通勤電車の利用者が感じるストレスの一つ「電車遅延」

通勤電車の利用者が感じるストレスの一つ「電車遅延」。一体、どの路線が最も遅延しやすいのだろうか通勤電車の利用者が感じるストレスの一つ「電車遅延」。一体、どの路線が最も遅延しやすいのだろうか

電車を利用して通勤する人々にとって、首都圏をはじめとする都市部の電車利用者が感じるストレスの一つが「電車遅延」ではないだろうか。
目的地への到着が遅れるのはもちろんのこと、電車遅延や運転見合わせによって何十万人もの人々の仕事に影響を与える場合もある。

国土交通省は、近年そうした鉄道輸送の信頼性について、これまで東京圏の都市鉄道が、稠密な運行ダイヤとその定時性を確保してきたという点については世界に誇るべきものであるものの、3分から10分程度の慢性的に発生している"短時間の遅れ"については、輸送力確保や相互直通の促進に続く重要な政策課題と位置づけている。

今回の調査では、国土交通省が2016年4月7日に公開した「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について(案)」のうち、「遅延対策ワーキング・グループ最終取りまとめ」から、首都圏鉄道の遅延証明書の発行状況を見てみる。
調査期間中、いったいどの路線が最も遅延率が高く、そして、なぜ遅延は発生してしまったのだろうか?

調査期間中、遅延証明書の発行率が高かった路線は?

各鉄道会社が発行している遅延証明書の発行割合を見てみると、首都圏の路線においては、平日の3分の2以上の日、全51路線中16路線(約30%)で"慢性的な"遅延が発生していることがわかる。このうち、第1位は「東京メトロ半蔵門線」で遅延証明書発行率はなんと100%。平日20日間の調査機関のうち、遅延証明書が毎日発行されたことになる。
続けて第2位が「東京メトロ千代田線」で95%、第3位が「JR山手線(全線)」で90%となっており、上位1位、2位が地下鉄という結果になった。

しかし、4位以下を見ると、
【遅延証明書発行率・・・85%】
・東京メトロ南北線、JR京浜東北線、JR中央快速線・中央本線、JR横須賀線・総武快速線

【遅延証明書発行率・・・80%】
JR東海道線、JR中央線・総武線、JR埼京線・川越線

と、JRの遅延が目立っている。

全体的な傾向として、JR、私鉄、地下鉄を比較した場合、私鉄の遅延が少なく、最も高い割合の東急田園都市線の55%をはじめ、東武の5%~45%、京浜急行の0%~10%にとどまっている。
また、上位1位、2位となった地下鉄では、都営浅草線が25%、都営新宿線が30%、都営大江戸線が20%に留まった。同じ地下鉄でも東京メトロより都営地下鉄が遅れにくい傾向があることがわかる。この背景には、東京メトロ半蔵門線が東武伊勢崎線と東急田園都市線に、東京メトロ千代田線が小田急小田原線とJR常磐線に乗り入れているという、郊外からの直通運転を実施している路線であることが理由の一つとして挙げられる。

参照:国土交通省 首都圏11事業者51路線の平成25年11月の平日20日間における遅延証明書の発行状況参照:国土交通省 首都圏11事業者51路線の平成25年11月の平日20日間における遅延証明書の発行状況

遅延の原因の6割以上は、利用者によるもの?

電車の遅延については、突発的な理由と慢性的な理由の、主に2つに大別することができる。このうち、突発的な遅延理由となる「輸送障害(事故以外の原因で30分以上の遅れが発生したもの等)」の内訳としては、動物の侵入や線路立ち入りなど事業者以外に原因のある遅延に加え、風水害、雪害、地震といった自然災害を原因とするものが挙げられる。

では、慢性的な遅延の理由についてはどうだろうか。
報告によると、3分以上30分以下の遅れのうち、主要19路線の原因の94%は鉄道事業者側ではなく、「部外要因」であるという。中でも、混雑、混雑を背景としたドア挟みが34%、急病人が12%、他、落とし物などによる線路支障など、実に65%が"利用者"に起因する原因によって占められている。
こうした短時間の慢性的な遅れについて、「都心部駅周辺の高度集積化や沿線の宅地開発に伴い、鉄道の適正輸送能力や駅の容量を超えて、過度に利用者が集中することによる"構造的な問題"」としている。
つまり、駅の利用規模の増大に対して、鉄道や駅の設備が追いついておらず、ホームの混雑による停車時間の超過という構造になってしまっているという訳だ。

部内、部外の別では、部外要因が94%、部内要因が6%となっており、部外要因の中でも、混雑・混雑を背景としたドア挟み(計34%)、他社線影響(21%)が多い部内、部外の別では、部外要因が94%、部内要因が6%となっており、部外要因の中でも、混雑・混雑を背景としたドア挟み(計34%)、他社線影響(21%)が多い

遅延解消には、ハード対策に加えて利用者の協働も必要

こうした慢性的な遅延を解消するために、各鉄道会社も様々な取組みを行っている。
JR東日本では、山手線や中央線などを中心に、定員が従来の車両と比べて約1割多い「拡幅車両」を導入したり、東武東上線「朝霞台駅」では、階段、エスカレーター付近に配置していたベンチを撤去、移設した。その他にも、東京メトロ東西線「南砂町駅」では、ホームを増設し、同一方向の列車が交互に発着することが可能になったという。
改良車両の導入やホーム増設といったハード対策は有効とする一方で、啓発活動をはじめとするソフト対策も重要な取組みとして捉えられている。東京メトロでは、ホーム要員の増員に加えて、同時間帯の利用者集中を避けるために、「早起きキャンペーン」として、比較的混雑率の低い早朝の時間帯の利用を推進する取組みを過去2回実施している。

ただ、慢性的な遅れの7割が、駆け込み乗車によるドア挟まりや落し物といった利用者に起因していることからも「鉄道利用者との協働」という事も、重要な対策の一つである。「駆け込み乗車はご遠慮下さい」、「ご乗車されましたら、立ち止まらず車内の奥までお進み下さい」という車内アナウンスからもわかるように、鉄道会社は利用者に向け事故を未然に防いだり、混雑を緩和するために様々な啓蒙活動を行っている。駆け込み乗車の防止に加えて、昨今はホーム上でスマートフォンを操作しながら歩行をする"ながらスマホ"による事故が報じられることも多くなった。

近年は、スマートフォンのアプリなどによって、電車利用者が列車の運行状況をほぼリアルタイムで入手できるケースも多く、利用者自身が混雑が予想される路線を避けるなどの対策も可能である。
鉄道会社によるハード対策、高密度のダイヤ設計のあり方の議論に加えて、ドア挟みや落し物、車内での客同士のトラブルなど、利用者自身の行動を改善し"協働"していくことが、首都圏の電車遅延解消に繋がるのではないだろうか。

電車遅延は、利用者の協力により改善できる余地が大きいといえるようだ電車遅延は、利用者の協力により改善できる余地が大きいといえるようだ

調査概要

第20回 東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会 配付資料
-遅延対策ワーキング・グループ 報告資料から-
発表:総務省 平成28年4月7日

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2016年 07月26日 11時06分