アベノミクスによって経済回復への期待が高まった2013年

2012年12月の総選挙は自民党の圧勝に終わり、その翌日から円安、株高の流れが始まった。12月26日に発足した安倍政権は景気回復への国民の期待を背負い、いわゆる「アベノミクス」によって景況感の改善も進んだ。2013年の始まりとともに、不動産を取巻く環境も大きく変わり始めたといえるだろう。

公共事業の増加や東日本大震災に伴う復興需要の本格化に加え、消費税増税を控えた全国的な住宅着工の伸びもあり、建設関連の人手不足が顕在化している。人件費の大幅なアップは、これからの住宅価格に少なからず影響を及ぼすことだろう。輸入建材だけでなく、国産木材、棒鋼やH型鋼など、さまざまな住宅用建築資材の値上がりも続き、建築コストの上昇は大きな懸念材料となっている。

さらに、大都市圏を中心に地価が上昇し、私募ファンドや海外投資家による国内不動産の取引も活発化している。2013年は前年比2倍を超える規模に達しているとの観測もあり、今後の動向が注目されるところだ。

住宅・不動産を取り巻く環境は大きく変わりつつある住宅・不動産を取り巻く環境は大きく変わりつつある

大都市圏では地価上昇のトレンドが定着した

2008年9月のリーマン・ショックをきっかけとして世界的な経済危機に陥り、日本の地価は長らく下落傾向が続いていた。それがようやく下げ止まりを見せ、上昇傾向への転換が鮮明になってきたのも2013年だ。1月1日時点の公示地価は、三大都市圏の平均で商業地が0.5%の下落、住宅地が0.6%の下落となっていた。しかし、7月1日時点の基準地価では商業地が5年ぶりの上昇(0.6%)となったほか、住宅地は0.1%の下落にとどまった。個別にみれば地価の上昇地点が大きく広がっている。

さらに国土交通省が3ケ月ごとに発表している「地価LOOKレポート」では、10月1日の時点で全国の調査対象150地区のうち71.3%にあたる107地区が上昇だった。一部には2011年から既に上昇へ転じていた地区もあるが、2013年は上昇トレンドが定着してきたといえるだろう。

消費税増税よりも今後の住宅価格に大きな影響を及ぼすと考えられる地価の動きだが、9月8日(日本時間)に開催が決定した「2020年東京五輪」が今後の地価にどのような変化をもたらすのだろうか。2013年の現時点では、まだ顕著な影響は表われていないようだ。

消費税増税による住宅の駆け込み需要はあったのか?

2014年4月の消費税率アップが正式に決定したのは2013年10月1日だが、それ以前から既定路線になっていたといえるだろう。1月に固まった2013年度の税制改正では、増税に伴う住宅ローン控除の拡充が早々と決定された。さらに中低所得者の負担を緩和するため、6月26日に「すまい給付金」の導入が与党合意され、8月初めには国土交通省による「事業者・消費者向け説明会」も始まった。

これらの政策によって消費税増税による負担増が緩和され、増税後に住宅を購入したほうが負担は少なくなるケースもある。そのため、駆け込み需要を抑えるための一定の効果はあったようだ。しかし、住宅の売却代金で買換える場合や富裕層など、現金購入者にとっては住宅ローン控除拡充のメリットがないほか、土地を所有していて建築費用だけを借りる場合、あるいは土地価格の安い地方都市などで住宅を購入する場合も住宅ローン控除の拡充はあまり意味を持たない。さらに、投資物件を取得する場合、あるいは2015年からの相続税強化を見据えて賃貸資産を取得する場合なども同様である。

したがって、大都市圏の住宅ローン利用者層について考えれば「駆け込み需要はそれほどなかった」といえるであろうし、地方圏の住宅や、自己の居住用以外の不動産に目を向ければ「駆け込み需要があった」といえるだろう。増税後の引渡しとなっても旧税率が適用される特例は9月30日まで実施され、住宅着工も大きな伸びを見せたが、全体的に見れば1997年の増税時のような規模の駆け込み需要にはならなかったようだ。

住宅ローン金利は上昇のち下落、結果的には超低金利水準が続く

4月4日に日銀が導入を決定した「量的・質的金融緩和」は「異次元緩和」とも呼ばれたが、国債市場の不安定化を招き、緩和の意図とは逆に利回り上昇につながった。その流れを受けて住宅ローンの金利は5月から7月まで上昇が続き、さらなる先高感も強まった。そのため、住宅購入・建築を急ごうとモデルルームや住宅展示場を訪れる人が増えたり、住宅ローンの借換えのために専門家による相談を受ける人が増えたりした様子が、テレビのニュースなどでも繰返し紹介されていたものだ。

しかし、8月には金利の上昇傾向がいったん止まった。8月半ばに一部の都市銀行が異例の月中引下げを実施したのに始まり、11月までは毎月、小幅な引下げまたは据置きといった状況が続いた。12月には一部で引上げもあったが、住宅金融支援機構による「フラット35」の12月の金利は過去最低水準に並んでいる。金融緩和の影響が年の後半になって表れてきたのだろう。

依然として金融機関による超低金利住宅ローンの貸出し競争が続いている一方で、商品内容の多様化が進んだのも2013年の特色だ。金利だけで勝負するのは限界に近付いているともいわれ、低金利以外の付加価値で顧客を誘引しようとする動きがみられる。金融機関同士の横並びが崩れ、それぞれの比較が難しくなっているため、これから住宅ローンを選ぼうとする消費者は十分な注意が欠かせない。

中古住宅の取引が活発になった2013年は制度の改善も進んだ

2013年の動きとして中古住宅市場の活況も挙げられるだろう。東日本不動産流通機構によれば、首都圏における中古マンションの成約価格は2013年1月から10月まで10ケ月連続で前年同月を上回り、成約件数も1月と7月が1ケタ増だったのを除き、それ以外は2ケタの大幅な増加が続いている。中古一戸建て住宅は前年をやや下回った月があるものの、おおむね増加・上昇傾向が続いていることに変わりはない。

中古住宅流通市場を活性化させるための取組みは以前から行われていたが、中古住宅取引における建物の検査や保証に関する制度が整えられつつあることも大きいだろう。6月には国土交通省によって「既存住宅インスペクション・ガイドライン」が策定されたほか、中古住宅流通大手による独自の保証制度も2012年10月の東急リバブルを皮切りに、2013年前半には大半の大手が追随した。また、住宅のリノベーションがマスコミで紹介される機会も増え、2013年中にその認知度が大きくアップしたことだろう。

それに対して、2012年12月4日に運用が開始され実質的に2013年が制度元年となった「認定低炭素住宅」は、9月末までの認定戸数が1,769戸にとどまり低調な滑り出しだった。その一方で、2013年度限りの予定で7月に受付が開始された「木材利用ポイント」は、11月末までの5ケ月間で申請の累計が1万件を超え、来年度以降の継続延長方針が打ち出されている。

2013年 12月12日 13時08分