日本の木造建築の機能美を支える木材

木目が美しい国産杉の家(写真:及川雅文)木目が美しい国産杉の家(写真:及川雅文)

住宅雑誌などを見ていても、木目の美しい木造建築に自然と目が留まり、ページをめくる手が留まる。そんな経験をした人もいるだろう。

住宅建材には、外国産材、国産材の杉や檜、松、桜、楠といった木材(樹種)がある。木造の一戸建てを検討するとき、やはり国産材を使った家に住みたいと思う人も多いのではないだろうか。

農林水産省の外局・林野庁(りんやちょう)の発表によると、日本の国土面積の約66%(約3分の2)は森林で覆われ、木材資源の豊富な世界でも有数の森林大国だが、世界有数の材木輸入国でもあるという。森林の約40%は人工林で日本材木の自給率は27.9%、あとの72%余りをアメリカ、カナダの米材やマレーシア、インドネシアなどの南洋材をはじめとする外国産材に頼っている。

また、日本における製材用材の需要量(丸太換算)はというと、昭和48年にピークを迎えた後、減少傾向を推移し平成23年の需要量はピーク時の3分の1程度だという。このような著しい減少は、住宅着工戸数の減少によるものと考えられている。木材需要の約40%、国産材需要の約55%が建築用材で、住宅を中心とする建築用材の需要拡大が木材全体の需要拡大に大きく貢献。新設住宅着工戸数の約半分が木造であり、木造住宅の着工同動向が木材需要全体に大きな影響を与えるという。

参照元:農林水産省の外局・林野庁 平成24年度 森林・林業白書より
http://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/24hakusyo/zenbun.html

吉野杉と国産材木の魅力

空気感さえ変えてしまう木の家空気感さえ変えてしまう木の家

輸入木材が大半を占めるなか、有限会社羽根建築工房では吉野杉をメインにした一戸建ての設計と、大工職人による施工を行っている。この会社が住宅の構造体として使う吉野杉は、林業の山守・親子3代に渡って大切に育てられた平均樹齢は約80年生の木。林業の世界では、樹齢を「年」ではなく「年生」と呼ぶそうだ。

吉野杉の魅力は、緻密で均一な年輪がもたらす柾目や板目の美しさとその強度、そして素足で歩いても馴染みやすい肌触りの良さにある。一番の目を引くのは調湿効果だ。初夏の梅雨時期や秋の乾燥時期、四季をもつ日本の風土にマッチした材質といえる。日本の気候とまったく違う環境で育った輸入木材が、湿気の多い日本に不向きといわれるのも無理はない。また耐久性に優れ、天然杉の木の香りが放つフィトンチッドには、空気清浄効果、消臭効果、リラックス効果があり、住む人を優しく包み家にいながら森林浴のような清々しさが感じられる。と羽根建築工房の羽根さんはいう。

そして、国産材木を使う最大の理由は、森林を育て、木を使い、植樹するというサイクルがしっかり維持できることで、林業の活発化が図れること。地元で消費することで、地域経済の向上にも貢献でき、その土地で育った木で住宅をつくることは、地域の気候や風土にあった家づくりにつながるという。また、健やかな森林の保全は木がしっかりと根を下ろし、土を掴むことができるため土砂災害などを防ぐこともできる。

柱や梁の一本一本は、吉野の山で大切に育てられている

吉野の杉林と製材風景吉野の杉林と製材風景

大工の修行をしていた頃から、吉野杉を扱った住宅建築に携わっていたという羽根さんは、木材のことを知るために実際に山に足を運び、林業の方々の仕事ぶり、手入れ方法などを目の当たりにした。そのとき「家づくりは山からはじまっている」と強く実感したという。

そこで木造建築の主役となる「木」が、どこのどんな木なのかを知って、家づくりに積極的に参加して欲しいと一般の方を対象に「吉野ツアー」を定期的に実施できる体制を整えた。

手入れや管理力の高さから、日本三大人工美林に数えられる吉野林業。吉野ツアーの一行が向かうのは、今から約500年前の室町時代から人工造林がはじまったといわれる奈良県川上村。

目的地までの車中、その地域や林業の歴史についての説明がなされ、資料館の見学も行われる。山に着くと、林業家の方の指導のもと素人の方でも比較的安全に入れる人工林へと案内される。場合によっては、実際に木を倒す間伐の体験もさせてもらえる。間伐した木は水分を抜くため「葉枯らし」といって枝葉が付いたまま数ヶ月間、その山に放置される。その後、木が建材へと製材される製材所の見学が行われ、木材が自然乾燥されている様子も見ることができる。

ツアーの参加者からは、「吉野杉という名前は知っていたが、こんなに貴重なものだとは思っていなかった。自分が建てようとしている吉野杉の家が、どれだけの年月と、どれだけの人の手によって育てられているかを体験することができた。この家に住めることを誇りに思う」と話す。また別の参加者は「国産の木を使うことで、地産地消からみても山元に収益が還元され林業の活性化につながる。またCO2削減・温暖化対策などの環境保全にもなる。自分の家が林業や環境に貢献しているようでうれしい」という意見もあったという。

取材協力:有限会社羽根建築工房
http://hanebou.com/

気になる国産材木の価格

吉野杉の丸太吉野杉の丸太

先に述べたように、我が国で使われる木材のほとんどは輸入に頼っている。そこから察するに、日本の住宅の大半は、日本の木で造られていないことになる。そうなると気になるのが価格だ。一般的に、国産材は輸入材に比べ価格が高いイメージがあるが、円高が続いている現状では、どうだろう。

そこで、国産材と輸入材の価格について調べてみた。林野庁の平成24年度 森林及び林業の動向によれば、輸入丸太の価格は、為替レートや生産国の動向などにより大きく変動する。とある。アメリカやカナダから輸入される米材丸太の価格は、原油価格の上昇や円安の影響により、平成17(2005)年ごろから上昇していたが、その後、世界的な金融危機や円高の影響を受け下落。平成24(2012)年の米材丸太価格は、米松で23,800円/m3(前年比1,800円/m3安)、米栂で24,000円/m3(前年比400円/m3安)となっている。

一方、国産材のの素材(丸太)価格は、昭和55(1980)年をピークに下落傾向にあり、平成21(2009)年以降は杉、檜、唐松の価格は横ばいで推移。平成24(2012)年の国産材の素材価格は、いずれの樹種も前年を下回り、杉で11,400円/m3(前年比900円/m3安)、檜で18,500円/m3(前年比3,200円/m3安)、唐松で10,600円/m3(前年比200円/m3安)となっている。

親子3代・80年間、手間暇掛けて大切に育てられた杉の木、1m3辺り11,400円の価格を高いととるか、安いと感じるか。消費者の心理はいかに。

参照元:農林水産省の外局・林野庁 平成24年度 森林及び林業の動向
第VI章 林産物需給と木材産業より
http://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/24hakusyo/zenbun.html

2013年 09月30日 12時12分