入居する賃貸物件を選ぶ際、物件の立地や広さだけで決めてしまうと、家賃の支払いや生活費にまわす資金が不足する可能性があります。そのため、収支のバランスを考えながら、無理のない家賃の賃貸物件を選ぶことが大切です。

今回は、賃貸物件の家賃目安をお金の専門家であるFP(ファイナンシャルプランナー)3名の意見も伺いながら、手取り別に紹介します。

また、家賃を抑えるコツや家賃の予算を設定する際の注意点のほか、独自に実施したアンケート結果をもとに、手取りと家賃の関係性も調査しておりますので、ぜひ参考にしてください。

賃貸物件を探す家賃相場を調べる

家賃は毎月支払いが必要であるため、家賃が高すぎると生活が苦しくなる可能性があります。そこでまずは、無理なく暮らせる家賃の目安を見ていきましょう。

一般的に、無理なく支払える家賃の目安は「手取りの3分の1程度」とされています。ただし、これはあくまで目安であり、地域や生活スタイルによって適した家賃は異なります。

 

家賃を決めるうえで重要なのは、「家賃を支払っても生活に余裕があるか?」ということです。「手取りの3分の1」はあくまで目安であり、実際の生活費を詳細にシミュレーションしたうえで、慎重に物件を選ぶ必要があります。

不動産ポータルサイトのLIFULL HOME’Sが、家計管理の専門家であるFP(ファイナンシャルプランナー)3名に、最適な家賃の目安や、世帯人数・家族構成などをふまえた家賃の考え方についてインタビューしました。

Aさんの意見

Q.Aさんがおすすめする家賃の目安は?

A.一般的に、家賃は毎月の手取り収入の30%以下に抑えるのが望ましいとされています。例えば、手取り収入が25万円の場合、家賃は7万5,000円以下が適切です。ただし、これはあくまで目安であり、家族構成や生活スタイルによって適切な家賃は異なります。

また、毎月の収入は「手取り収入」を基準に計算しましょう手取り収入とは、給与の総支給額から税金や社会保険料などを差し引いたあとのお金のことです。家賃を手取り収入の3分の1以下に抑えることで、生活にゆとりが生まれ、貯蓄もしやすくなります。

 

Q.家賃目安を考える際のポイントは?

A.勤務先の福利厚生に住宅手当や家賃補助がある場合は、これらを収入に合算してもよいでしょう。また、共益費や管理費、駐車場代は家賃と合わせて支払うため、家賃に含めて計算することをおすすめします。

 

Q.ファミリーの場合の注意点は?

A.家賃は都市部ほど高くなる傾向があります。通勤時間が短縮される、生活の利便性が増すなど、生活の質が大きく向上する場合は、多少の家賃増加も検討に値するかもしれませんまた、世帯人数が多い場合は生活費がかさむため、家賃を目安以下に抑える、比較的家賃を抑えられる地域を探すなどの工夫が必要です。

Bさんの意見

Q.Bさんがおすすめする家賃の目安は?

A.手取りの25%(4分の1)が目安です。以前は、家賃は手取りの3分の1に収めるのが理想とされてきました。しかし近年、賃金が上がりにくい状況が続いており、税や社会保険料の負担増加、物価高なども考慮すると、可能であれば家賃は手取りの4分の1以下にするのが望ましいといえるでしょう。

 

Q.家賃目安を考える際のポイント

A.毎月の貯蓄や急な出費への対応が無理なくできる程度に、家計に余裕がある状況が理想的です。貯蓄を増やしたければ家賃を下げる、住環境にこだわるなら家賃以外の支出を下げる、といった工夫をしてバランスをとることが大切です。

 

Q.ファミリーの場合の注意点は?

A.世帯人数が多いと、一般的に広い間取りが必要になり家賃も上がります手取り収入が変わらないのに家賃の割合を上げてしまうと、家計は苦しくなるでしょう。世帯人数と家計のバランスから、家賃の割合を慎重に検討することをおすすめします。

Cさんの意見

Q.Cさんがおすすめする家賃の目安は?

