栄ミナミにできた新施設BAUM HAUS(バウムハウス)
2021年3月、バウムクーヘンで有名な株式会社ユーハイムが、フードホールを併設したシェアオフィスをオープンさせた。百貨店、ファッションビル、飲食店が立ち並ぶ「栄ミナミ」エリアにできたBAUM HAUS(バウムハウス)だ。(以下、バウムハウス)
1階にはバウムクーヘン専用AIオーブン“THEO(テオ)”を使った焼きたてのバウムクーヘンが食べられるカフェや、デリ、ベーカリーを併設したフードホール「BAUM HAUS EAT」、2階はアバターロボットが回遊するシェアオフィス「BAUM HAUS WORK」という造りになっている。
リリースされたパンフレットには、『1919年にドイツのヴァイマールで開校し、今日のアートとデザインに大きな影響を及ぼした学校「Bauhaus(バウハウス)」のように実験精神を持って、テクノロジーを用いながら新しい価値観にチャレンジできる、オープンイノベーションの場を目指します』とある。
洋菓子の会社が、何を目指そうとしているのか。バウムハウスでどんな実験・挑戦をしようとしているのか取材してみた。
AI職人が作る焼きたてバウムクーヘンが食べられる初の施設
食の未来をテーマにした実験と挑戦の場へ
リモートで取材させていただいた町田さん。
「BAUM HAUSをきっかけに、食だけでなくさまざまな分野の方たちとアイデアや技術の交換をしていくことで新しいものを生み出していきたいと思っています」と話していた
ユーハイム株式会社 海外企画室の町田啓さんにバウムハウス誕生のいきさつを聞いてみた。
「計画が持ち上がったのは2018年です。ちょうどその頃、私たちは食とITの融合(フードテック)を目指してバウムクーヘン専用のAIオーブン“THEO(テオ)”を完成させようとしていました。そこで、フードテックによるインキュベーションをテーマに新しい場づくりをしてみようということになり、 “食の未来をテーマにした複合施設”というバウムハウスのコンセプトが生まれました」
と振り返る。
そもそもなぜユーハイムがフードテックの分野に力を入れているのだろうか。
「2016年に弊社の代表が南アフリカを訪れたときに感じた、『地球の裏側でも美味しいお菓子を食べてもらいたい』という想いがきっかけです。日本で作ったものを現地に送るというやり方では輸送費やエネルギー効率を考えると無駄が多い。だったら、ネットワークを使って遠隔操作できるロボットのようなオーブンを作ったらどうだろう、という発想から“THEO”の開発がスタートしました」(町田さん)
お菓子を食べると心が満たされるのは、私だけではないだろう。幸せな気分になれるお菓子をどうしたら世界中に届けられるか―、そんな想いがフードテックを手掛けるエネルギーになっているのだという。まだ遠隔操作はできないものの、全自動で焼ける“THEO”が完成したことで「当初は“絵に描いた餅”だったものが、少しずつ現実に近づいている」と町田さんは話す。
こうした背景からバウムハウス内には国内外のフード系スタートアップ企業を支援する組織「フードテックイノベーションセンター」のショールームも設置されることになった。
バウムクーヘン専用AIオーブン“THEO”の仕事ぶりを見ることができるフードホール
ユーハイムが開発したバウムクーヘン専用AI オーブン“THEO”。職人が焼く生地の焼き具合を、各層ごとに画像センサーで解析することで、その技術をAIに機械学習させデータ化。無人で職人と同等レベルのバウムクーヘンを焼き上げることができるのだという施設の概要を紹介していこう。
まず1階のフードホール。4つのショップで構成されたフードホールは地域に開かれた「食堂」をイメージしているという。見どころは、ユーハイム直営の「THEO’S CAFE」。前述した専用AIオーブン“THEO”が作る焼きたてのバウムクーヘンが食べられるカフェだ。約5年の歳月をかけて作られた“THEO”がせっせとバウムクーヘンを焼く工程を間近で見ることができ、ちょっとした工場見学気分が味わえる。
