
私はイタリア(ローマ)に住み始めて30年以上になります。当初、こんなに長くイタリアで暮らす予定ではなかったのですが、結局当地で持ち家を購入。そのマンションは築60年と、かなりの築年数の物件でした。
築年数を言うと日本では少し驚かれますが、マンションのほとんどが中古というイタリアでは、築何百年という物件も存在します。
これまでわが家も、イタリア流の「購入したマンションは自分好みのスタイルに作り変える」を実践し、幾度となくリノベーションを行ってきましたが、今回思い切って2つあるバスルームを全面的にリニューアルすることにしました。大変なこともありましたが、出来上がった時の満足感は何事にも代えがたいものがあります。
今回はそのリニューアルの模様とともに、イタリアの不動産事情についても併せてご紹介していきます。
もくじ
家・マンションを売るなら
ホームズで査定依頼
独自の掲載基準で
不動産売却査定サービスは、地域密着の不動産会社から大手まで
充実の会社情報を比べ、連絡が欲しい複数の会社に一括で査定依頼できます。
依頼後、即日~3日以内に不動産会社から連絡がきます。
学生、短期、一般・・・イタリアンのマンションの住み方あれこれ
私が最初にイタリアを訪れたのは学生のころ。予算的に一人暮らしはとても無理だったため、家具付きの学生アパートを他の留学生とシェアしていました。
イタリア、少なくともローマでは、日本のような小さな間取りのマンションが非常に少なく、「モノロカーレ」と呼ばれる、いわゆるワンルームのマンションでも40m2以上。その分、家賃は割高になります。そのため、部屋数のある100m2前後のマンションを数名の学生同士でシェアするのが一般的です。
このくらいの広さになるとバスルームも二つある家が多いので、シェアするのも比較的楽なのです。
学生は広めのマンションを借りて数名でシェアするのが一般的 © Attico
お金と時間はかかるが、好みの部屋にするのがイタリア流
通常、学生や外国人、短期入居者を対象にしているマンションは、生活するには困らない最低限の家具が一式付いていますが、一般的な賃貸物件は家具付きではありません。
なかにはバスタブやシャワー、キッチン一式まで自分で調達しなければならないマンションもありますし、ところどころ壁に釘跡の穴が開いていたり、壁がうす汚れていて塗り替える必要があるのは日常茶飯事です。
快適に住める状態にするまでに多少のお金と時間はかかりますが、一方で賃貸でも大家さんの承諾さえ得られればある程度までは自分の好きなスタイルにつくり変えることができる、というメリットもあります。
長期で借りられる一般的な賃貸物件は、ある程度のリノベを要するケースが多い © Attico
新築より「歴史を経た建物こそ価値がある」という考え方
イタリアには新築マンションがほとんどなく、物件の多くは中古です。基本的に建物を壊して新たに建て直すという概念がイタリアにはないからです。
歴史的保護区域に指定されている中心街に行けば行くほど築年数は古くなり、なかには築何百年という物件も存在します。そのような“歴史を経た建物こそ価値がある”というのがイタリアの一般的な考え方でもあります。
街の中心部にある歴史的建造物こそ価値があるとされるイタリア © Attico
イタリアでは家を買ったら手を加えるのが当たり前
というわけで、売りに出されているマンションは、仮にリニューアル済みと記載されている物件でも、購入にあたっては壁を取り壊して部屋のスペースを広げたり、バスルームを一つ増やしたり (あるいは一つに減らしたり)、バスタブを取り外してシャワーのみにしたり、床やタイルを変えたりなど、イタリア人のほとんどがある程度手を加えます。
それは、イタリアでは購入したマンションを自分好みのスタイルにつくりかえるのが当たり前となっているからです。
イタリアでは、家を買ったら間取りや内装を変えるのは当たり前のこと © Attico
古くなってしまった水回りの配管や電気系統の配線、隙間風が入る窓枠や劣化した雨戸など、根本的な部分がリニューアルされているのは非常にありがたい状態です。
しかし、壁の塗り替えやドア、キッチンやバスルームの内装がリニューアル済みだからという理由で物件が高くなってしまうくらいなら、むしろ1から手を入れられるような状態で購入する方が望ましいと考えるイタリア人は少なくありません。
家を購入の際、配管や配線、窓枠などがリニューアル済みかは重要なチェックポイント © Attico
ローマ郊外に築60年のマンションを購入しリノベをスタート
さて、賃貸のマンションをあちらこちら渡り歩いた後、私が最終的に落ち着いたのは、自分のライフスタイルにぴったりだった湖のあるローマ郊外の街でした。友人が借りていたそのマンションが売りに出されたことを知り、購入を決めたのは20年ほど前のこと。
私にとって初めての持ち家です。築60年近く経っているマンションなので、現在も少しずつあちらこちらに手を加えています。
最終的に落ち着いたのは湖のあるローマ郊外の街 © Attico
ベッドルーム、食器棚のリノベを経て、いよいよバスルームへ
引越し当時、階下に住んでいた家族のご主人がプロ並みのDIYの達人だったので、彼にお願いして、まずはベッドルームにロフトを作り、スペースを確保しました。廊下にピッタリはまる食器棚やキッチンの収納棚は、デザインを指定して地元の大工さんに作ってもらいました。
そういった細々としたリノベーションはこれまでにいくつか行ってきましたが、今回、大々的なに二つあるバスルームを改装しました。
まずはサブのバスルームをシャワールームに改装
わが家には、メインのバスルームと、サブのバスルームがあります。サブのバスルームは、以前に階下への水漏れがあったことから使っていませんでした。今回、このサブのバスルームをシャワールームにすることにしたのです。
