賃貸物件を借りていて毎月の家賃が「もったいない」と感じられたら、マイホームの購入も視野に入れて今後の計画を見直してみましょう。

しかし、持ち家と賃貸のどちらがいいかはライフプランや価値観によっても異なるので、判断が難しいポイントでもあります。

今回はマイホームの購入計画を立てる前に確認しておきたいお金のポイントについて、さまざまな角度から見ていきましょう。

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家賃がもったいないと感じられる理由

 

まずは、家賃がもったいないという意見にはどのような理由があるのか、持ち家のメリットも踏まえながら解説します。

 

持ち家の最大のメリットは、住宅ローン完済後の住居費負担が大幅に軽減される点にあります。

 

一般的な住宅ローンであれば、最長でも返済期間は35年になるため、完済後の金銭負担は維持費や管理費が中心となります。

 

それに対して、賃貸物件に住み続ける限りは、当然ながら一生涯にわたって家賃が発生します。

 

2022年現在は、依然として住宅ローンの低金利状態が続いています。

 

また、2022年度の税制改正によって控除率は引き下げられたものの、「住宅ローン控除」は引き続き適用されるため、購入後10年~13年間は所得税の負担が軽くなります。

 

こうした状態はあくまでも時限的なものであるため、いつまでも変わらずに続いていくとは限りません。そのため、将来と比べて、今がもっとも有利に買えるタイミングという考え方もできるでしょう。

 

金銭面での損得だけでなく、賃貸物件にはない持ち家ならではの魅力もあります。

 

一般的には「賃貸物件よりも住宅の品質が高い」「間取り・設備などの自由度が高い」といった特徴があるので、家賃とそれほど変わらない負担額でも、より快適な住環境を手に入れられるケースは多いです。

持ち家のデメリットと考えておきたいリスク

 

持ち家の強みやメリットを見ると、このまま家賃を払い続けるよりも、すぐにマイホーム購入に踏み切った方がお得だと考える人もいるでしょう。

 

しかし、マイホームは大きな買い物なので、デメリットやリスクにも目を向けておくことが大切です。

 

持ち家を購入した場合、賃貸物件では発生しなかった維持費がかかります。

 

税金や修繕積み立て費用などを考えると、毎月の住宅ローン返済額は単に家賃と同額に設定するのではなく、少しゆとりを持たせておく必要があります。

 

持ち家は賃貸と違い、簡単に引越しすることができません。急な転勤や家族構成の変化などの影響で、求める住環境が変わる可能性もあるため、購入前には十分にライフプランを検討する必要があります。

 

持ち家は住宅ローン完済後に資産になるのがメリットですが、地価や経済情勢の変動により、資産価値が落ちてしまうリスクもあります。

 

将来的に売却・運用を検討するのであれば、購入時から想定して物件選びを進めることが大切です。

 

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持ち家を買ううえで考えたい維持費と税金

 

持ち家と賃貸の住居費負担を比べるうえでは、マイホーム購入後の具体的な維持費・税金を把握しておくことが大切です。

 

ここでは、一戸建てとマンションのそれぞれについて、購入後にかかる維持費の内訳や目安を解説します。

 

一戸建ての購入後には、主に以下のような維持費がかかります。

一戸建て購入後にかかる維持費と税金

  • 固定資産税
  • 都市計画税
  • 修繕費用
  • 各種保険費用
  • 自治会費用

固定資産税は毎年1月1日時点における土地・建物の所有者に課せられる税金であり、具体的な金額は「固定資産税課税標準額×税率」で計算されます。

 

都市計画税とは、都市計画事業・土地区間整理事業の費用に充てることを目的とした税金のことです。固定資産税と同様にマイホームを所有している間、毎年かかる税金になります。

 

ただし、都市計画税は都市計画法による市街化区域内に所在する土地と建物が対象となるため、エリアによっては課税されないケースもあります。

 

どちらにもマイホーム購入時の特例があるため、ある程度の負担は軽減されますが、毎年決まってかかるお金なので準備しておきましょう。

 

修繕費用は住宅の規模や所有期間によっても異なるものの、すべての補修を完了するまでに600万~800万円程度はかかるとされています。

 

そのため、仮に30年間所有すると考えると、年間では20万~30万円は確保しておきたいところです。

 

さらに、保険費用や自治会費用などを加えると、条件や住宅のグレードによっても異なりますが、年間の維持費は50万円程度になると考えられます。

 

マンション購入後にかかる維持費には、主に以下のようなものがあります。

マンション購入後にかかる維持費と税金

  • 固定資産税
  • 都市計画税
  • 修繕積立金
  • 管理費
  • 駐車場代
  • 各種保険費用
  • 自主的な修繕積み立て費用

マンションも一戸建てと同様に固定資産税・都市計画税がかかります。物件の評価額によっても金額は異なりますが、毎年10万~15万円程度になる場合が多いです。

 

そして、マンション特有の維持費として挙げられるのが修繕積立金と管理費です。これらは建物全体の修繕や建替え、管理のために用いられるお金であり、マンションの購入者全員が毎月負担しなければなりません。

 

金額としては合計で毎月2万~3万円程度が目安ですが、修繕積立金は築年数が経過するほど高くなっていく可能性もあるので、購入時の金額をそのまま基準にしないように注意しましょう。

 

また、修繕積立金はあくまで建物や共用部分の補修のために用いられるため、室内の設備などを入れ替えたい場合には、自分で費用を捻出する必要があります。

 

これらの費用を合計すると、月額ベースでは5万円程度、年間では60万円程度の維持費がかかると想定できます。

 

