日から6ヶ月以内にその者の居住の用に供していること」、「家屋を居住の用に供しなくなる日までに、所轄税務署長へ届出書を提出すること」などだ。さらに、再び入居し「住宅ローン控除」の適用を受ける際にも確定申告書に必要書類を添付して所轄税務署長へ提出しなければならない。また、海外へ単身赴任する場合は、国内に納税管理人を定め、その納税管理人を通じて翌年に確定申告を行うこととなっている。

やむを得ない転勤など自宅に居住できなくなる場合は、単身赴任の場合も含めて、確実に手続きを行い、自宅に戻ってくる日に備えたい。なお、いずれの場合も「住宅ローン控除」の適用期間が停止したり延長されたりすることはない。

【参照】国税庁「タックスアンサー」
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1234.htm

(3)住宅ローンを借り換えた場合

現在の住宅ローン金利は史上最低水準である。住宅ローンの借換えを検討されている方も多いであろう。もし、住宅ローンを返済中で借換え試算を未体験の方がいれば、試算をおすすめする。変動金利で返済中であっても借入れた時期によって大きく支払利息を軽減できる、今はそのような時代だ。住宅ローンの借換えは、返済中の住宅ローンをより低金利のものに借り替えて総返済額を減額する目的であることが多い。

「住宅ローン控除」の対象となる住宅ローンには、「住宅の新築、取得又は増改築等のために直接必要な借入金又は債務であること」という要件がある。借換えによる新しい住宅ローンは、従前の住宅ローンを消滅させるための新たな借入金であって、住宅を取得するための借入れではない。厳密に言えば、「住宅ローン控除」の対象とはならない。だが、この場合であっても、一定の要件のもと、借り換え後の借入金について引き続き住宅借入金等特別控除を受けられる。要件は次の通り、すべての要件を満たす必要がある。なお、借換えによって適用期間がリセットされたり、延長されたりすることはない。居住の用に供した年から一定期間(居住年が平成21年1月1日以降の場合は一律10年間)となる。

【要件】
・新しい住宅ローン等が当初の住宅ローン等の返済のためのものであることが明らかであること。
・新しい住宅ローン等が10年以上の償還期間であることなど「住宅ローン控除」の要件に当てはまること。

住宅ローンプランニングは「借り過ぎない」こと

住宅ローンは借金である。どのように返済していくか、という返済計画も大切だが、先ずは「借り過ぎない」ことが大前提である。住宅ローン控除の恩恵をめいっぱい受けることを目的に借り過ぎないようにしたい。返済期間が35年であれば、住宅ローン控除の適用期間はそのうち10年間。控除修了後も25年にわたって返済が継続する。長期視点の家計管理が重要であることは言うまでもない。我が家に適した長期返済計画を前提に「住宅ローン控除」を最適化しよう。

控除適用期間後の返済期間が長期に渡る人も多いだろう。「借り過ぎない」ことを大前提に返済計画を立てたい控除適用期間後の返済期間が長期に渡る人も多いだろう。「借り過ぎない」ことを大前提に返済計画を立てたい

2017年 05月01日 11時05分