積水ハウスとマリオットが展開する「Trip Base 道の駅プロジェクト」
2020年10月、岐阜県の美濃加茂市・美濃市・郡上市に3軒の「フェアフィールド・バイ・マリオット」が開業した。
それぞれ「道の駅」に隣接または近接していることが一番の特徴で、積水ハウス株式会社とマリオット・インターナショナルが進める地方創生事業による「地域の知られざる魅力を渡り歩く旅の拠点となるホテル」なのだという。
「大手ハウスメーカーが世界最大のホテルチェーンとタッグを組んで造ったホテル」とはじめに聞いたときは、どんな上質なホテルが誕生したのだろう?と施設そのものに興味を抱いたのだが、実は、“ホテル自体そのもの”よりも、「道の駅」に隣接または近接という“ホテルの場所とその目的“が重要な意味を持っている。
地域やパートナー企業とも連携しながら進めているという地方創生事業「Trip Base(トリップベース)道の駅プロジェクト」について、積水ハウス株式会社 道の駅プロジェクト運営統括室長・渡部さんに話を聞いた。
「道の駅」をハブに観光で地域の活性化目指す
「Trip Base 道の駅プロジェクト」は、地域や自治体、パートナー企業と共に地域経済を盛り上げることが目的のプロジェクト。「未知なるニッポンをクエストしよう」をコンセプトに、観光を起点に地域経済の活性化を進める地方創生事業なのだとか。
プロジェクトの軸となるのが、各地に開業する「道の駅」に隣接・近接するホテル「フェアフィールド・バイ・マリオット」で、このホテルは、レストランや大浴場などを持っていないことも大きな特徴。多くのホテルにあるであろうレストラン機能などがない“宿泊特化型ホテル”とした理由は、旅行者が宿泊することで地域に滞在する時間が長くなり、その地域に観光や食事、買い物に出ることで経済を生み出し、地域で寄り道を楽しむような旅をしてほしいとの想いを込めたから。
「それが、われわれが考える新しい旅のスタイル『TRIP BASE STYLE』の提案です。
あえて目的を定めず、地域の知られざる魅力あふれるスポットを巡って偶然の出合いを楽しんでいただけたらと。旅の新たな価値として『地域の知られざる魅力を渡り歩く旅』を提案することで、全国各地の地方創生の一助となることを目指しています」(渡部さん)
地域を渡り歩く拠点として宿泊に特化したホテルを造り、旅行者と地域の交流を増やしたい同プロジェクトは、各地域でのアライアンスにも力を入れ、これまでに25道府県の自治体、36社のパートナー企業(2020年10月現在)と連携。実際に、ホテル用のバス便・レストランMAP作成・旅行者向けタクシーチケット用意など…地域側も積極的かつ好意的にさまざまな取り組みを行っていると聞いた。
このように同プロジェクトは、ホテルとして成功することよりも、地域が盛り上がることに重点を置いて進められている。
「住む人の幸せ」を願うハウスメーカーの想いが生んだ地域貢献プロジェクト
では、大手ハウスメーカーの積水ハウスが、ホテルや新しい旅のスタイル提案を進めているのはなぜだろうか?
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当社がハウスメーカーとして大事にしているのが「幸せ」です。
「わが家を世界一 幸せな場所にする」ことが原点であり、その思想で私たちは動いています。
家がある土地には愛着を持つものですが、当社で家を建てたお客さまに、暮らし始めてからも「ここに家を建てて幸せ!」と長く思っていただくためには、家そのものだけでなく、家が建つ土地が魅力的であり続けることが必要です。
そこで、魅力的な地域づくりのために注目したのが観光業。
旅の目的地として世界から注目を集める日本は近年インバウンドも増え、都市部や観光地の盛り上がりに続いて地方にも目が向き始めました。ところが、地方にはその受け皿がないという問題を抱えています。その受け皿をつくることが地域への貢献・地域の幸せになると考えました。
コロナの影響でインバウンドの計画は変わってきていますが、マイクロツーリズムが注目されるように、遠くに行けないからこそ、国内や地元の魅力を見つめ直す機会が増えたのではないでしょうか?
