コロナ禍で郊外志向が強まった人は、23区北部と三多摩に多い

「コロナ後の意識と行動の変化」調査の第4回目。この調査は、株式会社カルチャースタディーズ研究所では三菱総合研究所が毎年行っている3万人調査への追加調査として2022年1月に行った(調査主体:カルチャースタディーズ研究所コンソーシアム。1都3県18〜54歳男女2,000人対象)に行ったものである。

カルチャースタディーズ研究所コンソーシアム「コロナ後の意識と行動の変化調査」では110の選択肢の中に「 コロナを理由に23区内から23区外へ引っ越した」「コロナを理由に23区内都心部から23区内周辺部(大田区・世田谷区・杉並区・練馬区・板橋区・北区・足立区・葛飾区・江戸川区)へ引越した」「23区内より郊外がいいなという気持ちが増した」という選択肢を入れてある。

この3選択肢のいずれかにイエスと回答した人を「郊外志向のある人」と定義すると、136人あり、男女がちょうど68人ずつだった。
そこでこの「郊外志向のある人」が全体と比べてどんな意識と行動の変化を見せたのかを分析してみよう。

最も多いのは当然ながら「23区内より郊外がいいなという気持ちが増した」であり、郊外志向のある女性の94%が選んだ。郊外志向のある男性も79%がこれを選択した。男女全体では6%ほどなので、非常に差が大きい。

居住地別にこの回答をした人を見ると、23区北部(荒川区、足立区、北区、板橋区、練馬区)と三多摩の人の割合が多い。
したがって、さいたま方面への引っ越しを考えそうな人たちである。近年さいたま市など埼玉県南部の住みたい街としての人気が上昇しているが、それを傍証する結果である。また三多摩の人は既に郊外の住人なので、三多摩への満足度が高まったと考えられる。

資料:カルチャースタディーズ研究所コンソーシアム「コロナ後の意識と行動の変化調査」2022資料:カルチャースタディーズ研究所コンソーシアム「コロナ後の意識と行動の変化調査」2022

郊外志向のある女性は、コロナ後に住環境への意識が大きく変化した

この郊外志向のある人の具体的なコロナ後の意識と行動の変化としては、女性では
・自分の好きなことをして人生を楽しむことが大事だ、という気持ちが増した
・家族関係・夫婦関係が大事だという気持ちが増した
・無駄な物を買わないようにしたいという気持ちが増した
・料理をする時間や料理の種類が増えた

が多い。

男女ともに多いのは「のんびりマイペースで生きることが大事だという気持ちが増した」「お金をあまり使わない暮らしをしたいという気持ちが増した」である。
以上はかなり根本的な意識・価値観の変化であるが、住まいに関わる選択肢では、
・毎日通勤するのは嫌だという気持ちが増した
・静かな環境に住みたい気持ちが増した
・今より1部屋以上多い家に住みたい気持ちが増した
・ひとりになりたいと思う気持ちが増した
・ベランダ・バルコニー・縁側などがあって新鮮な空気が入ったり、窓からの眺めが良い家に住みたい気持ちが増した
・毎日通勤しないなら、特急が停まるなど便利な駅に高い家賃で「住まなくてもよい」と思うようになった

が、主に女性で多い。快適な住環境、住まい、働き方、生活の仕方を求める意識が、コロナにより特に女性の中で拡大したといえる。

資料:カルチャースタディーズ研究所コンソーシアム「コロナ後の意識と行動の変化調査」2022資料:カルチャースタディーズ研究所コンソーシアム「コロナ後の意識と行動の変化調査」2022

リモートワークを機に広々した開放的な住空間を求めるようになった

また本調査では「職場に行かず自宅などでリモートワークをすることが勤務日のだいたい半分以上あるようになった」「職場に行かず自宅などでリモートワークをすることが週1,2回あるようになった」という選択肢にも回答してもらっており、そのいずれかにイエスと答えた人を分母に集計をしてみた。そのうち住環境、住生活関連の選択肢だけを表にしたのが下表である。

リモートワークの実施によって「毎日通勤するのは嫌だという気持ちが増した」が54%というのが圧倒的であるが、次いで「今より1部屋以上多い家に住みたい気持ちが増した」が18%と多かった。

