賃貸と持ち家のどちらを選ぶかは、それぞれのメリットとデメリットを理解したうえで考えることが大切です。
どちらにもいい面と注意点があるため、特徴をきちんと押さえたうえで、自分に合った方を見極める必要があります。
今回は賃貸と持ち家の特徴と生涯コストをさまざまな観点から比較してみましょう。
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賃貸と持ち家を比較するうえで知っておきたいこと

賃貸と持ち家を比較するときには、物件価格や金利動向、その他の条件などによっても結果は大きく変わります。個別の事情に合わせて、ていねいに条件を設定する必要があるため、両者の特徴を正しく押さえておくことが大切です。
ただし、基本的には持ち家よりも賃貸の方が、老後の資金計画をより慎重に立てなければならないといえます。
なぜなら、持ち家は住宅ローンの完済とともに住居コストが大きく下がるのに対して、賃貸では住み続ける限り家賃が発生してしまうためです。一方、持ち家の場合は、住宅ローンを組んだら途中でプランの変更が難しいという注意点があります。
そのため、どちらがいくらお得かという金銭的な側面だけでなく、ライフプランや仕事、価値観なども踏まえて考えることが大切です。
賃貸に住み続けるメリット・デメリット

まずは、賃貸に住み続けるメリットとデメリットを見ていきましょう。
メリット
賃貸に住み続けるメリットは次のとおりです。
メリット
- 住み替えがしやすい
- 初期費用が安い
- メンテナンスコストが不要
住み替えがしやすい
賃貸物件は、何といっても気軽に住み替えできるのがメリットです。住み替えしやすいことで、以下のようなさまざまなメリットが生まれます。
- 家族構成や住環境の変化に応じて住み替えできる
- 隣人とのトラブルが起きても気軽に引越しできる
- 世帯主の年収がダウンした場合でも家賃の安い物件に引越しできる
- 最終的に老後は老人ホームや高齢者住宅に行くという選択肢も取りやすい
特に、万が一収入が低下したときでも、容易に支出をダウンサイジングできる安心感は、賃貸の大きな利点といえます。
初期費用が安い
賃貸物件の初期費用は「家賃4~6ヶ月分」が目安とされており、合計で数十万円程度となります。一方、持ち家の初期費用は「購入費用の5~10%」程度であり、合計で数百万円規模のコストがかかります。
メンテナンスコストが不要
基本的に、物件の維持・修繕費用はオーナーが支払うため、賃貸物件では負担する必要がないケースが多いです。
設備の劣化や建具の不具合などがあれば、規約に違反するような使い方をしていない限り、基本的に大家さんが費用を負担してくれます。
デメリット
賃貸に住み続けるデメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
デメリット
- 自分の資産にならない
- 老後の住み替えが難しい場合もある
- リフォームが自由に行えない
自分の資産にならない
賃貸の最大のデメリットは、やはりいくら家賃を支払っても自分の資産にならない点にあります。特に定年後は、収入に対する家賃の負担が大きく感じやすいため、やり繰りが難しくなってしまう可能性もあります。
老後の住み替えが難しい場合もある
賃貸のもうひとつの注意点が、老後の住み替え問題です。高齢になると身元の保証や健康状態などへの不安が生じるため、現役世代と比べて入居審査のハードルが高くなってしまう面があります。
そのため、老後に収入が低下し、家賃の安い物件に引越そうとしても入居を断られてしまう可能性があるのです。
賃貸物件に住み続ける場合は、住居コストだけでなく、将来的に入居審査に落ちるなど、希望する物件に住めないというリスクも想定する必要があります。
リフォームが自由に行えない
賃貸は自由にリフォームが行えないため、バリアフリー対策などを行いにくいのもデメリットです。
老後に住むのであれば、バリアフリーも配慮された物件を探すことも重要になってきますが、家賃の面から借りるのが難しいというケースも考えられます。
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持ち家を購入するメリット・デメリット