日本国内に住んでいる人に、改めて日本の魅力を知ってほしい。深堀りすることで、よりディープな魅力を見つけてその地を好きになってほしいですね。
日本各地の再発見が増えるという意味では、このコロナ禍は結果として本質に近づけたような気もしています。(渡部さん)
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渡部さんによると、同プロジェクトが「道の駅」にこだわったのは、全国各地に1,180カ所(2020年7月現在)あり、それぞれが地域色が濃く、地元の方から愛される地域にとって大事な場所だから。
地元の方が愛着を持つ自慢の場所であっても、他の地域から訪れた人にとっては旅の“通過点”として利用しがちな「道の駅」を、旅の“拠点”に変えることで地域貢献を目指している。
道の駅に隣接・近接した宿泊特化型ホテル「フェアフィールド・バイ・マリオット」
「フェアフィールド・バイ・マリオット・岐阜郡上」に筆者も宿泊し、すっきりと美しいシンプルな空間でゆったりと寛いだ。レストランがないため、近隣の食事スポットをスタッフに尋ねたところ、「このお店は●●がおいしいですよ」「翌日はどちら方面に行かれますか?朝食なら●●はいかがですか?郡上はモーニングサービスが充実しているお店が多いですよ!」など…地元情報をたくさん教えてくれた。しかも楽しそうに。野口支配人に聞くと、スタッフ10人のうち7人が地元の方。“わがまち”郡上を知ってほしい・好きになってほしい想いが伝わってくる温かいおもてなしの気持ちが何よりも心地よい。外に一歩も出ずにホテルステイを楽しむ旅もあれば、偶然の出会いや発見を楽しみながら周辺を巡る“行き当たりばったり”の旅も素敵だった日本全国で順次開業。2025年までに25道府県・約3,000室規模へ拡大予定
「フェアフィールド・バイ・マリオット・岐阜郡上」に隣接する道の駅「古今伝授の里やまと」。地元食材や郷土品などを購入できる買い物施設や、けいちゃん焼きなど地元グルメも楽しめる食事処、温泉施設も整っている。筆者は、子持ち鮎の塩焼きに舌鼓を打ち、趣のある足湯(無料!)も堪能。気持ちよく過ごせる道の駅だこのスタイルの「フェアフィールド・バイ・マリオット」は現在(2020年11月20日現在)全国に7カ所あり、年内には8軒に。2021年春以降も各地で順次開業し、2025年までには25道府県・約3,000室規模へ拡大予定だとか。
「未知なるニッポンを渡り歩く旅」という新しい旅の価値を発信する“BASE”が全国に増えることになるわけだが、続々オープンする速いスピード感には感心してしまう。
それを可能にするのは大手ハウスメーカーならではびノウハウがあってこそで、自社工場で生産された部材を現場で施工し完成させる工業化住宅の特性を生かし、ホテル建設においても工場生産された鉄骨の出荷材を利用。それにより、品質や精度の安定した建材で工期の短いホテル造りが実現している。
「道の駅」をハブとするプロジェクトは、地域の知られざる魅力の発掘や「道の駅」発のアクティビティ開発、地方への新しい人の流れ、地方での新しい雇用の創出など…地域観光の活性化や抱える社会課題の解決に向けてさまざまな取り組みを進めていくそう。
「当社には、時を経るほどに魅力や愛着や誇らしさが増す家づくり・まちづくりを進める『経年美化』という設計思想があります。
家と同じように、“建物が新しい時が一番良い”とするのではなく、歳月を重ねるごとにますますホテルの魅力が増えるように、地域の魅力となるコンテンツを増やしながら『TRIP BASE STYLE』を提案してまいります」(渡部さん)
各地域や自治体からの期待も高い「Trip Base 道の駅プロジェクト」。
2020年7月現在で全国に1,180カ所あるという「道の駅」とどう絡んでいくのか。どんな魅力を発信して地域を盛り上げていくのか。そして「TRIP BASE STYLE」がわれわれにどう馴染んでいくのか楽しみだ。
■「Trip Base 道の駅プロジェクト」公式WEBサイト【TRIP BASE STYLE】
https://www.sekisuihouse.co.jp/tripbase/
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