ほかには新鮮な野菜を使用した日替わり惣菜を提供する「Deli BAUM HAUS」と、ベーカリーの「DONQ EDITER(ドンク・エディテ)」が常設。施設を案内してくれたバウムハウスマネージャーの和多野大介さんによると
「どちらの店舗も食材にはこだわりを持っています。Deliのランチボックスは野菜中心なので女性の方に人気がありますし、毎日食べていると体が軽くなった気がしますよ」とのこと。
また、町田さんは
「農薬・化学肥料を使用しないで育てられた野菜をはじめ、放牧の豚など育成法や製造法にこだわった素材を使用しています。普段はなかなかそういった素材に触れる機会は少ないと思いますので、自然の素材のおいしさを体感してもらいたいと思います」
と食に対するこだわりについて話してくれた。
アバターロボットが回遊する「アバターパーク」
2階は「BAUM HAUS WORK」。最新テクノロジーを体験できる「アバターパーク」が設置されている。公園に見立てたエリアでアバターロボットnewme(ニューミー)が動き回る「BAUM HAUS」の目玉スペースだ。
アバターロボットとはいったい何なのか―。簡単にいうと自分の分身のようなもので、newmeにアクセスし、上下に首を動かしたり前後左右に移動させたりと、自分の分身のように操りながらコミュニケーションを図れるのだという。
例えば、バウムハウスに入居しているオフィスの場合、リモートワーク中の社員がnewmeで出社し、出勤している同僚たちと会議ができたり、アバターパークで開催されるイベントに自宅からアバターインして参加し自身で操作しながら自由に見学することも可能だ。
「今まで、時間がないとか外出がはばかられるという理由でイベントに参加できなかった方も、自宅にいながら出席することができ、よりリアルに体感できるようになると思います」(和多野さん)
「newmeと人が新しい関係を生み出すことがアバターパークのコンセプトです。この場所で“人と人”が会議をしていたり“人とアバター”が商談をしたりと、自然に人とロボットが共存する空間を作ろうとしています。
シェアオフィスを使ってくださるお客さまが、それぞれのアイデアでアバターロボットを有効的に使っていただければいいなと思っています」
と和多野さんは話していた。
サードプレイスとして利用できるシェアオフィス
「アバターパーク」の奥が、会員制のコワーキングスペース、ワークラウンジ、プライベートオフィスで構成されたシェアオフィスフロアとなる。
1階にはコンシェルジュが常駐(平日10:00~18:00)し、来客対応をしてくれる。ワークラウンジ以外の作業スぺースは24時間利用可能で、複合機や個人ロッカー等の設備も充実。現在はサードプレイスとしての利用が多いそうだ。
フリーデスク会員は応接室を持たないが、来客時には1階のカフェを利用できるし、わざわざ出かけずとも館内のカフェでお茶をしたりミーティングをしたりできるのは気軽でいい。天気がよければ屋外のテラススペースの利用も可能。館内を自由に使いながら仕事ができるのは気分転換ができて仕事がはかどりそうだ。
生活者の新しいライフスタイルに寄り添う拠点を目指して
「われわれは洋菓子屋ですので、今回の試みはすべて未知の世界。これまでは仕入れメーカーや百貨店といったつながりがメインだったので、バウムハウスを利用されるお客様すべてが新鮮です。シェアオフィスの会員の方や企業、一般のお客様と今後どのように関わっていけるのか楽しみです」と話す和多野さん。
WORK(働く)とEAT(食べる)をかけ合わせたバウムハウスは、生活者の新しいライフスタイルに寄り添う拠点を目指している。働き方に変化がおこったコロナ禍、ユーハイムの実験と挑戦の歯車がニーズとどうかみ合っていくのか、今後に注目していきたい。
【取材協力・写真提供】
https://baumhausjapan.com/
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