一戸建てと同様、立地やグレードによっても負担額は異なるため、毎月の住宅ローン返済額は家賃より低めに設定するのが無難といえます。

持ち家と賃貸の総住居費を比較してみよう

 

持ち家と賃貸のどちらがお得かは、現在の年齢、今後のライフプラン、住宅に対する考え方、家族構成、仕事の状況といったさまざまな条件によって異なります。

 

どちらにもメリット・デメリットがあるので、最終的には自分自身の状況を踏まえて判断しなければなりません。

 

ここでは、一例として両者の住居コストを比較シミュレーションしてみましょう。

 

なお、今回はシンプルに比較するため、どちらも「50年間居住する」ことを前提にして、賃貸は「家賃12万円」、持ち家は「住宅ローン毎月返済額12万円」のケースで比べてみましょう。

 

賃貸物件を借りる際には、敷金・礼金などの初期費用がかかります。初期費用の目安は「家賃の4~6ヶ月分」とされているので、今回は家賃5ヶ月分の60万円として計算しましょう。

 

それ以外の住居費用としては、50年間分の家賃と管理費、2年に1回の更新費用などがあります。更新費用を家賃1ヶ月分、管理費を家賃の5%と設定すると、50年住んだときのトータルコストは以下のようになりました。

  • 初期費用:60万円
  • 家賃:7,200万円
  • 更新費用:300万円
  • 管理費:360万円
  • 総住居費:7,920万円(同じところに住み続けた場合)

 

LIFULL HOME’Sの「住宅ローンシミュレーター」を使って、毎月12万円の返済を35年間続けた場合の購入可能な住宅価格を計算したところ、結果は約3,500万円となりました。

 

そこで、今回は3,500万円の住宅ローンを借りるケースについて、総住居費を計算しましょう。

 

持ち家でかかる住居費用には、主に住宅購入額(住宅ローンの利息を含む)、諸費用、維持費・税金などがあります。

 

ここでは、諸費用を物件価格の5%、維持費を年間40万円と想定して、トータルコストを計算してみましょう。

  • 諸費用:175万円
  • 住宅ローン総支払額:約4,500万円(全期間固定金利1.5%の場合)
  • 維持費・修繕費:2,000万円(年間40万円と想定)
  • 総住居費:6,675万円

持ち家の場合、ここに住宅ローン控除による減税効果が加われば、全体として200万~300万円程度は費用が下がると考えられます。

 

そのため、今回のシミュレーション結果からいえば、50年間賃貸に住み続けるよりも、持ち家を購入した方が負担額は少なくなることが分かります。

 

両者を比較すると、住宅ローンを完済して数年が経過するころから、持ち家よりも賃貸の方が総コストは高くなる傾向があります。

 

今回のシミュレーションでは50年間の居住が前提なので、トータルコストを比較すれば、持ち家の方がお得といえるでしょう。

 

ただし、シミュレーションはあくまで「同じところに住み続ける」ことを前提としたものです。賃貸の場合、子どもの独立後に住居の規模を落として、家賃負担を軽減するといった方法も柔軟に選べるのが魅力です。

 

たとえば、上記と同じ条件で30年目から家賃8万円の物件に引越した場合、賃貸のトータルコストは6,852万円となり、持ち家の場合とそう大きな違いは生まれません。

 

このように、どのような条件設定をするかで結果は大きく変わるので、個別の実情に合った計算をすることが大切なのです。

 

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ライフプランを描く

 

ここまで解説した内容を踏まえると、単に家賃を支払い続けるのはもったいないと言い切ることはできません。

 

細かな条件によって異なるので、どちらがいいか悩んでしまったときには、将来のライフプランを描いてみることが大切です。

 

最後に、ライフプランを固めるうえで役立つ2つのツールを紹介します。

 

ライフイベント表とは、自分や家族の人生におけるイベントとそれに関わる収支をまとめた表のことです。具体的なイベントとしては、以下のようなものが挙げられます。

具体的なイベント

  • 結婚
  • 出産
  • 就職、転職
  • 住宅購入
  • 子どもの進学
  • マイカーの買い替え
  • 両親の介護

ライフイベント表は、これらのイベントが起こり得るタイミングとそれぞれの必要資金を細かく把握して、一つずつクリアにしていくことが大切です。

 

金銭面での目標が明確になれば、自然と毎月の貯金額や捻出できる住居費の目安が決まっていくでしょう。

 

また、ライフイベント表は1年単位などで細かく修正・改善を繰り返していくことも大切です。夫婦や家族の間で共有し、話し合いの場を設けること自体にも大きな意味があるので、定期的に見直しを行いましょう。

 

ライフイベント表とともに、将来の収支をまとめたキャッシュフロー表をつくってみるのも一つの方法です。

 

キャッシュフロー表には1年ごとの想定収入と想定支出を記載するため、より具体的な数字に基づいて家計を把握できるとともに、予想外の出費があったときにもその後の対策を立てやすくなります。

 

キャッシュフロー表は、ある程度記載事項が決まっているので、インターネットなどでフォーマットを探してみるといいでしょう。

 

なお、収入に関する項目は、所得税や社会保険料を差し引いた「可処分所得」で記載するのが決まりです。

賃貸と持ち家

 

  • 持ち家は住宅ローン完済後の住居費負担が大幅に軽くなるのがメリット
  • 現在は住宅ローンの低金利状態の維持、住宅ローン控除の継続など、購入の追い風になるような状態も続いている
  • 持ち家の取得にはリスクもあるため、デメリットにも目を向けて判断することが大切
  • 維持費や修繕費などは具体的な内訳と金額の目安を把握しておく
  • ライフイベント表とキャッシュフロー表をとおして、今後のライフプランを見える化してみよう

 

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更新日: / 公開日:2019.01.15