また「静かな環境に住みたい気持ちが増した」「ひとりになれる静かな喫茶店・カフェ・ブックカフェが家の近所に欲しいと思うようになった」という静かな環境を求める人も多い。
さらに「床面積が広い家に住みたい気持ちが増した」「ベランダ・バルコニー・縁側などがあって新鮮な空気が入ったり、窓からの眺めが良い家に住みたい気持ちが増した」「毎日通勤しないなら、特急が停まるなど便利な駅に高い家賃で「住まなくてもよい」と思うようになった」「23区内より郊外がいいなという気持ちが増した」「銭湯やスーパー銭湯が家の近所に欲しいと思うようになった」「庭の広い家に住みたい気持ちが増した」が7〜10%いた。
リモートワークを機に広々した開放的な住空間を求めるようになったことがわかる。
また「自分の住んでいる地域への関心や愛着が増えた」「自分の住んでいる地域やマンションの問題に気づくようになった」も8%あり、地域社会への関心も芽生えたようである。

資料:カルチャースタディーズ研究所コンソーシアム「コロナ後の意識と行動の変化調査」2022資料:カルチャースタディーズ研究所コンソーシアム「コロナ後の意識と行動の変化調査」2022

年収によるコロナ後の意識と行動の変化の違い

次に年収によるコロナ後の意識と行動の変化の違いを調べてみた。

年収の個人差は女性より男性で多いので、結果は男性のほうが明快であり、また意外な結果も出た。
コロナ後の意識と行動の変化の選択肢別に男性の年収を見ると、最上位の800万円以上の割合が多いのは(仕事の内容それ自体に関する変化の選択肢を除くと)以下の選択肢である。

・市民農園・地元の農家の野菜を買える直売所が家の近所に欲しいと思うようになった
・仕事用テーブル・デスク・イス・棚などを買い換え・買い増しした
・基礎化粧品の購入金額が増えた
・仕事用スーツ・シャツ・ブラウス・靴の購入が減った
・品質・デザイン・エコ・素材などにこだわりを持った「個人店」が家の近所に欲しいと思うようになった
・仕事専用の部屋のある家に住みたい気持ちが増した
・コーヒーメーカー・エスプレッソマシン・ジューサー・ミキサーの買い換え・買い増しをした
・家族関係・夫婦関係が大事だという気持ちが増した
・商店街の近くの家に住みたい気持ちが増した
・カジュアルなウエア・靴の購入が増えた
・家の近所に夜になってから楽しめる場所、店が欲しいと思うようになった


資料:カルチャースタディーズ研究所コンソーシアム「コロナ後の意識と行動の変化調査」2022資料:カルチャースタディーズ研究所コンソーシアム「コロナ後の意識と行動の変化調査」2022

年収の高い男性は、コロナにより生活の新しい豊かさを求める気持ちが増した

こうしてみると、年収の高い男性は、コロナを機に、仕事用の家具を買い増したり、仕事用の部屋が欲しいと思っただけでなく、家の周りに市民農園、農家の特売所、商店街、夜に楽しめる店、気分転換ができる公園などをほしがるようになったことがわかる。

またカジュアルなウエア・靴だけでなく、基礎化粧品の購入金額が増え、コーヒーメーカー・エスプレッソマシン・ジューサー・ミキサーあるいは掃除機・掃除ロボット・エアコン・空気清浄機の買い換え・買い増しもしている。コロナ禍が新しい消費を生み出した面もあるのだ。

気分転換にコーヒーやスムージーを飲むことも増えただろうから、コーヒーメーカー・エスプレッソマシン・ジューサー・ミキサーを買うのはわかるし、自宅のほこりが気になって掃除機・掃除ロボット・エアコン・空気清浄機を買うのもわかるが、基礎化粧品が増えたのはなぜだろう。

おそらくリモート会議をすると、照明の当て方で顔や首などのしわやシミが目立つことに気がついた男性が多かったのではないか。そういえば最近テレビコマーシャルでも男性のシミ取りクリームのコマーシャルが増えた。

こうしてみると、女性だけでなく、男性についても特に年収の高い層では、コロナ禍になったことにより家を中心とした生活の新しい豊かさを求める気持ちが増したといえそうである。

高年収の男性は、コロナ禍で家の周りに気分転換ができる公園などをほしがるようになった
高年収の男性は、コロナ禍で家の周りに気分転換ができる公園などをほしがるようになった

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