A.賃貸住宅を選ぶときの家賃の目安は、「手取り」の30%~40%です。

ここでいう手取りとは、毎月の収入から厚生年金保険料や健康保険料などの社会保険料が差し引かれたあとの金額を指します。

 

Q.家賃目安を考える際のポイント

A.「職場が近ければよい」「家でゆっくり過ごす空間を作りたい」など、人によって住居選びのニーズは異なります。したがって、家賃だけで物件を決めるのは難しいかもしれません。

 

また、都市部では家賃が高騰しているため、手取りの30%程度に抑えるのは現実的ではないでしょう。手取りの40%までの家賃であれば許容範囲ではありますが、その他の支出項目をかなりシビアに抑えるよう心がけてください。

 

Q.ファミリーの場合の注意点は?

A.家族が増えれば必要な部屋数も増えるため、家賃は高くなりがちです。また、夫婦と子どもで過ごすのか、夫婦が両親と同居するのか、といった家族構成も、物件選びの際に考慮すべき重要なポイントになるでしょう。将来のことも踏まえて、家族とよく話し合って実際の生活をイメージするのがおすすめです。

手取りが15万~30万円の場合、25%・30%・40%を家賃に回すと、それぞれ家賃目安がいくらになるかまとめました。下表を参考に家賃をどの程度に設定するのか考えてみましょう。

 

手取りの25%を目安家賃とする場合

手取り15万円

月3万7,500円

手取り20万円

月5万円

手取り25万円

月6万2,500円

手取り30万円

月7万5,000円

 

手取りの30%を目安家賃とする場合

手取り15万円

月4万5,000円

手取り20万円

月6万円

手取り25万円

月7万5,000円

手取り30万円

月9万円

 

手取りの40%を目安家賃とする場合

手取り15万円

月6万円

手取り20万円

月8万円

手取り25万円

月10万円

手取り30万円

月12万円

賃貸物件を探す 家賃相場を調べる

ここからは、家賃を手取りの「30%」「40%」としたときの生活費イメージを手取り別に紹介します。手取りは15万~30万円の方を想定しています。

 

ここで紹介する生活費の内訳はあくまで一例ですが、ご自身の生活習慣などと比較しながら参考にしてください。

内訳

家賃が手取りの

30%の場合

家賃が手取りの

40%の場合

家賃

4万5,000円

6万円

食費

2万2,000円

2万円

水道光熱費

1万2,000円

1万2,000円

携帯電話やインターネット代

1万2,000円

1万2,000円

衣類

1万円

7,000円

日用品

6,000円

6,000円

交際費・娯楽費

2万円

1万円

雑費

5,000円

5,000円

保険

8,000円

8,000円

貯金

1万円

1万円

合計

15万円

15万円

 

手取り15万円の場合、目安家賃は手取りの30%で「月4万5,000円」、手取りの40%で「月6万円」です。手取りが少ない状態では、家賃を手取りの30%に収めても、それほど生活費に余裕はなく、貯金にも資金をほとんどまわせません。

 

したがって、駅から少し離れた賃貸物件を探すなどして、家賃を極力抑えたいところです。

 

家賃・賃料6万円以下の快適物件

内訳

家賃が手取りの

30%の場合

家賃が手取りの

40%の場合

家賃

6万円

8万円

食費

2万5,000円

2万2,000円

水道光熱費

1万2,000円

1万2,000円

携帯電話やインターネット代

1万2,000円

1万2,000円

衣類

1万円

1万円

日用品

6,000円

6,000円

交際費・娯楽費

3万円

2万円

雑費

7,000円

5,000円

保険

8,000円

8,000円

貯金

3万円

2万5,000円

合計

20万円

20万円

 

手取り20万円の場合、目安家賃は手取りの30%で「月6万円」、手取りの40%で「月8万円」です。3割~4割を家賃にまわしても、ある程度生活に余裕があります。

 

ただし、外食が増えたり遊びにお金を使ったりすれば、すぐに資金が足りなくなってしまうでしょう。貯金をするには、資金を計画的に使い、多少の節約も必要です。

 

