住居選びの永遠のテーマ、「賃貸」と「持ち家」。それぞれメリットがあり、一概にこちらの方が良い! とはいえないもの。かかる費用についても同様で、どちらがお得か迷う部分がたくさんあります。そこで今回はファイナンシャルプランナーに、月々10万円の予算で、35年間住んだ場合どのような生活が待っているか、お話をうかがいました。

ケーススタディ1家賃10万円とローン返済10万円の物件比較

  • 【賃貸】家賃10万円の物件例
  • 【購入】毎月の住居費10万円の物件例

賃貸と購入のコストをシミュレーション比較する前に、家賃10万円の賃貸物件と、毎月の住居費10万円(ローン返済8万6000円+管理費・修繕積立金1万4000円)の分譲物件を購入した場合でそれぞれどのような部屋に住むことができるか比較しましょう。月々同じ金額を払っても、【賃貸】と【購入】では部屋の条件が異なるからです。

賃貸物件の場合、できるだけ低いコストで作って、できるだけ高い家賃で貸すことで、大家は利回りを上げたいものだと思います。しかし、分譲物件は、より魅力的に見せるために、設備の充実に力を入れています。そのため、広さや築年数も異なりますが、分譲物件に比べて賃貸物件の設備は見劣りする印象です。住宅設備にこだわるならば、分譲物件、つまり、【購入】がおすすめです。

ケーススタディ2家賃とローン返済35年後シミュレーション

  • 【賃貸】家賃35年コスト
  • 【購入】ローン返済の35年コスト

※購入時のローン返済は2013年当時の全期間固定金利の平均だった金利2.39%で計算していますが、例えば2016年9月時点での都市銀行の変動金利では金利0.625%。住宅ローンについては時期による変動が大きいのでこちらから気になる銀行の金利をいれてご確認ください。

変動金利は当初の金利が低いですが、35年間の返済見通しを立てることがしばしば困難な印象です。一方の固定金利は当初の金利は高めですが、返済額が所定の期間確定するため、将来設計しやすいのでおすすめです。

10万円の家賃とローン返済のコストを35年間でシミュレーションすると、ローン返済のコストが圧倒的に高くなります。

これは、【賃貸】の場合、家賃と2年に一度の更新料だけで済むのに対して、【購入】は住宅ローンと頭金以外にも、物件の日常的な管理のための管理費や、共用部分の大規模な修繕のために積み立てる修繕積立金、保有する固定資産に課される固定資産税などの負担が加わってくるからです。また頭金とは別に、保証料、不動産取得税、登記費用、保険料などの諸費用を、購入当初に現金で用意する必要があり、その負担額は、新築であれば物件価格の3~5%、中古ならば5~8%相当になります。

ただし、【購入】すれば35年のローン返済が終わった後は、住居費負担は維持費だけで済みます。一方、【賃貸】でいくなら35年以降も家賃を支払う必要があります。【賃貸】で支払う50年間、60年間…といった家賃を、【購入】であれば前倒しして35年で払い終えるイメージです。

35年間という限られた期間で見れば、【賃貸】のほうが【購入】よりも圧倒的にコストはかからないわけですが、50年間、60年間…と長い期間で見るほど、その差は縮まります。将来のいつかの段階で、【賃貸】で支払う家賃の総額が、購入側のコストを追い抜く時期が来ることは容易に想像できます。

ケーススタディ335年後の住居費

ローン返済後の住居費は0!?

購入側は、ローン完済後(この例では35年以降)は維持費の支払いだけで済むので、それまでの住居費に比べて負担がかなり減る見込みです。ただし、全くの0になることはありません。

まず、固定資産税・都市計画税はローン返済以降も物件の持ち主である間はずっと負担しなければなりません。

また、購入当初はきれいだった物件も35年住めば老朽化が進んでしまうため、大規模な修繕費も必要になってきます。そのため、ローンを返済し終えたからといって、住居費が全くなくなるということはありません。

ただし、ローンの返済が終わると、家計への負担が大幅に減少するため、気分が楽になります。これまで節約していた分の金額を趣味に思い切り使うなど、生活の楽しみも広がります。

建て直しの問題も

さらに、築35年といった物件は大規模な修繕や建て直しなしに住み続けることはなかなか困難です。そのため、ローン完済後の住居費負担は軽くなったとは言っても、長く住み続けるためには建て直し等で追加出費を迫られる可能性もあります。そうした費用も考慮に入れると、必ずしもローン完済後の住居費が少なくてラクと言い切ることはできません。

消費税住宅購入と消費税8%

消費税増税の影響

現在5%の消費税が、2014年4月1日から8%、その後数年後に10%にアップすることが決定されました。(※2013年当時。2016年6月時点では、消費税10%アップは2019年10月からに延期) ただし、8%にアップする際の例で言うと、注文住宅など請負契約に基づく物件については、半年前(2013年9月末)までの契約であればその引き渡しが2014年4月以降となっても5%でよいという特例が出されました。そのため、都市部では2013年9月末に住宅建築の駆込み需要が数多く発生したといいます。一方、首都圏では、住宅購入の駆込みは初夏がピークでした。なぜなら、あまりに注文数が多く、業者のスケジュールが初夏には全て埋まってしまっていたからです。消費税増税は、これまで購入を考えながらも踏み切れなかった人々の心を、決断に向かわせたのです。

