土地や不動産を長期間所有している場合、本来の所有権を持っていなくても、所有権を主張できる“時効取得(じこうしゅとく)”という制度があります。

時効取得にはさまざまな条件があり、条件を満たしていない場合は所有権が認められません。また、時効取得が成立するか否かによって、トラブルを招く場合もあります。

今回は土地や不動産における時効取得の条件と、注意すべきケースについて解説します。

 

時効取得とは、他人の土地や不動産を、所有する意思を持って一定期間占有した場合に、時効により所有権を得ることができる制度のことです。

 

所有した当初は実質的な所有者でなくても、長期間占有していることによって、自身が所有者になれるということです。時効取得を完成させ、不動産の所有権を取得するためには、民法162条に規定された条件を満たす必要があります。

 

2019年12月現在、その条件は以下のとおりです。

 

民法162条1項により、原則として、土地や不動産の占有を20年間継続したことを立証する必要があります。これを“長期取得時効“といいます。

 

ただし、占有開始時に善意かつ無過失であると認められた場合、占有継続期間を10年まで短縮できます。これを“短期取得時効“といいます。

 

民法162条では、不動産の取得時効を主張する際、所有の意思を持って占有していたという意思表明が必要となります。

 

本来の所有者と同様に、“この土地または不動産は自分が所有している”という意思のもと占有することを“自主占有”、所有の意思なしに占有することを“他主占有”といいます。

 

所有の意思があるかどうかは、占有をすることになった原因や経緯を考慮したうえで客観的に判断されます。一方、他主占有と判断された場合には所有の意思は認められません。

 

民法162条では、占有が平穏かつ公然で行われることが条件とされています。平穏とは暴行や脅迫を行わないこと、公然とは隠し事がないことを指します。こちらも時効取得を主張する方が立証する必要はなく、客観的に判断されます。

 

以上をまとめると、占有者は、その不動産が自分の所有であると信じて占有していること、また近隣にも隠し事がない状態であること。そして、本来の所有者は、占有している方に対して「私の不動産なので立ち退いてください」という権利を長年行使しなかった場合、それであれば占有者が所有権を主張したら勝てないですよね、ということになります。

 

もともとは自分が所有していなかった土地や不動産の所有権を得ることができる時効取得ですが、土地購入の際や相続時に関連する場合があります。続いては時効取得における注意すべきケースを紹介します。

 

亡くなった祖父が生前に土地を購入し、家を建てたのちに長年生活をしていたが、祖父が亡くなったあとに土地の名義を確認したところ、購入時に前所有者から祖父へ名義変更が行われていなかったことが判明する、といったケースがあります。

 

こうした場合、亡くなった方の所有していた土地の所有権は、相続人に渡るのが一般的なので、まずは名義人となっている方の相続人を探すことから始まります。

 

そのうえで、売買契約書等の登記のために必要な書類があれば、所有権移転登記を求めることは可能です。売買契約書等の書類がない場合は、時効取得をもって所有権移転登記を求めることもできます。

 

売買契約によって土地を購入。しかし、売主はその土地の所有者ではなく、年月がたったあとに本来の所有者から連絡またはクレームが届く、ということも考えられます。

 

買主の土地の占有が10年または20年以上継続していれば、時効取得が成立する可能性が高いので、一度弁護士に相談してみましょう。

 

父が30年以上生活していた自宅を、父が亡くなったあとに相続し、処分しようとした際に、自宅の庭の一部が隣地所有者の土地の一部であったことが判明。隣地所有者からクレームを言われたわけではないが、どのように対応すべきか迷うというようなケースがあります。

 

時効取得が成立した場合は、所有権移転登記をすることにより、住宅と一緒に売却が可能です。しかし、隣地所有者の土地の一部にも所有権移転登記を行う必要があるので、事前に現在の隣地所有者に時効取得の旨を伝え、所有権移転登記をしてもらう必要があります。

 

住宅が密集している地域で、自宅の増改築を行ったとします。30年以上たった頃に、増改築した一部が隣の家の境界線を越えているとクレームが届くケースがあります。

 

こうした場合には、増改築部分の土地の所有権がどちらにあるかが問題となります。境界線を越えた部分に時効取得が成立するか、弁護士に問合せをしましょう。

 

時効取得には条件があり、時効取得を主張する場合には必要な手続きがあります。権利を主張するには客観性が必要で、万が一、時効取得をめぐってトラブルが起こった場合、1人で対応するのが難しい場合もあります。

 

時効取得について悩みがある場合や、問題に直面した際は弁護士に相談して解決するようにしましょう。

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