家賃・賃料8万円以下の物件

内訳

家賃が手取りの

30%の場合

家賃が手取りの

40%の場合

家賃

7万5,000円

10万円

食費

3万円

2万5,000円

水道光熱費

1万2,000円

1万2,000円

携帯電話やインターネット代

1万2,000円

1万2,000円

衣類

1万5,000円

1万円

日用品

8,000円

8,000円

交際費・娯楽費

4万円

3万円

雑費

1万円

1万円

保険

8,000円

8,000円

貯金

4万円

3万5,000円

合計

25万円

25万円

 

手取り25万円の場合、目安家賃は手取りの30%で「月7万5,000円」、手取りの40%で「月10万円」です。節約を意識しなくてもある程度余裕をもって生活でき、貯金を増やすことも可能です。

 

ただし、資金に余裕があるからといって極端に生活水準を上げるのは避けましょう。一度上げた生活水準を落とすのは難しく、大きなストレスを伴います。収入が減ってしまう可能性も考慮し、家賃は低く抑えて貯金を増やすのがおすすめです。

 

家賃・賃料10万円以下の物件

内訳

家賃が手取りの

30%の場合

家賃が手取りの

40%の場合

家賃

9万円

12万円

食費

3万5,000円

3万円

水道光熱費

1万2,000円

1万2,000円

携帯電話やインターネット代

1万2,000円

1万2,000円

衣類

2万円

1万5,000円

日用品

1万円

8,000円

交際費・娯楽費

4万5,000円

4万円

雑費

1万6,000円

1万円

保険

1万円

8,000円

貯金

5万円

4万5,000円

合計

30万円

30万円

 

手取り30 万円の場合、目安家賃は手取りの30%で「月9万円」、手取りの40%で「月12万円」です。生活にゆとりができ、貯金もしやすいでしょう。

 

家賃・賃料13万円以下の物件

不動産ポータルサイトのLIFULL HOME’Sが、賃貸住宅に住む300人を対象に独自のアンケートを実施し、家賃を手取り別に集計しました。

手取り15万~20万円の場合、家賃5万円以下の層が最も多くなっています。家賃目安3割の金額は、手取り15万円で4万5,000円、手取り20万円で6万円です。そのため、アンケート結果は目安の金額とおおむね一致しているといってよいでしょう。

 

家賃が10万円以上の世帯では、アンケートに回答した本人の収入は低いものの、パートナーにも収入があるため高額な家賃を支払えているケースが見受けられました。

 

また、同じマンション・アパートでも部屋の位置によって家賃は変わります。アンケートに回答した方のなかには、大通りに面した、騒音がする部屋を借りて家賃を安く抑えた方もいました。このように、住環境をある程度妥協すれば、家計の収支状況を改善することもできます。

手取り20万~25万円の場合、家賃5万~7万円未満が最も多く、全体の46%を占めています。手取り15万~20万円のデータと比較すると、家賃を7万円以上支払っている方の割合が増えていることがわかります。

手取り25万~30万円では、家賃5万~7万円未満の層が最も多くなっていますが、手取り20万~25万円と比べると、全体の平均額は上昇しています。

 

資金に余裕が出てくると、より良い物件に住んだり、生活費や貯蓄に回す金額を増やしたりできます。

手取り30万~35万円の場合では、家賃10万円以上の方が全体の3割近くを占めています。収入がある分、家賃にまわせる資金が増えたことが考えられます。

 

一方で、手取りが増えても家賃を7万円未満に抑えている方も一定数います。目安よりも低い家賃の物件にすることで、生活にさらに余裕をもたせることができます。

賃貸物件の家賃を抑えるためには、以下の3つのポイントをふまえて物件を選びましょう。

ポイント

  • 駅から遠い物件を選ぶ
  • 築年数の古い物件を選ぶ
  • 希望条件の優先順位を決めておく

駅へのアクセスが良い物件は、家賃が高い傾向にあります。普段電車を使うことが少ない場合は、あえて駅から遠い物件を選ぶことで、家賃を抑えられるかもしれません

 

