障害者の自立を手助けするための支援

2012(平成24)年に施行された「障害者自立支援法等の改正法」によって、障害のある人も地域で安心して暮らせる社会を実現させる取組みが動き出している。それまで障害者認定を受けた人は、施設や家庭内で介護ケアを受けながら生活することが大半だった。法の施行によって、障害のある人も地域の一員としてともに生きる社会を目指して、障害者福祉サービスをはじめとする障害保健福祉施策が推進されている。

自分たちのことは自分たちで決める――住まいだけでなく、障害のある人にも選択肢が広がりつつある今、それを支援する事業が増え始めている。その中から、身体障害者の方に向けたものを中心に紹介をしていこう。

まずは相談から。さまざまな相談窓口

地域の中で住むことは、障害の度合いや生活環境といった、その人の置かれている状況を総合的に見て判断する必要がある。そのためには、まずは専門とする窓口への相談することが重要だ。代表的な窓口として、基幹相談支援センター、地域相談支援事業所、住宅確保要配慮者居住支援法人が挙げられる。

基幹相談支援センターは、いわば地域における障害者の総合窓口だ。全国の市区町村に設置されていて、相談支援事業所や地域包括支援センター、さらには地域の病院や学校などの各施設と連携を取りながら、その地域に住む障害者の方々やその家族の相談・サポートを行う、地域の障害者福祉の中核を担う場所といえるだろう。
各自治体ないし社会福祉協議会が自治体から委託されて運営している。施設の所在の確認には、「地域名+基幹相談支援センター」で検索、あるいは社会福祉協議会の一覧を参照してほしい。

複雑な障害者向け福祉サービスの利用を手伝うのが地域相談支援事業所だ。事業所にはそれぞれ専門分野があるが、「地域相談支援」を扱う事業所では、居住地域の相談と支援方法の計画立案ができる。
独立行政法人福祉医療機構が運営する「障害福祉サービス等情報検索」では、全国各地の事業所や施設をジャンル別に検索できる。住みたい市区町村を選択したのち、「サービスを選択」から「相談系サービス」内の「地域相談支援(地域移行支援)」「地域相談支援(地域定着支援)」のチェックボックスにチェックを入れることで、地図上に場所と事業所の連絡先が表示される。

新たな住まいにセーフティネット住宅を考えている場合は、住宅確保要配慮者居住支援法人も相談窓口の選択肢になる。住宅確保要配慮者居住支援法人とは、民間賃貸への入居に必要な住宅情報の提供・相談、見守りなどの生活支援などを実施する法人だ。これらは国土交通省HP内の全国の居住支援法人の一覧から探すことができる。

また地域の福祉の窓口として、市区町村の役所の福祉課を利用するのもひとつの方法だ。ただし、ひとくちに福祉といっても対応が多部署にまたがる場合もある。地域差はあれ、部屋探しのサポート事業は都市整備部になるなど、すべてがワンストップとはいかない可能性があることを念頭に置いて、相談に臨んだほうがよいだろう。

相談・必要なサポートに合わせた相談窓口を探そう相談・必要なサポートに合わせた相談窓口を探そう

“地域で暮らす”をかなえる施設以外の住まいの種類

通常の賃貸住宅の場合、先に触れたセーフティネット住宅を利用することができ、「セーフティネット住宅情報提供システム」で物件を検索することができる。また、セーフティネット住宅に限らず、昨今では一般の不動産会社や不動産ポータルサイトでも、バリアフリー物件を探せるようになってきた。
たとえばLIFULLにおいても、バリアフリー設計の賃貸物件が特集されていたり、最近ではFRIENDLY DOORに障害者カテゴリーが掲載されてたりと、検索をしやすくなる取組みが進められている。
さらに、バリアフリー物件でなかったとしても、大家さんや管理会社の同意のうえで介護リフトの設置、トイレや洗面台の改修をしてお部屋を借りるという方法もある。その際の改修費用は賃借人の負担になるが、自治体からの助成などを活用することで経済的な負担を減らすことは可能である(助成に関しては後述)。

公営住宅の場合は家賃改定特別措置があったり、団地再生事業に伴う減額制度が適用されたり、優先申込みができたり、という優遇があるのがうれしいポイントだろう。

上記のような住宅のほか、自立に向けた練習にもなる共同生活の場として、グループホーム、サテライト型住居といった住まいもある。現在は施設に入居している方でも、施設入居支援で自立した生活の訓練によって、将来的には地域で暮らせるという自信につながるだろう。

自立した生活のためにはバリアフリーの住居であることが好ましい自立した生活のためにはバリアフリーの住居であることが好ましい

自立した生活を支えてくれる各種サービス

自立した生活とはいえ、ヘルパーなどの介助は欠かせない。障害のある日常を支えるための障害福祉サービスにはどのようなものがあるだろうか。

出典:厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/naiyou.html出典:厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/naiyou.html

身体障害のある方が自立するためには、介護給付の居宅介護が必要になる。これは住まいにヘルパーが訪問してくれるサービスだが、利用者が支払う費用の一部は国や自治体が負担してくれる。そのほか、単身者や家族からの介助を受けられない方向けに、自立生活援助というサービスがある。一人暮らしに必要な理解力・生活力などを補うため、ケアマネジャーが定期的に訪問して日常生活の課題を把握し、必要な支援を決定するものだ。

自立生活に向けてケアハウスなどで共同生活を送る人には、共同生活援助というサービスもある。これは、共同生活を行う住居で、日常生活上の援助、主に夜間の排泄・入浴・食事などの介護を行うものだ。
また、自治体とは別事業で、社会福祉協議会が実施する日常生活自立支援事業というサービスも提供されている。こちらは認知・知的・精神に障害のある方向けのもので、日常生活を営むのに必要なサービスを利用するためのサポートを行う事業で、さまざまな障害に合わせたサービス事業が展開されている。

各種サービスの利用手続きについては、厚生労働省のウェブページでサービス利用の手順が紹介されている。申請前に確認しておきたい。

障害者の住宅にまつわる補助

障害者支援として、障害基礎年金、特別障害者手当といった補助があるが、住まいに関しても多様な助成金制度がある。

身体障害において最も重要なのが、借りる部屋がバリアフリー化されているかだ。集合住宅の入り口にスロープを設置する、居室の段差解消、浴室内や居室内にリフトを設置する……など、障害に合わせたバリアフリー化にはかなりの費用がかかる。すべてを自費でまかなうのはかなり大変だ。そこで、設備に関する助成制度を利用することで、資金面のハードルを下げることができるだろう。
具体的には、日常生活用具給付等事業(国が5割、都道府県が2.5割の比率を目安に合計で20万円まで助成)、生活福祉資金貸付制度(連帯保証人が立てられる場合、無利子で借りることが可能)、介護保険制度の住宅改修費(収入に応じて1~3割を自己負担。上限20万円まで)といったものがある。自治体によっては独自の給付を行っている場合もあるので、生活に必要な設備を把握したうえで、福祉窓口で申請しよう。

そのほか、グループホームやケアホームの場合には、基金を利用した敷金・礼金補助(入居者1人当たり13.3万円以内)や、グループホームやケアホーム入居者などに対する家賃補助(一部の地方自治体による。平均月2~3万円程度)のような制度がある。セーフティネット住宅を利用すると、国土交通省の地域優良賃貸住宅制度の家賃低廉化措置(一部の地方自治体による。月最大4万円)によって、家賃が低く抑えられるケースもあるようだ。

自分が自分らしくいられる空間は、誰かに用意されるものではなく、自分からつくり上げていくものだ。それは障害があっても、なくても、同じだろう。多様に用意された障害者向けの制度は、要介護者が安全で快適な暮らしを維持するための力添えであり、「地域で暮らしたい」という気持ちに寄り添うものだ。まずは「してみたい暮らし」を、より具体的にイメージしてみてはいかがだろうか。


※本記事の内容は、LIFULL HOME'S ACTION FOR ALL note 2021年12月22日 掲載当時のものです。

■「障害者」の表記について
FRIENDLY DOORでは、障害者の方からのヒアリングを行う中で、「自身が持つ障害により社会参加の制限等を受けているので、『障がい者』とにごすのでなく、『障害者』と表記してほしい」という要望をいただきました。当事者の方々の思いに寄り添うとともに、当事者の方の社会参加を阻むさまざまな障害に真摯に向き合い、解決していくことを目指して、「障害者」という表記を使用しています。

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【LIFULL HOME'S ACTION FOR ALL】は、「FRIENDLY DOOR/フレンドリードア」「えらんでエール」のプロジェクトを通じて、国籍や年齢、性別など、個々のバックグラウンドにかかわらず、誰もが自分らしく「したい暮らし」に出会える世界の実現を目指して取り組んでいます。

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