まずは、サブのバスルームにあった小さなバスタブを取り外し、浴室の横幅の寸法に合わせてガラス戸を発注。あまり広くないので、圧迫感を避けるため、空をイメージした水色のタイルを選び、目地の部分にはちょっとした遊び感覚でシルバー・ラメの入ったライトグレーのものを使うことに。
窓下にあった小さなバスタブを撤去し、シャワールームをつくることに © Attico
トイレや洗面台、シャワー一式についても、専門店を何軒か回り、各店で見積もりを取って最終的に決めました。もともとは設置されていなかった洗面台を置くために、開き戸だったドアは引き戸に変えて、そのスペースを確保しました。
完成したものの想定外のトラブルで心身のエネルギーを消耗
工事の間は悪天候が続き、貼ったタイルの乾燥に思ったより時間を要したり、施工会社が遅刻したり、来なかったり、誤った商品が届いたりと、想定外のトラブルが多々あり、予定していた期間を大幅にオーバーしてしまいましが、紆余曲折の後、無事にバスルームは完成しました。
今思えば、洗面台はもう少し奥行きがあるものを選べばよかったな、とか、壁のタイルは天井の高さまで貼ってもよかったな、など、多少の後悔はあるものの、友達の評価も高く、とりあえず満足しています。
実際は、その後すぐにメインバスルームに取り掛かる予定だったのですが、心身ともにエネルギーを使い果たし、次のバスルームのリニューアルまで少し時間を置くことにしました。
サイズが小さいので圧迫感を避けるため、空をイメージした清々しい内装に © Attico
気力を充実させ、メインバスルームの改装をスタート
それから数年の後、意を決してメインバスルームのリニューアルに取りかかることにしました。日本と違い、イタリアは何をするにも時間がかかリます。
優秀で信頼のおける施工会社を見つけるのも一苦労。発注したものとは別のものが届く、届くべき日に部品が届かないなどのトラブルは日常茶飯事です。リニューアルは完了してしまえばとてもハッピーな気分になりますが、工事中に起こり得るトラブルに立ち向かえる心の準備が必要です。
リニューアル前のメインバスルーム © Attico
サブバスルームとは対照的な落ち着いたデザインに
サブのバスルームを明るい色調にしたので、メインのバスルームの方は落ち着いた雰囲気のシックなベージュ系で統一することにしました。
イタリアの水は、硬水でカルシウム分を多く含んでおり、水滴を放置しておくと白い石灰シミができてなかなか取れなくなってしいます。シミが目立たないようにと、タイルはベージュを主としたグラデーションの入っているものをセレクト。
自分好みで美しいことも大切ですが、特にバスルームやキッチンなど毎日水を使用する場所は掃除が簡単で機能的であることも非常に重要です。正統派でまとめるだけではつまらないので、タイルにガラスとラメ入りのモザイクのラインを二つ入れることにし、バスタブにも同じモザイクを貼り付けてもらうことにしました。
もちろん、このモザイクの組み合わせも、数多くあるサンプルから選んだタイルに乗せてみて、最終的に相性の良いものを決めました。
ガラスとラメ入りの光系モザイクを2ライン入れて壁のアクセントに © Attico
シャワー派が多いイタリアでこだわった「日本のバスタブに近いもの」
イタリア人の多くはシャワー派で、バスタブがないお宅も多いのですが、お風呂好きの私はやはりゆっくりと湯船に浸かりたく、バスタブのサイズには少しこだわりました。
というのも、元々もともとあったバスタブは浅くて湯船のお湯はすぐにぬるくなってしまうし、背の小さな私には少々長すぎてすっぽりと頭から沈んでしまうような状況だったのです。
日本のように座って肩まで浸かれるバスタブはほとんどなく、あったとしても特注扱いで高額になってしまうので、スタンダードなモデルからなるべく深さがあり、長さが短いものを選びました。
自分のサイズに合う丈が短めで底がなるべく深いバスタブを選び、表面をモザイクで飾る © Attico
小さなサンプルで見て選んだタイルを実際のバスルームの広さで使用してみると、思い描いているイメージとは少し異なり、少し落ち着き過ぎてしまった感はありますが、品のあるバスルームに仕上がり、それなりに満足しています。
リニューアル後のメインバスルーム © Attico
日々暮らす空間をもっと心地良く!
次はキッチンの改装を考えていますが、キッチンはさらなる心の準備と、お金と、時間を要するので、当分先になりそうです。でも、“ここに棚を取り付けて”、“壁の色をこうして”、“大理石の調理台を置いて”などなど、いろいろと構想を練るのはなかなか楽しいものです。
日々暮らす空間を心地良く作り変える。イタリアに暮らし始めて数多くのことを学びましたが、その一つが彼らの住まいに対する考え方でした。
今はDIY系のお店も充実しているし、素材も簡単に手に入ります。手を加えていくうちにきっと色々なアイデアが浮かんでくると思います。皆さんも、小さなところから自分流の住まいづくりを始めてみてはいかがでしょう。
日本でも賃貸物件によっては、「カスタマイズ可」「DIY可」と言った名称で自分好みにお部屋を自由にカスタマイズできるものも出てきています。ただ、壁紙や畳など内装の一部の改修ならOKでも、日本では水回りは難しいケースが多いかもしれません。リノベーションを希望する場合、まずは管理会社やオーナーさんに相談しましょう。
記事トップ画像:© Attico
記事執筆
村本幸枝
コーディネーター、(株)アッティコ代表。 1989年、渡伊。イタリア初の日本語無料情報誌を現地で発行。その後、同誌の休刊と共に(株)アッティコ設立。イタリア政府公式イベントや展覧会、セミナー、イタリア食文化講座などを企画・主宰し、東京を中心にさまざまな切口でイタリアを紹介する。