フローからストックへ~中古住宅流通活性への流れ

国の調査によると、日本の全住宅流通量に占める中古住宅流通シェアは約13.5%(2008年)であり、欧米諸国と比べると1/6程度と低い水準にあるという。ただし、中古住宅流通シェアのウェイトは徐々に大きくなりつつある。

「フローからストックへ」…国土交通省は2013年6月に「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を策定。2013年9月からは中古住宅流通に携わる民間事業者等のいわゆる実務サイドと金融機関などの金融サイドが、自由で率直な意見交換を通じて、中古住宅市場の活性化や拡大に向けた基本的方向や取組課題を共有することを目的とした「中古住宅市場活性化ラウンドテーブル」も始まった。
「スクラップ&ビルド型」と言われ続けていた日本の住宅市場で、消費者が安心して中古住宅を購入できるような環境づくりへの取り組みがようやく動き出したといえる状況だ。

今後、中古住宅の流通量が増加することを考えると、不動産仲介業の果たす役割はさらに重要になる。しかし、不動産業界の実態は、まだまだ国の取り組み等に対して、冷ややかに見ている側面もあるようである。将来に向けて、私たち消費者が中古物件を売買する際、今よりも安心して取引ができる状況はいつになるのだろうか?

そんな中、いち早く中古住宅流通の課題に向き合い、売主・買主の立場にたち、ユニークなサービスを手掛ける会社がある。札幌に本社のある副都心住宅販売株式会社(以下、副都心住宅販売)である。
今回、同社の代表取締役である佐藤 直樹氏にそのサービスの内容と中古住宅の流通、不動産仲介業への想いを伺うことができた。

“はっとした”ユーザーのアンケート結果

副都心住宅販売株式会社 代表取締役社長 佐藤 直樹氏副都心住宅販売株式会社 代表取締役社長 佐藤 直樹氏

副都心住宅販売は1989年より不動産の売買・賃貸の仲介及び管理などを行っている。当初より「顧客主義」を掲げてきたが、佐藤氏は“本質的な意味での不動産流通業の存在意義を感じていなかった”と振り返る。

「当初は”普通通りに売主と買主の仲をとりもつだけの不動産流通業”でした。見えないところは、見えないまま…取引をした住宅に何かあったとしても“古いからしょうがない”くらいにしか思っていなかった。物件の査定にはこだわっていたつもりはあったものの、見えない部分も含めた住宅の機能について本来の建物の価値を反映した適正な価格には、まだまだ無知だったと思います。十数年くらい前に国の既存住宅流通活性化事業の政策から"これからはフローからストックの時代になる"と感じ、今の我々は“良質な中古住宅の流通”ができていない、と感じたのです」。

それと同じく、佐藤氏に大きな示唆を与えたユーザーアンケート調査があった。
リクルート住宅総研(※現 リクルート住まい研究所)が2008年に報告書として出した『既存住宅流通活性化プロジェクト 既存住宅再考』にある調査データ「(中古住宅の)検討時に困ったこと、分からなかったこと」である。
その上位項目には「価格が適正かどうか」(47%)「物件に隠れた不具合や欠陥があるのではないか」(44%)「不具合、欠陥が発見された場合の保証がどうなっているのか」(30%)「住宅の構造(耐震性、耐火性など)が安全かどうか」(30%)などがあがっていた。

「そのアンケートを見て、大きな買い物である住宅を購入するのに中古住宅の場合、基本的な安心が得られていないんだ、ということに気が付きました。私たちは業界にいて、提供する側でありながら、消費者に向いて声を聞いていなかった…と切実に感じました。消費者の目線にたたない業界は先がない、変えていかなければならないと思ったんです。」

プロとして「お住みつき(=お墨付き)」の仕組みを提供する

副都心住宅販売は、『建物診断事例集』や『建物診断とは?』『お住みつきリーフレット』などでわかりやすくサービスを紹介している副都心住宅販売は、『建物診断事例集』や『建物診断とは?』『お住みつきリーフレット』などでわかりやすくサービスを紹介している