住宅ローン減税の拡大

また、消費税増税に伴って、住宅を購入する際の負担を軽減するために、住宅ローン減税の対象額が引き上げられることになりました。住宅ローン減税は、毎年末の住宅ローン残高の1%が10年間控除される制度です。控除額には、年間に控除できる限度額が定められていますが、その限度額が増税に併せて引き上げられることになりました。

[表]

これまでは、対象となるローン残高が最大2,000万円でした。それが最大4,000万円になります。ただし、住宅ローン減税は、支払った所得税・住民税から控除する仕組みであるため、所得が高い人ほどメリットが多くなります。

すまい給付金制度

すまい給付金制度は、住宅ローン減税の拡大ではそれほど効果が出ない(つまり、住宅ローンで借り入れる額がそもそも4,000万円も借りないと考えられる)所得層に対して、住宅購入の負担を軽減するための仕組みです。

すまい給付金は、消費税率が引き上げられる2014年4月から2019年6月までの間に引き渡され、入居が完了した住宅が対象になります。また、消費税8%の期間は年収510万以下、10%の期間は年収775万円以下が対象者となります。

給付額は、以下の図の通りです。

給付額=給付基礎額(A)×持分割合(B)

A収入額の目安(都道府県民税の所得割額)によって決定

収入額の確認方法

市区町村が発行する課税証明書

※1に記載される都道府県民税の所得割額で確認します。

  • ※1.発行市区町村により、名称が異なる場合があります。

消費税率8%の場合

  • ※2.神奈川県は他の都道府県と住民税の税率が異なるため、収入額の目安は同じですが、所得割額が上表と異なります。

消費税率10%の場合

  • 注:現金取得者の収入額(目安)の上限650万円に相当する所得割額は13.30万円です。
  • ※3.すまい給付金の実施期間は平成26年4月から平成31年6月まで実施。

収入額の目安は、扶養対象となる家族が1人(専業主婦、16歳位上の子供など)の場合をモデルに試算した結果です。

B不動産の登記事項証明書(権利部)で確認します。

  • (国土交通省 すまい給付金ホームページ)

上記のモデル試算の例では、消費税8%の期間での住宅購入で、年収425万円以下であれば30万円、10%の期間での住宅購入で、年収450万円以下なら50万円が給付されます。住宅購入を考えていたけれど増税前には踏み切れなかったという人も、住宅ローン減税やすまい給付金などの制度を参考にして、購入を検討する際の一材料とされてはいかがでしょうか。

まとめ賃貸・購入でおすすめしたい人

生活の変化に柔軟に対応できる【賃貸】

家族の数に合わせて、広さや部屋の数を変えられる【賃貸】は、まだ家族構成のハッキリしていない人や柔軟に人生を送りたい人におすすめです。

子どもができたら子供部屋のある物件、子どもが家を出て夫婦2人になった後は、狭くても安い家賃の部屋に暮らすなど、柔軟に環境を変化させることができます。

また、賃貸派は年金生活に入ってからも家賃を払い続ける必要があるので、将来の住居費負担に備えて貯蓄できる人に向いています。ただし、【賃貸】のご家庭は【購入】したご家庭よりも家計管理が甘いことがしばしばあるように感じます。それはなぜでしょうか。【購入】に踏み切ると、ローン返済という「借金」を抱えていることからプレッシャーを感じ、家計をしっかり見直してムダづかいを減らすことが背景にあるようです。そのため、家賃と更新料しかかからず、頭金の拠出などもないことから、計算上は潤沢な貯蓄があるはずの【賃貸】派の家計簿を見ると、ムダづかいが比較的多く、思ったよりも貯蓄が少ない印象があります。

安定した生活を送ることのできる人には【購入】

一方で、物件の購入は、家族構成がはっきりしている人におすすめです。生まれてくる子どもの数を前もって判断して家を購入することは難しいので、家族構成の定まっていない状況での購入はおすすめできません。

とはいえ、子どもが中学生・高校生に進学するタイミングで家を購入することも、あまりおすすめできません。確かに、良い区切りと考え、子どもの進学先の近所などで家を購入するケースはよくあります。というのは、たとえば35年返済の住宅ローンを組んでも、10年もすれば大学進学や結婚などで、子どもは家を出てしまう可能性が高いです。子どもたちの独立後、ローン返済が終わるまでの残り20年近くを夫婦2人で広い家に住むことになってしまいます。

このように考えていくと、もし家を購入するならば、子どもの小学校入学くらいのタイミングが無難と考えられます。たとえば、20代後半で結婚し、30歳で子どもが生まれた場合、35歳をめどに家を購入し、65歳までにローンを完済するといったプランなら、購入した家で家族が過ごす時間が長く、家計にも優しいプランになるのではないでしょうか。【購入】は、このように家族構成がはっきりし、安定した生活を送るプランを立てられる人におすすめです。

35年後を考えて

住まいに関して、「【賃貸】か【購入】か」という選択は誰しもいつかは真剣に考えなければならない課題のひとつです。確かに、ローン完済時点(先の例では35年後)の総住居費だけを見れば、【賃貸】のほうがコスト安なのは明らかです。しかし、35年から先を考えたときに、それ以降のローン返済の負担がない【購入】は魅力的です。そのため、どちらが得かという疑問には正解はありません。

また、会社で転勤の多い人や自分で事務所を開いている人など、生活スタイルはそれぞれ異なります。購入と賃貸の、「先に払い終わる」「後々まで支払う」というそれぞれの特性を踏まえた上で、自身のスタイルに合った選択を行い、幸せな人生を歩んで行って下さい。