続いて、持ち家を購入する場合のメリットとデメリットも見ていきましょう。
メリット
持ち家のメリットは以下のとおりです。
メリット
- 住宅ローン完済後は資産になる
- 間取りの選択やリフォームなどの自由度が高い
- 世帯主の死亡や高度障がいといったリスクは団信でカバー可能
- 同じ負担額なら賃貸よりグレードが高くなりやすい
住宅ローン完済後は資産になる
大きなメリットは、住宅ローン完済後に資産が持てるという点にあります。
その後も税金やメンテナンス費用などは引き続き必要になりますが、住居費は生活費のなかでも大きなコストになるので、家賃がかからないのは大きな利点です。
また、マイホームを取得したという満足感、安心感が生まれ、気持ちにゆとりを保ちやすくなります。
間取りの選択やリフォームなどの自由度が高い
持ち家は間取りやデザインの選択肢が幅広く、自由に要望を反映させやすいのが魅力です。
また、購入後もライフスタイルの変化に応じてリフォームができるので、バリアフリー化などがしやすいのも特徴です。
世帯主の死亡や高度障がいといったリスクは団信でカバー可能
住宅ローンの組み方にもよりますが、融資を受ける際には原則として団体信用生命保険(団信)という生命保険に加入する必要があります。
これは、住宅ローンを返済する世帯主に死亡や高度障がいといった万が一の出来事が起こった際に、生命保険会社が代わりに残債を完済してくれる仕組みです。
家族がいる場合、世帯主の死亡はライフプランに大きな影響を与えるリスクといえますが、持ち家なら団信でカバーできるので、比較的安心感があります。
同じ負担額なら賃貸よりグレードが高くなりやすい
家賃と住宅ローンの返済額が同じ場合、持ち家の方が賃貸よりも住居のグレードが高くなりやすい面があります。そのため、持ち家の方が賃貸よりも快適な住環境を手に入れやすいといえます。
デメリット
持ち家のデメリットは次のとおりです。
デメリット
- 住み替えがしにくい
- メンテナンスコストがかかる
- 固定資産税などの税金がかかる
住み替えがしにくい
持ち家を購入したら、家族構成やライフスタイルの変化があっても、簡単に住み替えることはできません。
万が一売却する場合は、売却代金と所持金で住宅ローンの残債をすべて返さなければならないため、特に購入後間もない時点では売却のハードルが高くなります。
その一方、購入から歳月が経過すれば、その分だけ物件価値も低下し、思っている金額で売れなかったり、買い手が見つからなかったりするリスクが上がります。
メンテナンスコストがかかる
持ち家を購入した場合、その後の修繕費用やメンテナンスコストはすべて自己負担となります。マンションの場合は、さらに共用部分の修繕積立金も毎月支払う必要があるので注意が必要です。
固定資産税などの税金がかかる
持ち家の購入時には、不動産取得税や登録免許税がかかります。また、購入後は、毎年固定資産税と都市計画税といった税金がかかります。
そのため、住宅ローン計画を立てるときには、メンテナンスコストと税金の負担も踏まえて、ゆとりのある返済プランを組むことが大切です。
賃貸と持ち家の住居コストをシミュレーションで比較しよう

