大都市交通センサス調査とは?

首都圏や中京、近畿の交通機関を利用している人には、昨年11月に配布された「大都市交通センサス調査」の調査票を受け取った人もいるかもしれない。
「大都市交通センサス調査」は、国土交通省が1960年から5年ごとに三大都市圏における鉄道・バスなどの公共輸送機関の利用実態を把握し、公共交通施策の検討に役立てることを目的として、実施している調査である。調査結果は、国や地方公共団体の都市計画や、通勤・通学時の混雑緩和、乗り継ぎ円滑化などの様々な交通施策の基礎資料として活用される。

また調査結果を基に、新線や新駅の開通によりどのような影響が発生したかの分析も実施されている。2013年に発表された「大都市交通センサス分析調査」では、2005年のつくばエクスプレスの開業による交通の変化についての報告がされている。分析によると、つくばエクスプレス沿線地域から都心部への平均所要時間の短縮や、常磐線快速利用からつくばエクスプレス利用へと定期券利用者がシフトしており、大規模な交通の動きがわかる内容になっている。

今回はこの「大都市交通センサス分析調査」より、住まいとの関係性が深い通勤時間の変化について見てみたい。

首都圏の通勤・通学時間が延びている

鉄道定期券を利用して通勤している人の平均通勤時間の推移を地域ごとに見ると、首都圏では1995年から2005年にかけて、66.6分~66.9分と横ばいだったが2010年には68.8分と延びている。
首都圏は通学時間についても、2005年の72.1分から2010年は76.9分と延びており、1995年の77分並みの所要時間になっている。
中京圏、近畿圏では、1995年から2010年にかけて、通勤所要時間は横ばい、通学所要時間は僅かに短縮している。(下グラフ参照)

首都圏では通平均勤・通学時間が延びたがその主な要因は、通勤所要時間の長い利用者の増加だ。所要時間が74分までの利用者は全て減少しているのに対し、所要時間が90~104分は78万人から83万人(6%増)、105~119分は37万人から43万人(16%増)と増加している。首都圏の交通機関利用者が805万人から788万人に減少する中、長距離の通勤・通学者が相対的に増え、また絶対数も増加している。首都圏では都県をまたぐような遠距離地域間の交通流動が増えており、一つの要因として考えられる。

通勤所要時間を属性別に見ると傾向に違いが出てくる。首都圏では男性の通勤所要時間の平均が71.7分、女性は63.1分。男性よりも女性の方が短いのは他の地域も同様で、中京は男性平均63.6分、女性は56.3分。近畿は男性平均66分、女性は56.5分となっている。また年齢も含めた傾向を見ると、男性は高齢になるほど通勤所要時間が長くなる傾向がみられ、女性は高齢になるほど所要時間が短くなる傾向がある。より女性の方が職住近接となる住まい、もしくは職場を選択していることがうかがえる。

平成24年度大都市交通センサス分析調査より<br>
鉄道通勤・通学者の所要時間の変化(鉄道定期券利用者)平成24年度大都市交通センサス分析調査より
鉄道通勤・通学者の所要時間の変化(鉄道定期券利用者)

睡眠時間と仕事・学業の時間が減少、通勤時間含む移動時間増加

「大都市交通センサス分析調査」では、1日の生活を行動別に分けた分析についても触れられている。
※行動は「睡眠」、「食事・家事・育児など」、「通勤通学」、「仕事・学業」、「移動(通勤通学以外)」、「買い物・趣味」の6つの項目に分けられている。

この分析は対象が有職者、かつ平日の過ごし方に限定され、2001年度から比較して生活時間の比重の変化が分かる内容となっている。地域や性別により傾向に違いはあるものの、共通している点もあり興味深い。

2001年から2011年までの変化をみてみると、全ての地域で減少したのが「睡眠」だった。指数は2001年を100とすると、おおむねの地域と性別で90程度となっている。また、共通して減少しているのは「仕事・学業」で、全体の平均は94だった。

この睡眠や仕事にかけられていた時間は、どういった行動に変化したのだろうか。三大都市圏を平均すると、増えた指数が最も大きいのは「通勤通学」で平均指数は142となっている。次いで「移動(通勤通学以外)」は136だった。同様に「食事・家事・育児など」と「買い物・趣味」に時間をかける人が増えている。

「通勤通学」にかける時間が増えた背景としては、都心エリアにおける物件価格の高騰、世帯年収の伸び悩みにより郊外に住む人が増えたことが考えられる。また、特に首都圏では相互直通運転をしている路線が増え、乗り換えが減り、通勤が長距離であってもさほど苦にならない環境がある。電車内の時間を睡眠に充てたり、打合せの準備などをしたり、またスマートフォンの普及もあり有効に利用している人も多くいるのではないだろうか。

仕事にかける1日の割合は大きく、減らしたくてもなかなか減らせないものだが、とはいえ睡眠時間を削るのにも限界がある。
内閣府は、仕事と生活の調和、ワークライフバランスの実現を推し進めており、今後はより場所や時間にとらわれない在宅勤務など、働き方の選択肢が徐々に増えていく方向に向かっている。
通勤時間、そして一日の行動時間は今度どう変化するのだろうか?次回の大都市交通センサスの公表が待たれる。

行動種類別生活時間の変化 ※2001年を100とした指標行動種類別生活時間の変化 ※2001年を100とした指標
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2016年 02月01日 11時10分