建設業で活躍する女性「けんせつ小町」

鉄筋工、墨出し工、左官工、電気工などさまざまな技術を持つ「けんせつ小町」が集う浦和の現場で行われた「けんせつ小町活躍現場見学会」鉄筋工、墨出し工、左官工、電気工などさまざまな技術を持つ「けんせつ小町」が集う浦和の現場で行われた「けんせつ小町活躍現場見学会」

「建設現場はガテン系、基本的には男性が従事する場所」現場にまつわる認識としてはそれが一般的だ。確かに数字でみてもその傾向は顕著である。日本における女性の就業者数は2,700万人を超えていると言われているが、建設業界で働く女性は約75万人。全体の3%にも満たない数字だ(※数字は総務省「労働力調査2014」の調査結果)。

しかし、そんな現状を打破しようと「女性が活躍できる建設業」を目指した官民あげての取り組みが進んでいる。「一般社団法人 日本建設業連合会(日建連)」では、2015年に建設業で活躍する女性の愛称として「けんせつ小町」を掲げ、女性活躍を推進する活動を行っている。
同時に日建連が昨年から開催しているのが、女子小中学生を対象とした「けんせつ小町活躍現場見学会」だ。未来を担う子どもたちに、女性でも建設というものづくりの現場で活躍の機会があることを知ってもらおうというもの。今年も夏休みに入ってさまざまな現場で見学会が行われた。

いま、建設現場ではどのように女性が活躍しているのか。「けんせつ小町活躍現場見学会」の取材を通してご紹介しよう。

現場監督5人全員が女性の強力チーム

協力会社に混じっての全体朝礼協力会社に混じっての全体朝礼

2016年7月29日、浦和に新築される地上7階建マンション「ブランシエラ浦和駒場」の工事現場で女子小中学生向けの「けんせつ小町活躍現場見学会」が行われた。ここは特に女性が活躍する現場で、所長をはじめ5人の現場監督全てが女性。また90人ほどいる専門工事の技術者のうち16名が女性という「女子力」の高いチームである。

集まった子どもたちは14名(2名ほど参加者の兄弟で男児も参加)。女性活躍の現場を見てもらうと同時に、普段はフェンスの向こうで隠れてしまっている建設現場の作業を体感してもらうのも狙いの一つだという。

まず子どもたちが体験するのは「全体朝礼」。一瞬、形式的な朝礼をなぜ見学プログラムの中に入れたのだろうと思ってしまったが、建設現場における朝礼は重要。その日参加する職人全員が参加し、仕事を請け負う協力会社ごとに作業内容の確認と注意点を確認しあう。
どんな仕事があるのかなんとなく分かるし、なによりも職人さんたちの大きな点呼の声に迫力も感じる。子どもたちも列をつくって代表者が即興の挨拶で拍手をもらった。現場の一員として認めてもらえたような雰囲気でのスタートだ。

続々と体験するプロの技

次のプログラムは、クレーン車での梁鉄筋の吊り上げ作業。もちろん子どもたちがクレーンを操作するわけではないが、クレーンで吊り上げられた巨大な鉄筋が、目の前で空を移動する姿は圧巻。鉄筋がクレーンで吊り上げられている間中、子どもたちは頭上注意を喚起するためホイッスルを吹き鳴らす。これも普段現場で行われている安全管理作業の体験だ。
一方、子どもたちの夏休みの自由研究の課題にも役立ちそうなのが「左官塗装体験」だ。正方形の木枠に左官材を流し込み、コテで形を整えるのが第一段階。次に自分の手形をとって周りを貝殻やビー玉などで飾りをつける。見学会用に普段より少しやわらかめの材料を用意したそうだが、特に小学生低学年の参加者にはなかなか均一に塗るのが難しそう。下から上に塗るコツをけんせつ小町に教わりながら真剣にコテ捌きを研究していた。40分程度で固まるタイプの左官材を利用しているため、見学会が終わる頃には持って帰れるのだとか。