賃貸と持ち家の総住居費の違いについて、今回は以下の条件を基にシミュレーションを行い、比較してみましょう。
条件
- 入居期間はどちらも50年とする
- 家賃(管理費込み)と住宅ローンの負担は毎月10万円とする
火災保険料の条件は以下のように設定する
賃貸:2年に1回2万円
持ち家:10年に1回15万円(地震保険料込み)
賃貸の場合
賃貸物件の初期費用は「家賃の4~6ヶ月分」が目安とされているので、今回は家賃5ヶ月分の50万円として計算しましょう。
それ以外の住居費用としては、50年間分の家賃と2年に1回の更新費用(家賃1ヶ月分が目安)などがあります。これらを踏まえると、50年住んだときのトータルコストは以下のように計算できます。
・初期費用:50万円
・家賃:6,000万円
・更新費用:250万円
・火災保険料:50万円
総住居費:6,350万円
持ち家の場合
今回は住宅ローンの返済額を毎月10万円に設定し、35年の返済期間で組むケースを想定して計算してみましょう。
LIFULL HOME’Sの「住宅ローンシミュレーター」を使って購入可能な住宅価格を計算したところ、結果は約3,250万円となりました。(固定金利1.5%の場合)
そこで、今回は3,250万円の住宅ローンを借りるケースについて、総住居費を計算します。持ち家でかかる住居費用には、主に住宅購入額(住宅ローンの利息を含む)、諸費用、維持費・税金などがあります。
なお、利息を含んだ住宅購入額について、再び「住宅ローンシミュレーター」を使って計算すると、35年返済の場合の総支払額は「約4,180万円」となりました。
そのうえで諸費用は物件価格の5%、維持費や修繕費は年間40万円と想定して、トータルコストを計算してみましょう。
・諸費用:163万円
・住宅ローン総支払額:約4,180万円(全期間固定金利1.5%の場合)
・維持費・修繕費:2,000万円
総住居費:6,343万円
持ち家の場合、ここに住宅ローン控除による減税効果が加わるので、全体として200万~300万円程度は費用が下がると考えられます。
シミュレーション結果のとらえ方
今回のシミュレーション結果からいえば、50年間賃貸に住み続けるよりも、持ち家を購入した方が若干負担額は少なくなることが分かります。
その点を踏まえると、資産として手元に物件を残せる持ち家の方が、トータルコストとしては低く済むと判断できるでしょう。
ただし、賃貸は同じところに住み続けることを前提にしているので、「子どもが独立したらより安い部屋に引越す」といった選択肢が残される分、費用をもっと抑えらえる可能性はあります。
前提条件をどのように設定すべきかは、個人や世帯の価値観によっても異なるので、慎重に比較することが大切です。
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賃貸に向いている人・持ち家に向いている人

最後に、賃貸と持ち家のそれぞれに向いている人の特徴を見ていきましょう。
賃貸に向いている人
- ライフプランに不確定な要素が多い人
- 住居のメンテナンスが面倒な人
- 住宅ローンの長期的な負担に抵抗がある人
賃貸に向いているのは、以下のようなライフプランに不確定な要素が多い場合です。
- 転勤や転職の可能性がある
- 実家の近くに越さなければならない可能性がある
- 将来的に田舎暮らしや海外移住をしてみたい
また、住居のメンテナンスや長期の住宅ローン返済が負担に感じられてしまう場合は、賃貸の方が住みやすいと感じられるでしょう。
持ち家に向いている人
- 収入が安定している人
- 定年退職までにローン返済のめどをつけられる人
- 老後の住居費について悩みを軽減したい人
- DIYが好きな人
住宅ローンを組むためには、安定的かつ一定の収入が必要なので、まずは収入条件をクリアしているかどうかが重要な判断基準となります。
また、定年後に多くのローンが残っていると、完済の難易度が上昇してしまうので、それまでに返済のめどをつけられることも重要な条件です。
金銭的なポイントを除けば、DIYが好きな人や自由な間取り・デザインを求める人なども持ち家に向いています。
まとめ

- 賃貸と持ち家は前提条件によってどちらがお得かが変わる
- 賃貸は住み替えがしやすい半面、老後の資産設計の難易度が上がる
- 持ち家は住み替えが難しい半面、老後の住居コストを抑えられるのが安心
- 賃貸と持ち家の住居費シミュレーションを行い、トータルコストを比較してみよう
- 賃貸と持ち家のそれぞれに適している人の特徴を押さえておこう
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更新日: / 公開日:2016.09.26