制度や業界の変革を待っていても始まらない、と佐藤氏は思ったという。
「そこで、最初に始めたのは2004年からの“住まいの生涯めんて”でした。まずは取引きのあったお客様に対して、売りっぱなしの状況をなんとかしたかった。年に一回、売った物件に対して建物や設備のメンテナンスや無償修繕などを実施しました。消費者の目線に立つために、売りっぱなしでなくお客様との関係を持続したい、自分たちの意識を変えることから始めなくてはなりませんでした。最初は、ほとんどビジネスにはならないです。これは、お客様へのサービスのひとつなんだ、と考えていました。今では、年間で4,000件を担当しており、グループ会社のリフォームにつながる案件も出てきています。」

「本当は、適正価格を査定できる仕組みをできるだけ早くつくりたかったんです。ただ、わたしたちにも知識が足りないと感じていました。不動産会社は建物査定をする割には、住宅や建築に対する知識について勉強不足なんですよ。なので、物件査定の前に建物診断を必ず入れて、その際に必ず営業担当を同席させるようにしています。建物がどうなっているのかを床下にもぐらせて、診断士と共に自分の目で確かめさせるんです。建物診断をしないと物件査定もできない、適正価格も提示できない。そんな努力をしながら、ようやくユーザーが安心して中古住宅を売り買いできる仕組みを独自でつくれるようになりました。」

それが、2014年からはじめた、住まいまるごと安心保証「お住みつき」というサービスである。安心保証の内容は、

①みんなの安心基準
建物診断をはじめ、誰にでも住宅品質がわかる基準。住宅品確法と建築基準法をベースとした「住まいカルテ」を発行して、項目をクリアした住まいだけを「お住みつき」と表示している。
②住宅かし保険
日本住宅保証検査機構の「かし保険」により、引き渡し後の5年間にわたって建物の瑕疵を最大1,000万円まで補償する(※マンションは対象外)。
③もしもの設備救済
お引き渡し後90日以内に発生した設備の不具合・故障を救済。
④長持ちプラン
建物と付帯設備の長期にわたる最適な修繕計画を提示。
⑤住まいの生涯めんて
年1回、建物や設備のメンテナンス、無償修繕などを実施。

となっており、その5つを備えた物件を「ファイブスター」物件としている。

変わる「不動産仲介業の役割」と
変わらなければいけない「消費者の意識」

不動産取引の仲介業は、大きく3つに区分される。
1) 当事者から相談を受けて、物件の仲介を依頼されるまでの業務
2) 依頼されてから相手先を見つけるまでの業務
3) 相手先を見つけて、売買契約を行い決済と引き渡しを行う業務
である。

今までの不動産仲介業が、建物の品質に関心をあまり払わず築年数のみで査定をしていたり、できるだけ手早く契約・引き渡しを行う売買時のみの顧客との関係だったのに対し、副都心住宅販売は
1)の物件の仲介を依頼される際、建物の品質に関心を払い、品質が分かる基準
を付加価値としてつけ、さらに
4) 引き渡し後もメンテナンスやリフォームを通じて、顧客との関係を継続的にはかる
ことを独自で取り入れている。

建物診断の際、品質上リフォームが必要なところがあれば、売主ではなく買主が購入代金とともに必要なローンを組む。こうすることで、今後住む買主側は望みに沿ったリフォームができ、売主側の負担は減る。「どうしたら、売主・買主双方に喜んでもらえるかを考えた結果のしくみです」と佐藤氏は語る。

今後も中古住宅流通が増えていく中、私たち消費者の「大切に住んでいる家を適正価格で売りたい」と願う売主と「安心して住める良い家を買いたい」という想いに向き合い、マッチングをしていくことが今後の不動産仲介業には求められる。

消費者のニーズは業界を変えていく。
さまざまな取り組みによって、既存住宅の価値が再考され、中古住宅の流通の活性化が徐々に進んでいくことで、不動産仲介業はこれから変革を求められるであろう。だが、私たちが"賢い消費者"でなければ、このような消費者目線のサービスは拡がっていかない。

私たち自身が、住宅の築年や見かけに騙されず、建物自体の品質に関心を払い、質の良い住宅を選ぶ知識や意識を持つこと、そしてそういった住宅にメンテナンスを入れながら大切に住み、住み継がれる仕組みをもつことが、本当の意味で日本の住宅の質を上げていくことにつながるのだと思う。

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2015年 02月10日 11時13分