多発しているサブリース契約に関するトラブル

ここ数年、駅近の住宅街のみならず田畑が広がるような地域でも新築アパートを見かけることが珍しくなくなった。その背景には、年金問題を不安視するサラリーマン投資家などの増加や2015年1月の相続税強化による資産家(地主)の相続税対策といったことがある。そのため、近年は専門知識をもたない大家が急増している印象だ。

このようなサラリーマン投資家や資産家に対する賃貸物件販売会社の定番の営業トークは、「購入資金は金融機関からの融資でほとんどまかなえます」「サブリース契約によってオーナーは手放しで経営ができます」。これを聞いて「少ない自己資金、そして手放し経営で毎月安定した家賃収入があるのなら」と決断してしまうようだ。サブリース契約とは、サブリース会社がオーナーから空室の有無にかかわらず物件を借り上げ、入居者へ転貸するもの。オーナーとサブリース会社との間を「マスターリース契約」といい、サブリース会社と入居者の間を「サブリース契約」という。

だが、そこに落とし穴があることも知られるようになってきた。現在は人口減の時代。アパート、マンション問わず賃貸住宅は、相当立地が良いなどの条件が揃わなければ満室経営は難しい。そこでオーナーとサブリースを行う会社との間でトラブルが発生している。一部サブリース会社ではあるが、賃貸経営の経験がなく情報弱者でもあるオーナーの立場を知りながら、「サブリース契約の家賃は下がることがあり得る」といった重要な情報を伝えずに契約を結び、後からトラブルに発展するケースが多発しているのだ。

サブリース契約によって物件オーナーは空室の心配から解放され、サブリース会社は家賃の10~20%の手数料を得ることができる。サブリースを行う会社には、管理業務を兼業する賃貸住宅の建築会社や販売会社、または専門の管理会社などがあるサブリース契約によって物件オーナーは空室の心配から解放され、サブリース会社は家賃の10~20%の手数料を得ることができる。サブリースを行う会社には、管理業務を兼業する賃貸住宅の建築会社や販売会社、または専門の管理会社などがある

物件オーナーだけでなく入居者も知っておきたい「サブリース新法」

近年報道された例では次のようなトラブルがあった。

「大手サブリース会社がアパートオーナーに対して『30年間は賃料が減少しない』と説明し、サブリース契約を締結。ところがリーマンショックによる経営悪化を理由に契約後10年未満で家賃を減額。オーナー数十人が集団訴訟に踏み切る」

「シェアハウスを運営するサブリース会社が、家賃保証を条件に700人以上のオーナーと契約。しかし2017年10月、突然に家賃を減額。2018年に入ると完全に支払わなくなった。さらに4月9日、サブリース会社は東京地方裁判所に対して民事再生手続きを行い、受理された。オーナーは30代から50代のサラリーマンが中心。彼らのほとんどは、銀行から1棟1億円前後の融資を受けて物件を購入しており、現在その返済ができないでいる」

このような規模の大きなトラブルが続出したことなどから2020年6月、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(サブリース新法)」が公布された。同法では、「不当な勧誘行為の禁止」「マスターリース契約締結前の重要事項説明の義務化」「違反者への罰則」「賃貸住宅管理業(サブリース会社等)の登録」などを定めている。

そして、2020年10月、同法の「サブリース業者とオーナーとの間の賃貸借契約の適正化に関する措置」(2020年12月15日施行)について具体的な規制内容などが分かる「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」が公表された。サブリース契約に関しては、すでに契約を締結しているオーナーだけでなく、これから賃貸経営を検討している人も知る必要があるだろう。また、入居者も「サブリース会社がオーナーに家賃を滞納しており、オーナーから直接家賃請求される」といったトラブルもあり得るので知っておいて損はないはずだ。

「将来の家賃減額リスクがあること」を告げないことなどを禁止

国土交通省は「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」を公表国土交通省は「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」を公表

同ガイドラインは、オーナーとサブリース会社とのトラブル防止を目的に、サブリース新法違反となり得る事例や業務を適正に行うために最低限求められる水準などを分かりやすく明示している。

おもな内容は以下の3つだ。

①規制の対象となる勧誘者の明確化
サブリース事業では、サブリース会社が直接営業するのではなく、物件の建築を行う建設会社、物件の仲介を行う不動産会社と連携してオーナーを勧誘することが一般的に行われている。このような勧誘者に対しても誇大広告等の禁止や不当な勧誘等の禁止を義務づけている。

②禁止される誇大広告・不当勧誘の明確化
誇大広告に関してサブリース新法では、サブリース会社または勧誘者が著しく事実に相違する表示や実際のものより著しく優良・有利であるような表示を行うことを禁止している。オーナーの賃貸事業の経験や専門知識が乏しいことを利用し、マスターリース契約の解除条件など重要な事項を明らかにせずにメリットのみを強調する広告を打ち、後々トラブルに発展するといったことがあるからだ。
具体例
・サブリース会社からの減額請求が可能なのにその旨を表示せず「30年家賃保証!」「契約期間内は一切収入は下がりません!」などと表示する。

また、不当な勧誘に関して同法では、サブリース会社等の「オーナー等の判断に影響を及ぼすこととなる重要な事項について故意に事実を告げない、または不実のことを告げる行為」と「オーナーの保護に欠ける行為」を禁止している。
具体例
・「将来の家賃減額リスクがあること」「オーナーに維持保全・原状回復・大規模修繕等の費用負担があること」などをあえて告げず、メリットのみを伝える行為など。

サブリース勧誘を行う一人ひとりのモラルが問われる

③オーナーに説明すべき内容(家賃減額リスク等)の明確化
サブリース新法では、オーナーが適切な判断によってマスターリース契約を締結できるよう、締結前にサブリース会社等がオーナーに対して「家賃改定条件」や「契約解除条件」など重要事項を記した書面を交付し、説明することを義務づけている。なお、書面はフォントの大きさまで指定されている。

同ガイドラインの「趣旨」には、「業界団体において、優良事例等に関する指針を作成するなどし、これらを活用した研修・講習等の機会を通じて、引き続き、サブリース事業に携わる従業員一人一人の業務レベルの一層の向上に取り組んでいくことを期待する」と書かれている。実際にサブリースの勧誘を行う一部の者は、多額のインセンティブ(報奨金)などを目的に強引な営業を行っているという話も聞く。このガイドをきっかけにそのような営業手法が無くなることを願いたい。
国土交通省「サブリース事業適正化ガイドラインの策定 」

サブリース契約では、物件オーナーがサブリース会社よりも圧倒的に情報弱者であることが多い。すべてのサブリース会社はそのことを大前提とし、「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」を参考に業務を行ってほしいサブリース契約では、物件オーナーがサブリース会社よりも圧倒的に情報弱者であることが多い。すべてのサブリース会社はそのことを大前提とし、「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」を参考に業務を行ってほしい

2020年 12月26日 11時00分