現場監督を務め、「けんせつ小町活躍現場見学会」の企画にも携わっている(株)長谷工コーポレーションの岩﨑夕佳氏によれば「実際に手を動かして感じてもらい、思い出に残してもらいたい」と組み入れたのだという。

さらに普段できない経験といえば、「工事用エレベーターの乗車体験」。ゴンドラのようなエレベーターは当然足元が透けて見えるのだが、これで5階まで上がって建設途中の建物を見る。5階といえばかなりの高さ。正直高所恐怖症の筆者はなるべく端に立たないようにしていたが、子供たちはへっちゃら。一種のアトラクション気分といったところだろうか。

エレベーターに乗りながら各階の様子も見られるのも面白い。マンションは1階から上階にかけてつくるので、階ごとに作業段階が見える。1階ではすでに内装にまでかかっているが、5階になるとまだ梁を組んでいる段階。参加者の小学校3年生の女子はこのエレベーターの乗車体験が一番印象深く「自分も住んでいるマンションの中身がこういう風になっていて、たくさんの人が仕事をしているのにびっくりした」と答えていた。

けんせつ小町と一緒に「左官体験」。このあと手形のパネルは見学会の記念に持ち帰ったけんせつ小町と一緒に「左官体験」。このあと手形のパネルは見学会の記念に持ち帰った

父の背中を見て、この世界に飛び込んだ「けんせつ小町」も

鉄筋の結束作業を体験した子どもたち。けんせつ小町のプロの技にびっくり鉄筋の結束作業を体験した子どもたち。けんせつ小町のプロの技にびっくり

そして最後に経験するのが「鉄筋の結束体験」。鉄筋を組み立てるために鉄筋同士を結束する作業なのだが、これがとても熟練の技が必要だ。子どもたちが試行錯誤している横で、けんせつ小町は驚く速さで工具を扱って組み立てていく。あまりのスピードに思わず子どもたちから拍手が起こっていた。

見学後は、現場監督5名、職人10名のけんせつ小町が会して、子どもたちに自分の仕事内容とやりがい、そしてこの道に入ったきっかけなどを話す場面もあった。ある職人さんは「お父さんの背中を見て」この世界に飛び込んだ経験を話し、子ども側からも「女の人でもこんなに大きなものをつくれる、たくさんの人が一緒に頑張っている姿に感動」といった感想が交わされていた。

前出の岩﨑氏は「職人が一体となってみんなでつくっている。それがこの仕事の醍醐味であり、それが少しでも伝わってくれたら」と話す。

工事現場にも女性トイレや更衣室が普及中

見学会には保護者も参加をしていたのだが、最後の場面では同行した保護者から「子育てをしながらも働ける環境なのか」といった質問も飛び出していた。

確かに子育て中の環境としては、拘束時間の長い工事現場では家族やパートナーの協力が必要だが、仕事仲間における理解も得やすくなっているという。

現在では女性用のトイレや更衣室の整備も進んでいるという建設の現場。総合所長を務める(株)長谷工コーポレーション 早坂淳子氏は「入社した頃と比べれば隔世の感がある。工事現場は明るくなり、女性にも対応しやすい配慮がなされるようになってきた」と説明した。

国の方針やトップダウンだけで無理やり女性の労働力を組み込もうとしてもなかなか上手くいくものではない。かえって反発を募らせるものでもある。しかし、今回けんせつ小町のお話しを聞くと「ものづくり」にやりがいを感じ、自分の技術にプライドを持っている。そうした思いを持っている人が男女の縛りがなく働ける世界ではあるべきだ。

けんせつ小町の存在は、その道を開くものであり、これからの子どもたちにとって将来への選択肢を増やす存在になっているのだろう。

「ブランシエラ浦和駒場」で開催された「けんせつ小町活躍現場見学会」「ブランシエラ浦和駒場」で開催された「けんせつ小町活躍現場見学会」

2016年 09月01日 11時05分