ただし、駅から遠すぎて通勤・通学に時間がかかるとストレスを感じる方もいるでしょう。周囲にスーパーマーケットやコンビニエンスストアがない場合、買い物に手間や交通費がかかることも考えられます。したがって、周辺環境の利便性を十分に考慮したうえで居住エリアを選びましょう。

 

また、自転車や車がある場合は、物件の選択肢が大幅に増えます。徒歩と比較したときの費用対効果などをふまえ、自転車や車の利用も検討してみましょう。

賃貸物件は、築年数が古いほど家賃が安くなります。

 

築年数が古い物件の場合でも、最近はリフォームやリノベーションを行ない、新築同然の内装になっている物件も多くありますこういった物件を中心に探してみるのもよいでしょう。

 

また、築年数が古くあまり人気のない物件は、家賃の値下げ交渉ができるかもしれません。周辺の家賃相場と比較して高いと感じるなら、オーナーと交渉してみてもよいでしょう。

家賃だけでなく、部屋の広さや間取り、交通アクセスの良さ、買い物のしやすさ、治安の良さなど、人によって優先したい要素は異なります。

 

そこで、物件を探す前に希望条件を洗い出し、優先順位をつけておきましょうまた、家賃を抑えるためには、優先順位の低い条件を妥協することも必要です。

 

支出全体を抑えたいなら、家賃以外のポイントにも注目してみましょう。例えば、インターネット通信料が無料の物件や、エアコン・照明器具が設置済みの物件であれば、家賃が多少高くても、全体的な支出を抑えられる可能性があります。

 

家賃以外の要素にも注目しながら、物件を探してみましょう。

 

賃貸物件を探す

最後に、賃貸物件の家賃を考えるうえで注意すべき4つのポイントを解説します。

繰り返し述べたとおり、住むエリアや家計状況によって適切な家賃は異なります。手取りの3分の1というのはあくまで目安であるため、こだわりすぎないようにしましょう。

 

希望条件のうち優先度の低いものを妥協することで、家賃を目安より下げられるケースもあります。

 

ただし、家賃が安すぎる物件にはなにかしらの問題があるかもしれません。家賃だけを見て入居を決めてしまうと、後悔する可能性もあるため注意しましょう。

家賃を決める際は、月々の生活費を算出して収入と照らし合わせましょう。固定費や共益費、駐車場代などの支払いも加味して予算を立てておくと、無理のない範囲で家賃額を設定できます。

 

予算の範囲内ぎりぎりで家賃を設定してしまうと、収入の減少や突発的な出費に対応できなくなりますいざというときに備えて貯金できるよう、予算にゆとりをもたせた家賃設定にしましょう。

手取りに対して家賃が高い場合、現在は問題なく支払えたとしても、収入が減った際に生活が苦しくなる可能性があります。

 

将来的に収入が減るリスクも念頭に置いて、毎月の支払いに無理のない家賃の物件を探すのがおすすめです。

ボーナスは不確定要素が多い収入です。ボーナス支給の有無や金額は会社の業績に左右され、必ずしも想定どおりの金額が支給されるとは限りません。

 

したがって、ボーナスを家賃目安の計算に含めてしまうと、想定よりボーナスが低くなった場合、家賃が支払えないといったことになりかねません。ボーナスはあくまで臨時収入とし、家賃目安の計算に含めないようにしましょう

 

賃貸物件を探す 家賃相場を調べる

家賃は手取りの3分の1から4分の1以下に収めるのが理想です。家賃が低ければ低いほど生活費や貯金にお金をまわせるため、物件に求める条件を整理しながら、家計に無理のない範囲で物件を探してみましょう。

 

特に手取りが少ない場合、収入の多くを家賃に費やしてしまうと、生活費の節約に力をいれなければならなくなります。余裕をもった生活ができるよう、FPの意見も参考にして、自身の収入に合った家賃の物件を選びましょう。

 

不動産情報ポータルサイトLIFULL HOME’Sでは、地域の家賃相場を掲載しています。家賃や間取り、面積、築年数、周辺の立地など、さまざまな条件をもとに不動産の検索も可能です。ぜひ、ご活用ください。

 

賃貸物件を探す 家賃相場を調べる

公開日: